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廃炉は核のごみ置き場!?関西電力 中間貯蔵施設をめぐる黒歴史の続き

この年末、老朽原発3基が停止するはずだった

2023年の年末までに、原発からでてくる使用済核燃料を福井県外に搬出するため、中間貯蔵施設の県外立地点名を福井県に提示する。それができなければ美浜3号、高浜1.2号の老朽原発3基を止める、そういう約束を関電は福井県にしていました。
過去の約束について詳しいことは「関西電力 中間貯蔵施設の「約束」をめぐる黒歴史」をぜひご覧ください。https://note.com/mie629/n/n2d6d67903103

使用済燃料対策ロードマップ

6月にはフランスでのMOX燃料の再処理計画を関電が発表。また8月には中国電力が関電と共同で、山口県上関に中間貯蔵施設をつくる計画を発表しました。そんな中で関電が10月10日に発表したのが「使用済燃料対策ロードマップ」。10日のロードマップ発表を受けて、13日、杉山福井県知事は老朽原発3基の運転継続を認めました。

敷地内に乾式貯蔵施設


使用済燃料対策ロードマップ(別紙)2023年10月10日関電発表

関電が発表した「使用済燃料対策ロードマップ」https://www.kepco.co.jp/corporate/pr/2023/pdf/20231010_1j.pdfをみると、
①六ヶ所再処理工場を早く運転開始する。
②フランスで使用済MOX燃料の再処理の試験をする。そのために200tの使用済燃料を運び出す。
③中間貯蔵施設を2030年から稼働する。
ここまでは、本当にできるかな??という疑問だらけの「お約束」の羅列ですが、最後に、こんな記述がありました。
使用済燃料の中間貯蔵施設へのより円滑な搬出、さらに搬出までの間、電源を使用せずに安全性の高い方式で保管できるよう、発電所からの将来の搬出に備えて発電所構内に乾式貯蔵施設の設置を検討
いままで関電は福井県外につくる中間貯蔵施設の約束を反故にする度に、なぜか成果(?)をひとつずつ獲得してきました。今回の成果は「原発の敷地内に乾式貯蔵施設を作ること」だったのでしょうか。長い間、使用済核燃料の県外搬出を求めてきた福井県に、さらっとこんな重大な方針転換を提示したのです。

貯蔵容量を増加させない?!

この乾式貯蔵施設の説明の前には「本ロードマップの実効性を担保するため、今後、原則として貯蔵容量を増加させない」という文章があります。ここがよくわからないので関電に質問しました(*1)。

質問:(使用済燃料対策ロードマップには)「本ロードマップの実効性を担保するため、今後、原則として貯蔵容量を増加させない」とあります。今年4月の私たちの質問に対する回答では、美浜発電所が管理容量652体、貯蔵量432体、高浜発電所は管理容量3,758体、貯蔵量3,035体、大飯発電所は管理容量3,872体、貯蔵量3,343体 とのことで、貯蔵容量は合計8282体になります。この8282体から増加させないという理解でいいですか。

回答:8,282体は運転プラント(美浜3号機、高浜1~4号機、大飯3、4号機)使用済燃料ピットの管理容量であり、廃止措置プラント(美浜1、2号機、大飯1、2号機)を合わせると、全体で11,000体となります。この貯蔵容量を原則として増加させない考えですが、国内外の情勢変化や自然災害等、自社の事由によらない事象によって搬出が滞り、日本全体のエネルギー安定供給に貢献出来なくなる可能性がある場合は例外になると考えています。

廃炉になった原発は核のごみ置き場?

4月の質問は、廃炉になっている原発も含めて全ての原発の「管理容量」の合計を質問していました。「8282体」というのは、美浜3基、大飯4基、高浜4基のすべての原発の管理容量の合計です。「管理容量」とは、原則として「貯蔵容量から1炉心+1取替分を差し引いた容量」。なお、運転を終了したプラントについては、貯蔵容量と同等としている(*3)とのことです。
今回新たに提示された「11,000体」は美浜、大飯、高浜の「貯蔵容量」の合計ということになります。
美浜発電所1、2号機(廃止プラント):843体
美浜発電所3号機(運転中プラント) :809体
高浜発電所1~4号機(運転中プラント):4,386体
大飯発電所1、2号機(廃止プラント):704体
大飯発電所3、4号機(運転中プラント):4,258体
合 計:11,000体     (*4 2024年1月25日関電回答より)
廃炉となった原発は運転しないので、燃料プールに炉心の燃料を入れる空きスペースの必要がなく、燃料プールが満杯になるまで使用済核燃料を入れることができます。ですから廃炉が決定すると「管理容量」イコール「貯蔵容量」なり、貯蔵できる使用済核燃料の量に余裕ができるのです。
しかし、廃炉作業のためには、まず危険な核燃料を燃料プールから運び出すことが必要です。廃炉作業中の原発の燃料プールにずっと使用済核燃料を置いていくわけにはいかないと考えて、乾式貯蔵施設をつくり、使用済核燃料の置き場を確保しようと考え、このロードマップの発表で、初めて福井県に提示したのではないかとおもいました。

廃炉計画の当初から画策していた?!

しかし今回調べてみたら、廃炉計画の当初から敷地内に乾式貯蔵施設を作る計画があったようです。2015年3月30日の日本経済新聞の記事に以下のような記載がありました「原子炉を解体するまでに使用済み核燃料の保管建屋を敷地内に建てる。特殊容器に入れ、空気の循環で冷やしながら保管する「乾式貯蔵」を採用する。プールで冷やす湿式より保管費用が安く、安全性が高いとされる」
以前から関電は原発敷地内の乾式貯蔵施設立地をもくろんでいたのです。

廃炉にする原発の貯蔵容量はゼロとカウントするべき

廃炉にすると燃料プールの貯蔵量が管理容量と一緒になり、使用済核燃料の置き場に余裕ができるということが、そもそもおかしいと思います。廃炉となった原発の燃料プールに、稼働している原発から使用済核燃料を移動させるなんてことが許されて良いはずがありません。
今回の「原則として増やさない」という貯蔵容量の中に、廃炉とする原発の貯蔵容量を含めるべきではありません。廃炉となった原発からは、1日も早く使用済核燃料をなくすことが求められているのですから。

「自社の事由によらない事象」責任逃れの言い訳

回答の後半に「原則として増加させない考えですが、国内外の情勢変化や自然災害等、自社の事由によらない事象によって搬出が滞り、日本全体のエネルギー安定供給に貢献出来なくなる可能性がある場合は例外になると考えています」という文章があります。なんとも「いやらしい」というか「関電らしい」無責任な回答です。六ヶ所再処理工場がいつまでたっても動かなくても、フランスでのMOX燃料の再処理計画がうまくいかなくても「自社の事由によらない事象」。今の状況のままいけば、「原則増やさない」はずの貯蔵容量がどんどん増えていく可能性がとても高いのではないでしょうか。

1530体の乾式貯蔵施設をつくる計画を発表

関電は2月8日、長い間使用済核燃料の県外搬出を求めてきた福井県に対して、美浜、高浜、大飯に合計で1530体、700tの使用済核燃料乾式貯蔵施設をつくるための事前了解願いを提出しました。*9
いままで福井県との約束を何度も反故にしてきた関電!今回の「原則として貯蔵容量を増やさない」という約束は守られるのでしょうか。とても疑わしいと思います。
原子力発電所構内における使用済燃料乾式貯蔵施設の設置計画に係る 事前了解願いの提出について
https://www.kepco.co.jp/corporate/pr/2024/pdf/20240208_1j.pdf

解決策は原発を動かさないこと!

「使用済核燃料の置き場がないなら、原発を動かしてはいけない」当たり前のことだと思います。いくら数字を誤魔化しても真実は明らかです。脱原発しかありません。

*1 毎月26日のランチタイムに関電前に集まる女たち、日本消費者連盟関西グループが2023年10月26日に関電広報に提出し、また後日ネットでも提出した質問に対して、11月下旬に届いたネット回答より。 

*2「管理容量」とは、原則として「貯蔵容量から1炉心+1取替分を差し引いた容量」。なお、運転を終了したプラントについては、貯蔵容量と同等としている。
「各原子力発電所の使用済燃料の貯蔵量」より
「原子力・エネルギー図面集」(日本原子力文化財団)

https://www.ene100.jp/www/wp-content/uploads/zumen/7-7-1.pdf

*3(回答) 貯蔵容量は次のとおりです。この貯蔵容量を原則として増加させない考えです。
美浜発電所1、2号機(廃止プラント):843体
美浜発電所3号機(運転中プラント) :809体
高浜発電所1~4号機(運転中プラント):4,386体
大飯発電所1、2号機(廃止プラント):704体
大飯発電所3、4号機(運転中プラント):4,258体
合 計:11,000体    
なお、これまで説明していた管理容量については、今後の使用済燃料ピットの満杯時期を把握するための数字であり、上記運転中プラントの貯蔵容量から1炉心分(3取替相当分 )を除いた数字をお示ししていたものです。
(1月25日関電広報回答より)

*4 末田一秀さん(はんげんぱつ新聞編集長)の「なぜ関電が中間貯蔵施設を上関町につくるのか?」という動画がアップされました(上関どうするねっと)。おすすめです。

*5 上関の中間貯蔵施設計画については、中国電力が8月2日に関電との共同開発だと発表しました。その時、関電は本文わずか7行のあっさりしたコメントを発表しました。
切羽詰まっている関電がなぜこうも淡白な対応なのかと不思議におもっていました。今回この記事を書いていてふっと思ったのですが、上関の中間貯蔵施設計画がうまく進まない場合、それはあくまで中国電力の責任で、関電の事由ではないと主張するためなのかも!?

*6 関電からの回答を勘違いしていることに12月26日気付き、内容を訂正しました。申し訳ありません。

*7 廃炉になった原発の燃料プールの取り扱いについて、ご指摘をいただき、またあらたに2015年3月の日経の記事を見つけたので、12月27日修正加筆しました。度重なる修正、申し訳ありません。

*8 こんなパンフレットができました!表紙は「げんぱつどん」。1冊300円。無料ダウンロードもできます。

 

関電の核ごみをなぜ山口県上関へ 〜中間貯蔵施設の問題〜 

*9 2月8日関電が発表した「原子力発電所構内における使用済燃料乾式貯蔵施設の設置計画に係る 事前了解願いの提出について」を読んで大幅に加筆しました。
タイトル画像もこの資料からつくった表に変えました。(2月9日)
https://www.kepco.co.jp/corporate/pr/2024/pdf/20240208_1j.pdf


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