見出し画像

関西電力高浜原発1、2号機再稼働の裏で=2015年から2016年にかけて起きていたこと=


関西電力(以下関電)は、高浜原発1号機の営業運転を8月28日に始めました。11月で運転開始49年になる日本最古の老朽原発です。9月15日には、高浜2号も起動しました。これで関電が所有している7基すべての原発が福島事故後再稼働したことになります。

高浜1、2号の審査が実質合格した日の朝、関電社員が自死

2016年4月20日の朝、ホテルの部屋で関電社員が亡くなっているのが見つかりました。
この日、第4回原子力規制委員会(以下規制委員会)では運転開始40年を超える高浜1、2号が新規制基準に適合していると認められました。高浜1.2号は7月7日までに審査に合格しないと「廃炉」になるという時限に迫られた審査となっていました。この社員は亡くなる4月20日の前日までの4月19日間の残業時間が150時間、1月には200時間を超えるなど長時間の残業を強いられていたとして、10月に労災認定されました。

八木社長はすべての原発の審査を「バランスよく」と

この自死から半年前の2015年10月27日、第36回規制委員会に関電の八木社長や豊松原子力事業本部長などが呼ばれました。田中規制委員長たちは美浜3号、高浜1.2号、大飯3、4号の審査をすべて進めようとすると審査が期限に間に合わずに共倒れになる可能性を指摘して優先順位をつけることを求めました。高浜1、2号は2016年の7月まで、美浜3号は11月までに審査に合格しないと廃炉となる、間に合うかどうかギリギリの状態だと規制委員や規制庁の職員は関電に説明をしました。
しかし、八木社長は「今後の審査対応、本当に必死で、全力 で対応してまいりますので、原子力規制委員会におかれましては、効率的にバランスよく 御審査をいただければと切にお願いを申し上げたいと思います」と言いました。この結果、高浜1、2号の審査にあたった関電社員は過酷な労働を強いられ、自死にまで追い込まれたのです。もしこの時八木社長が「バランスよく」などと言わず優先順位をつけていれば、彼の命は助かったのではないかと思わずにいられません。

関電は2015年6月に電気料金2度目の値上げ

このとき関電は4期連続の赤字となり、2015年の6月には再度電気料金を値上げしました。決算黒字化のために原発の再稼働を必死に進めていくと言っていました。運転開始40年を超える美浜1、2号と大飯1、2号を廃炉とする中、一番時限の迫っていた高浜1、2号は廃炉にせず、高浜原発だけは4基すべてを再稼働する方針を取りました。なぜ高浜1、2号を廃炉にしなかったのか。2019年秋に明らかになった高浜町元助役森山栄治氏からの巨額の不正マネー還流事件との関連が強く疑われます。

高浜町元助役から3億6千万円相当の巨額金品を受け取っていた関電会長、社長、副社長ら

2020年3月19日、関電は第三者委員会の報告書を公開しました。自らも社長就任祝いに高浜町元助役森山氏から金貨をもらった岩根社長が責任をとって辞任しました。森山氏の関係会社には、原発の再稼働のための安全対策工事関連のお金が大量に流れていました。その取引の多くは競争入札ではなく、特命発注で行われ、中には事前に発注金額を約束させられたり、発注ノルマを課されたりしていたことが報告書に記載されています。
調査報告書 2020年3月14日
https://www.kepco.co.jp/corporate/pr/2020/pdf/0314_2j_01.pdf

高浜原発所長の森山「先生」引き継ぎメモ

この報告書の125頁には2014年6月に長谷高浜原発所長が書いた「先生」(森山氏のことを関電社内では「先生」と呼んでいた)に関する引き継ぎメモが載っていて、森山氏と高浜原発所長との異常な関係がわかります。以下に一部抜粋します。

  • 毎月京都で会っていたが、ここ2年は頻度急減。3ヶ月毎程度。人を知るまで、御する迄、頻度が高いと思われる。

  •  屈服させる、自分に従うと判る迄指導。○○に言うぞ等が常で、上げ奉れば喜び、判り易い。中途半端な対応が、一番危険。人を信じない。猜疑心旺盛。こそこそするな。

  • 1 回 / 2 週間、出来れば毎週、電話が必要。疎遠を嫌う。人恋しい。

  •  花見・中元・お歳暮・人権研修・旅行等、定期行事があり。

  • 高額な先生からのお土産は、同罪化のつもりか。

森山氏の関係会社への発注額が2015年から急激に増加

同じ報告書の110頁には森山氏の関係会社の一つである「吉田開発」への発注金額のリストが載っています。2014年まではほぼ1000万円から4000万円代で推移してきたのが、2015年に1億円を超え、2017年には2億5千万円にまで増えています。「バランスよく」と八木社長が規制委員会にお願いした2015年から、急増しています。高浜原発4基すべてを稼働させたのは「森山先生」のためではなかったでしょうか。

高浜原発3、4号運転差し止め命令

2016年3月、大津地裁は高浜原発3、4号の運転を認めない決定を下しました。

高浜4号は2月の再起動直後にトラブルで停止したままでしたが、高浜3号はこの決定により停止しました。それでも2016年3月末の関電決算はひさしぶりに黒字になりました。決算が黒字になったのは、原発を再稼働したからではありません。電気料金を大幅に値上げしたからです。

役員報酬の闇補填が始まった

2016年6月末の株主総会で森会長は退任、八木社長が会長に、岩根副社長が社長に就任しました。
このとき、岩根社長には森山氏から社長就任祝いに金貨が送られました。そして7月からは役員報酬の闇補填が始まりました。
役員退任後の嘱託等の報酬に関する当社の対応について  本件に関する当社の確認内容

https://www.kepco.co.jp/corporate/pr/2020/pdf/0330_3j_01.pdf

「過去の経営不振時の役員報酬削減考慮分」
・支給期間:2016 年 7 月~2019 年 10 月
・対 象 者:18 名(上記1名を含む) ・支給総額:約 2.6 億円

役員報酬は下げず 闇で補填までしていた

このプレス発表資料を読むと、まるで経営不振で自分達の報酬を削ったけれど、経営状況がよくなってきたので補填したというように読めますが、現実はまるで違います。関電役員は電気料金値上げの際の約束を破り、自分達の役員報酬を下げることを頑なに拒んだあげく、闇で補填までしていたのです。
1度目の値上げの際、役員報酬は国家公務員の指定職の給与水準と同レベルの1800万円とすることが適当であるとされ、関電は2013年(平成25年)から2015年(平成27年)の3年間の平均で、役員報酬を年1800万円にするとして電気料金値上げの認可を受けました。

 https://www.kantei.go.jp/jp/singi/index/bukka/130329/bessi.pdf

しかし実際には役員報酬は2100万円で、2015年1月からようやく査定額の1800万円に減額したことを2度目の電気料金値上げの審査会で委員から追求されました。
2015年1月21日、経済産業省電気料金審査専門小委員会での松村敏弘委員の発言です。
「消費者に対して懇切丁寧に説明するということをさっき言われたわけです。他の未達については自分たちの意思だけではどうしようもないというようなことはあるかもしれないけれど、役員報酬なんて自分たちの意思ですぐにできること。それを未達のまま放置するということをしておきながら、消費者に対して懇切丁寧に説明するということとどれぐらいコンシステントなのかということを消費者は見きわめられると思います」 
委員からの追及はこの回だけでなく、何度も役員報酬を下げるように要求され続けましたが、関電は3年間平均で1800万円まで役員報酬を下げることを頑なに拒み続けました。
実際に電気料金の審査会を傍聴して、この役員報酬に関する攻防を聞いていたので、隠れ補填を知って、とても驚き、呆れ果てました。
ちなみに2022年度の森望関電社長の報酬は、電力カルテルや顧客名簿閲覧などの不祥事が相次いだのにもかかわらず7200万円でした。

今だけ!金だけ!自分だけ!(2016年6月末の関電株主総会で筆頭株主である大阪市代理人の河合弘之弁護士が関電に言ったことばです)

関電に原発を運転する資格はありません!

*肩書きはすべて当時

<<関電がやろうとしていた怖い話(おまけ)>>

2020年8月に朝日デジタルに連載された関電による石川県珠洲市の原発立地誘致をおこなった関電社員の記事です。
反対派の住民のみなさんのおかげで、珠洲原発計画は撤回されました。北陸電力、中部電力と関電と3社共同で珠洲市に原発を作る計画でしたが、2003年12月に計画を中止することが決定しました。
石川県珠洲市と聞いて、ピンとくる方もいらっしゃるかもしれません。この数年、地震活動が続いていて、5月5日には最大震度6強の地震が起きたところです。もし原発が稼働していたらと考えると本当に恐ろしいです。

地震は止められないが原発は止められる!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?