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「原発を再稼働すれば電気料金が下がる」という印象操作にだまされないで!



原発契約解約で2800億円、原発再稼働で900億円  あなたはどちらを選びますか?

6月1日、全国7電力会社の規制料金が値上げされました。「原発が動けば電気代は下がる」「原発が動かないから電気代が高い」といわれていますが、値上げ申請の書類を読んでみると、そもそも原発のコストが高くて電気代を押し上げていることがわかります。

柏崎刈羽原発の再稼働で減る原価は900億円

東電エナジーパートナー(EP)は、値上げ申請時には「原発を再稼働すると2600億円の費用が削減できる」と言っていましたが、審査の途中で削減額を900億円に大幅に縮少させられました。
当初、原発の再稼働で2600億円の削減できるとしていたのは、原発で発電しない場合は電力市場で電気を買うとしていて、その電力市場の価格を35.6円/kWhというとても高い値段で設定していたのです。審査の途中で20.97円/kWhとするようにいわれて、1700億円の大幅減額となりました。
一方原発を再稼働すると増えるコストは、原発の可変費(再稼働すると増えるkWhあたりのコスト)をたった2.51円/kWhとして、差し引きしたのです。わずかな可変費だけを考慮しての再稼働による原価削減額は当初の3900億円から2200億円となりました。
ここから、原発の固定費のうち、再稼働すると増える固定費の変動分1300億円を引いた金額は、当初の2600億から900億円になりました。

止まっている原発に支払っている金額は2800億円

一方で2021年度の東電EPの他社購入電力料の原子力の実績は2801億円となっていて、これはまったく発電してない原発の維持費に2801億円支払ったということです。
東電EPは発電所から電気を買って、お客さまに電気を売る会社。買った電気の量に応じて、電気代を払えばいいはず。なぜ動かない原発のコストを支払う必要があるのでしょう。この理由を東電EPは「東電HDや日本原電、東北電力と原子力PPA=原発が動いていても、停止していても原発の維持費を支払う契約を結んでいるから」と説明しています。
つまりこの「止まっている間も原発の維持費を支払い続ける」原子力契約を解約すれば、原価を2800億円減らせることになります。
原発再稼働で900億円の費用削減、原発契約の解約で2800億円の費用削減。どちらを選ぶかといわれたら、原発の契約解約を選ぶ消費者が多いはず。わたしは原発契約の解約を求めます。

原発の発電コストは41.69円/kWh

原発再稼働により削減される原価の計算には、原発を再稼働しない時にもずっとかかっているコスト(原発固定費の変動しないコスト)が入っていません。原発は動かなくてもかかるコストの比率がとても高い発電所なのです。それなのに原発が動いたら増える金額だけを出してきて、電力市場の高い価格と比べて、さも原発が安いようにみせる、これは消費者をだますあざといやり方です。
原子力資料情報室の松久保さんの計算では、原子力購入電力料は4961億円。原子力購入電力量は柏崎刈羽原発6、7号機の119億kWhで、原発からの電力購入単価は41.69円/kWh。電力市場の調達価格を20.97円/kWhとしているので、原発を再稼働するより電力市場で電気を調達したほうが、コストが約半分になるのです。
「原発を動かせば電気代は下がる」と言っていますが、そもそも「原発は高い」のです。

原発契約の解約を!!

「原発再稼働=電気料金が下がる」という宣伝を、政府も電力会社も盛んに繰り広げています。岸田首相も「原発の稼働比率が高い電力会社は値上げを申請してない」と発言、原発再稼働=電気料金値下げという印象操作をおこなっています。ちなみに浜岡原発をまったく動かしていない中部電力は今回値上げ申請をしていないし、2022年度決算は黒字です。
「電気料金を下げるためには原発再稼働もやむなし」と思っているみなさん、どうかだまされないでください。原発が再稼働しても電気料金は下がらないし、原発を維持する契約があるから電気代が高くなっているのです。

*   原子力資料情報室の数字の根拠についての詳細は   CNICブリーフ『122円 過大評価される原発再稼働』https://cnic.jp/47001


*他社購入・販売電力料(原子力)について 2023年 4月11日 東京電力エナジーパートナー株式会社
https://www.emsc.meti.go.jp/activity/emsc_electricity/pdf/0041_06_01_03.pdf
P1 1 再算定結果を踏まえた原子力再稼働影響
柏崎刈羽原子力発電所について、7号機は2023年10月に、6号機は2025年4月にそれぞれ再稼働すると仮置きした 運転計画を原価に織込んだ結果、原価算定期間における可変費の削減効果は年間▲2,200億円程度となります。なお、再稼働による固定費の変動(年間1,300億円程度)を含めた場合には、合計で年間▲900億円程度の費用削減効果となります。

*実績値 2021年度 2801億円について 
規制料金値上げ申請等の概要について(詳細版)
2023年 1月23日 東京電力ホールディングス株式会社 東京電力エナジーパートナー株式会社4-3.原価算定の内訳(他社購入・販売電力 p17より料)https://www.tepco.co.jp/press/release/2023/pdf1/230123j0403.pdf  

*原子力契約はやめられます。2021年、中部電力と関西電力は北陸電力志賀原発に関する契約を終了したことを認めました。中部電力も関西電力も、電気料金値上げの審査の時(2013年から2015年)には「原子力契約があるので原発の維持費を支払っている」として、規制料金の発電原価に停止中の志賀原発の維持費を算入していました。運転開始15年で契約を終了するという説明はありませんでした。
北陸電・志賀原発からの電力購入契約終了 中電と関電 2021年7月15日 中日新聞

*今回電気料金の値上げをしてないのは中部電力、関西電力、九州電力の3社。これはすべて電力カルテルにかかわったとされている電力会社です。これまでお互いの市場を荒らさないように示し合わせて利益を確保してきたから、今回値上げしなくていいのではないかと私は思っています。

*原発が安いは本当?「東電資料」から見つけた意外なデータ 毎日新聞2023年6月2日

*政府と東電の反論は?「原発は安くない」これだけの試算 毎日新聞2023年6月10日

*株主総会で追及?東電が上乗せする「原発の基本料金」
毎日新聞2023年6月24日

*2022年度 実績値 2801億円 
規制料金値上げ申請等の概要について(詳細版)
2023年 1月23日 東京電力ホールディングス株式会社 東京電力エナジーパートナー株式会社4-3.原価算定の内訳(他社購入・販売電力 p17料)https://www.tepco.co.jp/press/release/2023/pdf1/230123j0403.pdf  


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