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佐賀県玄海町長は原発立地自治体の長として初めて高レベル放射性廃棄物最終処分場の文献調査を受け入れた!


玄海町長が文献調査を受け入れた

5月10日、佐賀県玄海町長が原発立地自治体の長として初めて高レベル放射性廃棄物最終処分地の文献調査を受け入れました。
玄海町議会が4月26日に調査受け入れの請願を可決、5月1日には国が玄海町に文献調査受け入れを申し入れをしていました。

玄海町長の困惑

この間、玄海町長はかなり悩んだようです。
連休明けの7日に、東京で玄海町長は斎藤経産相と面談を行いましたが、その後の記者会見で町長はこのような発言をしています。(西日本新聞)
「(町の面積が)36平方キロメートルしかない玄海町は中山間地で、(最終処分場は)地上部分でも約1~1・5平方キロメートル(の敷地)が必要だが、場所がない。地下で埋設するとなると、町の約3分の1が占められる。住民がほとんど地下埋設場の上に生活するような状況。やはり、もう少し広いところがあったらいいんじゃないかと感じている」

沖合も含めれば適地みつかる?

この悩みに対して、経産省はなんと「沖合も含めれば適地が見つかる可能性がある」という発言しています。(福岡放送)
入口は陸にあるけど、トンネルを海の方へ掘り進めて、沖合の地下に処分場をつくるってことでしょうか?

特性マップと国の申し入れはセット

国は高レベル放射性廃棄物の処分地がなかなか決まらないので「国が全面にたつ」という姿勢をみせるために、科学的により適性の高いと考えられる地域を提示することや 理解状況等を踏まえた国から自治体への申入れなどをすることにしてました。2017年に「科学的特性マップ」を発表しました。ここなら処分できるという「科学的有望地」マップを作りたかったのですが、専門家から十万年の長きにわたって「ここなら処分できる」なんて言えないといわれ、有望地マップを断念。「ここは難しい」というところを示す「科学的特性マップ」になりました。

https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/nuclear/rw/kagakutekitokuseimap/

玄海町はすべてグレーなのに申し入れた

この科学的特性マップでみると玄海町は全面的にグレーです。玄海町の地下には石炭資源があるので「地下資源があるので、将来掘削の可能性がある」グレーになっています。
つまり国は「科学的特性マップ」でグレーにした地域の町に、申し入れをしたということです。これは結局「文献調査を受け入れたら交付金20億円」という札束で地域を分断する原子力立地のいままでのやり方の踏襲です。以下の抗議から抜粋します。
【原子力資料情報室声明】玄海町への国の文献調査申し入れに断固抗議する https://cnic.jp/50982

引用:国は、調査受け入れ地域に対し、敬意や感謝の念が国民に共有されることが必要だと主張してきた。だが、今回の申し入れにより、またも国は、緩い安全基準の下、交付金という金銭的便益による誘導と拙速な議論で処分場の調査を推進し、地域の分断を煽ってきた悪しき慣習を繰り返そうとしている。核ごみ処分に対する国民的な関心の喚起はせず、経済の衰退に悩む地域や原発立地地域に問題を押しつけようとする国の本音が表れている。その代償が、民主主義の無視と安全性への軽視と私たちの電気料金からなる調査費用の無駄使いである。当室は、政府に対し、申し入れの即時撤回を要求し、処分場政策の根本的な政策変更に向けた議論の再検討を要請する。

日本に地層処分の適地はない

昨年10月には「世界最大級の変動帯の日本に、地層処分の適地はない=現在の地層処分計画を中止し、開かれた検討機関の設置を=」という声明が地学の専門家ら300人あまりの勇姿で発表されました。(以下の原子力資料情報室のHPに声明文と賛同者名簿が掲載されています)

https://cnic.jp/50160

ここからも一部抜粋します。
「激しい変動帯の下におかれている日本列島において、今後 10 万年間にわたる地殻の変動による岩盤の脆弱性や深部地下水の状況を予測し、地震の影響を受けない安定した場所を具体的に選定することは、現状では不可能といえます」

「科学的根拠に乏しい最終処分法は廃止し、地上での暫定保管を含む原発政策の見直しを視野に、地層処分ありきの従来の政策を再検討すべきです」

専門家会議で声明について意見交換中

3月29日の第2回特定放射性廃棄物小委員会地層処分技術WG (2024年3月29日)では、この声明・提言の内容について岡村 聡(北海道教育大学名誉教授)が参考人として招致されて説明を行いました。
(このあと第3回WGでもこの議論が続いています。動画を傍聴すると、議論がまったく噛み合わず違和感がいっぱいです。この違和感については次回にでも書きたいと思います)

文献調査、手をあげれば20億円

国はこの声明を真摯に受け止めて、高レベル廃棄物の地層処分について、広く議論をすべきなのに、やっていることは真逆のことをしてしまいました。
北海道の寿都町と神恵内村の2カ所が文献調査に応募して、いま最終段階に入り、同じ特定放射性廃棄物小委員会地層処分技術WGで文献調査の結果をどう評価するかという議論をしています。
北海道知事も佐賀県知事も反対の姿勢を表明しています。知事が反対すれば、文献調査の次の段階である概要調査には入れないことになっています。
寿都町は概要調査に入る前に住民投票を行うことにしていますが、片岡町長は「調査を受け入れる自治体が他に現れるまで住民投票を実施しない」方針を示していました。(NHK)

グレー地域でもどこでもいいから、文献調査に手を上げてもらって、とりあえず前に進めたい。まさに「地層処分にむけて進んでますよ」、「原発はトイレなきマンションではないですよ」という印象操作です。
文献調査に手を上げればもらえる20億円の交付金は電気代にふくまれている電源開発促進税から出されています。

六ヶ所村で30年から50年保管という約束

早く最終処分場を決めないといけないのには、青森県との約束のこともあります。青森県六ヶ所村の管理施設には海外の再処理工場から返還されたガラス固化体が1830本(仏国分1310本、英国文520本)が保管されています。国は青森県に30年から50年保管したあと、最終処分場に搬出すると約束しました。仏国からガラス固化体が初めて運ばれてきたのは1995年4月、来年には30年になります。

これ以上高レベル放射性廃棄物を増やさないで!

「日本には最終処分する適地なし」という声明をうけて、最初にやるべきことは原発を止めること、高レベル放射性廃棄物の量をこれ以上増やさないことです。それから高レベル放射性廃棄物をどうするか真摯な議論をするべきなのです。

*1 タイトル画像は「科学的特性マップ」の九州北部です。玄海町はすっぽりグレーです。

*2 海外返還廃棄物の歴史と現状(新規制基準対応)
http://www.aesj.or.jp/~fuel/Pdf/seminar/2022_txt/1130_rokkasho_4.pdf

*3 「さすらいの高レベルくん」よかったら読んでみてください。日本で地層処分するのは原発から出た使用済核燃料ではなく、それを再処理をしてできたガラス固化体の「高レベルくん」です。先行するフィンランドなどとは違います。

*4 東京新聞 5月11日

*5 北海道新聞 社説 5月11日


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