バブル崩壊後の1990～2000年代、雇用環境が厳しい時期に就職活動を行い、現在も様々な課題に直面している就職氷河期世代。現在三重県では、就職氷河期世代の正規雇用を目指し、関連機関での就職相談や
就職氷河期世代受け入れ企業が参加する「合同企業説明会」などを開催し、サポートを行っています。

今回ご紹介するのは、40代で初の転職活動をし、県内の警備保障会社で働く就職氷河期世代の岡村孝さんのストーリーです。就職氷河期のあおりを受け、1年間の就職浪人を余儀なくされた岡村さん。その後、印刷会社に勤めたものの、デジタル化の影響で市場はどんどん縮小傾向になっていきます。このままではいけないと未来を見据え、人生初の転職に挑むことに。どのように転職活動を行い、やりがいを感じる仕事と出会ったのでしょうか。

当事者である岡村さん、岡村さんの先輩である営業部・瀬古智之さん、そして人事担当の田中久美子さんにお話を伺いました。

（表紙画像：左から田中さん、岡村さん、瀬古さん、白石さん）

就職氷河期世代に目を向けた採用活動

どのような経緯で就職氷河期世代を対象とした求人をスタートしたのか、まずは人事担当の田中さんに経緯をお聞きしました。

ーー就職氷河期世代対象の合同企業説明会へ参加した経緯をお聞かせいただけますか。

人事課  田中さん：ハローワークから「就職氷河期世代向けの面接会をするので参加しませんか」とご提案を頂きました。まずは「対象になるのはどんな人たちなのか」「どんな背景があるのか」を理解することから始まりました。バブルが弾けて正規雇用されなかった、その影響で今も苦労をされている方がたくさんいることを知り、弊社でも何か力になれたらと説明会に参加させていただきました。

ーー実際に参加してみて、どのような印象を持たれましたか？

田中さん：やはり10年、15年働いてらっしゃった方は、礼儀やマナーを身に付けているので、即戦力として働いていただけそうだなというイメージを持ちました。これまでも経験者採用は行っていましたが、就職氷河期世代を対象にすることで視野が広がり、30・40代の方にもこんな素晴らしい人がいるんだと気づかせてもらいました。

田中さん：皆さんとお話する中で、自分の思った通りの就職ができなかったとおっしゃっている方も多くて。これまでの職業、生活の中で完全燃焼できていない悔しさから、「このままで終わりたくない」「これがラストチャンスなんだ」という熱意を感じました。当社は営業だけでなく、警備職、技術職もありますし、特に資格や経験も問いません。ですから何らかの希望に答えられるのではないか、そういった話をしました。

ーー技術職も、資格や経験は必要ないのでしょうか？

田中さん：技術職は防犯システムの機械の設置や点検を行いますが、入社してから技術を覚えることができるため、資格などは特に必要ありません。警備職として入社して、技術職になった方もいるんですよ。

ーージョブチェンジして、警備職にもなれるんですか？

田中さん：当社のCMのイメージから『柔道やレスリングをしていないと入社できないんですか』と聞かれるんですが、スポーツをしてなくてもマッチョじゃなくても警備はできます（笑）。自分で希望を出して職種を変えることもできますし、『技術職志望だけど、これまでの経験を活かせそうだから営業をやってみませんか』と、これまでの経歴を見て提案させてもらうこともあります。「自分にはどんな仕事が合うのか悩んでいる」という方でも、働きながら自分の道を決めることができますよ。

ーー面接では、どういったところを重視しているのでしょうか？

田中さん：当社の社長が社員を選ぶ基準は、誠実な人。警備・セキュリティサービスを行う当社を受けようという時点で、正義感が強い、社会貢献をしたいという気持ちの強い方が多いんですよね。今回話をきいてもらう岡村さんも面接の時から、そのような印象を受けましたね。

初めての就職では叶わなかった想い

続いてお話を伺ったのは、40代で人生初の転職に挑んだ岡村さん。どのように転職活動を行い、現在の会社と出会ったのでしょうか。

ーー転職のきっかけから教えていただけますか？

岡村さん：前職は印刷会社の営業をしていましたが、紙媒体がどんどん減り、印刷業界自体が縮小傾向にあると感じていました。売り上げも年々減少して、いよいよ先がないぞと危機感を感じて転職を決意しました。Web媒体でも仕事を探していたのですが、商工会議所が開催していた「ジョブマッチング」に参加し、今の会社に出会いました。そこでオリンピックやサミットなどの警備も担当しているということもお聞きし、働いてみたいと興味が湧いたんです。

ーー最初は警備職に興味を持たれたんですか？

岡村さん：実は昔、警察官を志望していたんですよ。2003年に三重県警を受けたんですけど、そのときの合格率が約14倍、今の3倍ほどでした。不採用だったどころか就職もなかなか決まらなくて、1年就職浪人して前職に就くことができました。その頃からの憧れもあって、人の命を守る、財産を守るという仕事は、とてもやりがいのある仕事に見えました。あとは、ガードマンの制服にも惹かれて（笑）。田中さんから頂いた名刺を見て、採用サイトから応募しました。

ーーでも、営業職として応募されたんですか？

岡村さん：実は警備も営業も両方するのかなと勘違いしていたんです。勢いよく応募したところもありまして…（笑）。でも前職を活かせるということでは、営業職で良かったかなと思います。

田中さん：確か営業職で応募してもらっていたんだけどな…。もし、希望があれば警備職につくこともできるから！

岡村さん：こういうところも就職してよかったなと思うところです（笑）。

ーー年齢を重ねてから新しい環境に飛び込むのは勇気がいることだと思います。働き始めて、難しいと感じたことは何ですか。

岡村さん：上司より自分が年上だったこともあり、最初はここでやっていけるか本当に不安でしたし、上司も僕に気遣って言いたいことが言えないんじゃないだろうかと心配になりました。でも、瀬古さんを始めとする営業の仲間と気兼ねなく話ができるようになり、わからないことはすぐに相談できる環境でほっとしました。プライベートでも同僚たちとキャンプに行くぐらい部署の雰囲気も良くて、人に恵まれているなと感じています。

ーー同じ部署の瀬古さんは、どのように感じていらっしゃいますか？

瀬古さん：岡村さんは自分より年下の同僚にも謙虚に接してくれ、入社1ヶ月も経たないうちに部署に馴染んでいましたよ！名前が有名な芸人さんと一緒ということもあって、部署の仲間も、時にはお客さまからも愛のあるツッコミをもらっています（笑）。

実は僕も今年の夏に7年ぶりに戻ってきた、出戻り組なんです。新卒で入社して7年働いたんですが、他の仕事も経験したくて別の企業で働きました。戻ってきたときは、僕のことを知らないメンバーばかりで緊張しましたが、やさしく受け入れてくれました（笑）。以前と違うのは、最低限の上下関係は大切にしつつも、意見が出し合える環境になってきていて、すごく良い雰囲気だなと感じています。

ーーとても素敵なことですね！岡村さん、仕事面での難しさを感じることはあるでしょうか？

岡村さん：サービスや商品がとても多いので、1から覚えるのは大変なことでした。商品知識不足でお客さまに「君のところの商品やのに知らんのか」と言われてしまって。これはまずいと思って必死に勉強しました。前職ではいつも同じお客さまの元へ行き、同じスケジュールで仕事をこなす、いわばルーティンワークの繰り返しでした。しかし、今の仕事は自分でスケジュールを組み、お客さまにとってどの商品が必要なのかを考えて提案します。自分が主体的に考えて行動することは、前職との大きな違いですね。

ーー同じ営業職でも、全く違いますね。

岡村さん：そうですね。自分で考えて行動するという意識を働きながら身に付けられるのはありがたいです。毎朝清掃時間があるのですが、どうすればこの窓をきれいに拭けるか、人が掃除している場所と違う所をきれいにした方がいいなと、自分で考えて掃除するんです。その意識が日々の営業活動にも、活かされているかもしれませんね。

ーー最後に、就職・転職活動を頑張っている氷河期世代の方にメッセージをお願いします。

岡村さん：転職活動を始めた時、とても不安が大きかったんです。でも勇気を出して転職にチャレンジしたことで、やりがいを感じる仕事に出会えました。

実は前職でお世話になっていた取引先の社長とお会いして、今の仕事について色々とお話する機会があったんです。そしたら「いい仕事についたな」と言っていただけて、転職して良かったと実感できました。決められたことだけをやっていた自分から、一歩踏み出せたような気持ちになれましたね。まだまだ難しいと感じることもありますが、これからも自分なりに頑張っていきたいと思います。私と同じような想いを抱える方には、ぜひ新しい環境に飛び込む勇気を持って挑戦していただきたいです。

正規職員として働こうとお考えの方、自分にあった仕事をお探しの方、ひとまず就職相談をしたいとお考えの方は、津駅東口直結アスト津３階にある就職氷河期世代専用窓口「マイチャレ三重」を是非お訪ねください。

また、今回ご紹介したような「就職氷河期世代限定の求人」については、ハローワークで探すことができます。ハローワーク四日市には就職氷河期世代専門窓口も設けていますので、ぜひ足を運んでみてくださいね。

ハローワーク四日市「就職氷河期世代支援窓口」

三重労働局「就職氷河期世代活躍支援特設ページ」

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