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20230815(G1 CLIMAX 33を経て)

 プロレスは長く観るものだ。そうして泣ける大人になっていく。

 新日本プロレス夏のリーグ戦、「G1 CLIMAX 33」が一昨日終了した。私は2011年7月からずっと新日本プロレスのファンであるが、ここ数年の新日本プロレスには少し単調な物足りなさを感じていた。そのため、新日本プロレスワールド(公式の試合動画配信サービス)の登録を解除し、結果だけを追う様になっていた。

 好きな選手はと問われるとたくさんいて困るが、柴田勝頼にジョン・モクスリー、ザックセイバージュニア、鈴木みのる等に痺れつつも男でありながら惚れた男はただ2人。中邑真輔、そして内藤哲也である。私がプロレスを見始めた翌年頃から中邑真輔選手は今のスタイルを確立し、単なる強さだけではない、アートとしてのプロレスで我々を魅せるようになった。そのショーに今もなお虜にされているのが私である。私の好きなプロレスラーの特徴はただ強い、見た目がいい、人気があるというのではなく、思わず応援したくなる、追っかけたくなる、試合を見た日の夜にベッドの中で反芻してはその生き様に憧れてしまうほどの魅力を持っているかという点にある。だからこそ勝ってばかりの選手を見てもそそられないし、メディアに露出してよく認知された選手よりも普段の姿があまり見えず、多くを語らず、試合で魅せる選手に惹かれるのだ。その点で中邑真輔選手はたまらない。2011年頃までの強さを追い求めるスタイルからその後の特徴的で魅惑的なスタイルに移り変わったことで当時中学生だった私はすっかり心を奪われ、学校でもしょっちゅう真似をしていた。彼については今でも昔のどの試合を見返しても思わず声が出てしまうほど芸術的だ。まさにそれぞれが色の違う作品である。入場、コール、試合の前半から中盤、後半、試合後のマイク、帰る姿まで全てが彼にしかなし得ない流線を描いている。今も大好きだ。

 そしてもう一人の憧れ、内藤哲也選手について。彼の歩みもまた2015年の夏以前、いわゆるスターダスト時代と以降の制御不能時代に大きく分かれる。内藤選手も若手時代から皆に期待され、当時の棚橋選手を継承する次世代のエース筆頭であったが、膝のケガ、そしてその後10年以上も争い合うライバル、オカダカズチカの存在によって一度はその人気、期待が地の底まで落ちてしまった。しかし2015年のメキシコ遠征以降、自由の風に吹かれたことで吹っ切れた内藤選手は一瞬我々を戸惑わせつつも2016年には完全に勢いに乗り、時代を我が物にしてしまった。気がつくと私もロスインゴTシャツに身を染めていた。前者の中邑選手同様、過去と闘い、一度落ちて這い上がる姿に私は惚れてしまうようだ。そうして確固たる地位を確立していた内藤選手だが、ブレイクした時点での年齢を考えると41歳となる今年は間違いなくプロレスラーとして勝負の一年であった。令和闘魂三銃士を始めとする新世代の台頭により、気がつけば内藤オカダ世代もすっかり中堅である。同時に私もプロレスファン歴の長さを感じていた。

 そして今回のG1決勝戦は件の内藤vsオカダというカードになった。昨年優勝のオカダも初優勝は10年前。そして今回の優勝者となった内藤も初優勝は同じく10年前である。2014年1月4日の東京ドーム大会は初めてメインイベントのカードがファン投票によって決定され、今はなきIWGPインターコンチネンタルのベルトがメインの舞台で棚橋、中邑によって争われた。その影でダブルメインイベント1、すなわちセミファイナルとしてIWGPを争ったのがこの2人である。つまり当時のファンからすればこの2人はまだまだ顔じゃない、もっと見たい試合が他にあると見られてしまっていた。しかし今回の優勝決定戦はどうであったか。客の期待感は間違いなく2人を求めていたし、彼らこそこのリングのど真ん中、主役であった。10年の流れを追い続けていた私からすれば涙なしには見れない、本当に胸の熱くなる試合であった。

 となると、今まさに若手筆頭として令和闘魂三銃士の3人、あるいはオーカーンやマスターワトが躍動していることは無視できない。彼らの中で初めにIWGP世界ヘビーを巻くのは誰か、オカダ内藤を超えるのは誰か、その間にどんなストーリーを巻き起こしてくれるのか。間違いなく10年後の新日本プロレスを湧かせてくれるのは彼らの存在だ。未来の美酒のために今後も追い続けていく所存だ。

追伸
 中邑、内藤両者のファンの方にはぜひ以下の試合を見ていただきたい。 

2015年11月30日 福岡・博多スターレーン 第8試合 「WORLD TAG LEAGUE 2015」Bブロック公式戦 石井智宏&中邑真輔 VS “キング・オブ・ダークネス”EVIL&内藤哲也

 中邑、内藤の遺恨が展開された時期が一度だけあったが、2011年下旬〜2012年初頭であったため、両者とも現在のスタイルを確立する以前であった。その後両者が交わることはほとんどなく、特に内藤がロスインゴに加入してから中邑が新日本プロレスを去るまで約半年間しかなかったため、タッグマッチですら当たることは少なかった。
 こちらの試合は現在視聴できるもので唯一その半年の間に実現したタッグマッチで、試合前の中邑のコール時に内藤がフェイントをかける様子や中邑が内藤を挑発する様子、両者がエキサイトするところなどを観れる貴重な試合である。定点カメラ一台、実況解説もなしのため、多少見づらい点はあるがファン垂涎のひと試合、ぜひご鑑賞あれ。

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