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vol.3 ありのまま

年末の大プロジェクトにも、猫目石のお客様は参加してくれた。
その頃には無事、紛失事件の指輪も納品できていた。あれだけお待ちいただいたにも関わらず、お客様は愚痴の一つも言わず、納品時には喜んで受け取ってくれた。
それどころか、時が経つに連れお客様との関係は私達スタッフとも深みを増し、副社長以外でも商品を購入してくれるようになった。有り難いことに、私からも購入してくれるようになったのだった。

それと共に、お客様には更なる変化が訪れていた。
お客様のマスクがとうとう外されることとなったのだ。無かった歯を入れたからだ。
しかも、インプラント。綺麗に並んだ艶やかな歯は、お客様を若々しく、輝きを放つように映し出していた。
元々、色白で綺麗な肌をしているお客様。マスクを外したその笑顔を見た時、キラキラと輝いていて、年齢を超えた美しさを感じた。これまでのマスクの裏の笑顔は、こんなにも素敵なものだったのだと心底、感動したのを覚えている。
歯は、重要なポジションを占めているのだと改めて思った。

私達は、お客様のシルバーカーを1号機、2号機と冗談めかしてそう呼ぶようになっていた。その時点では、3号機を使用中だった。時が経つに連れ、曲がっていたお客様の背中がだんだんと真っ直ぐになっているような気がしていた。
ある出店時、会場の向こうからお客様が入って来る姿が見えた。

ん?

いつもと何かが違う。
何が違うのか初めは分からなかったが、良く見ると押しているはずのシルバーカーを引いている。私は目を凝らした。
だんだんと近づいて来るお客様。
引いているのは、少し大きめのキャリーバッグだった。物を押すのと引くのとでは、姿勢がまるで違って見える。
初めてお客様と会った時のこと…
私はお客様のことを老女と表現した。
まさかこのお客様にその表現を?と、疑いたくなるくらい姿勢は真っ直ぐ伸び、軽やかに歩いて来るその姿を見て、空いた口を塞ぐのを忘れたくらいだ。

「◯◯様、いらっしゃいませ。3号機はどうなさったんですか?」

開口一番、私が尋ねると、

「最近、腰の調子が良くなったから、新しいものに変えたのよ」

と、お客様。
そうは言っても高齢のその足で急に支えがなくなっては危ないのでは?と、思った私は、

「でも、大丈夫なんですか?いきなり支えをなくしてしまって…」

と言った。
心配する私に、

「これ、こうやると押すことも出来るのよ」

と、お客様は取っ手の部分を前後に移動させてみせた。そのキャリーバックは、押すことも出来る優れものだったのだ。

「なんですかこれは⁈凄い!!4号機は、最新式なんですね(笑)だんだん進化してませんか?凄い!カッコいい、カッコいいです!!」

私は、お客様がどんどん元気になるのが嬉しくなって、いつも以上にはしゃいだ。
お客様は照れ臭そうにはにかんだが、私と目が合った途端、二人でクスクスと笑った。

それから数年の時が過ぎ、ご主人が他界された。お客様はご主人を見送られた後もこれまでと変わらず、足しげく通ってくれた。ご主人が亡くなられてからは、飼い猫が妊娠し子猫が3匹増えたこと、ボランティアに行く機会が増えたこと、次男さんが赴任先から戻られたことなどを、遊びに来た時に話してくれた。


商売の方はと言うと、顧客の人数もかなり増えてきたことから上顧客だけの特別な招待会をホテルで開催することが決まった。
招待客は100名ちょっと。
もちろん、その中にはお客様も含まれている。その展示会では、ピアノの生演奏を聴きながら商談をし、食事を別室で楽しむ演出を施していた。

展示会当日
予約制の為、招待客は途切れることなく来場し、会場内は随時、賑わいを見せていた。お客様の来場予定は、初日の夕方。
予約時、お客様から妹を連れて来られると聞いていた為、〝お客様の妹さんはどんな方なんだろう〟と言う興味から、私は会えるのを楽しみに待っていた。

お客様は、予約の時間きっかりに来場された。

「◯◯様、お待ちしておりました。今日は、妹様もご一緒にお越しいただけ、本当に嬉しいです。ごゆっくりなさって行かれてください」

と言って、二人を会場内へと案内した。
お客様は痩せていていつもコロコロと良く笑う方だが、妹さんは膨よかでクスリとも笑わない。全く似ていない姉妹だった。
心なしか、妹さんは少し緊張しているようにも見えた。
会場内に入った二人は飲み物を飲みながら雑談をしていたが、間もなくお客様は席を立ち、ピアノの椅子に座り出した。
ピアノの演奏は時間帯で区切っていた為、その時はピアニストが会場内に入っていない時だったからだ。

ポロポロ~ン…

鍵盤に軽やかに指を滑らしたお客様。
ピアノの演奏が始まるのかと思ったのか、会場内のお客様方の視線が一瞬こちらに集まった。が、お客様が弾いているのを見て、またガヤガヤと同じ空気に戻った。
お客様の行動を見ていた私は、

「◯◯様、ピアノ弾けるんですか?」

と、高揚して尋ねた。

「子供に聴かせる程度よ、ピアノって言うかオルガンで弾けるくらいね」

と、お客様は笑いながらそのまま演奏を始めた。私は興味津々で音色を聴いていたが、曲を聴いて、

なるほど…

と、微笑ましく思った。
奏でた曲は、〝手のひらを太陽に〟…
ザワザワしていた会場内が、少し静かになった。それを気にしたのか妹さんが、

「もう、そんなことするのやめてこっちに戻って!」

と、他のお客様に聞こえるように促した。私は妹さんが気分を害してはと思い、販売スタッフに横に座って話し相手をするよう指示を出した。
すると、お客様は隣に立っていた私に向かって、

「あの人、私が何かするといっつも怒るのよ。私は、怒られてばっかり。どっちが姉かわからないでしょう?」

と、舌を出した。
妹さんは妹さんでスタッフにお姉さんのことを話しているようだ。
そしてまたなんの前触れもなく、二度目の〝手のひらを太陽に〟を奏で出したお客様。私は可笑しくなって、右手の拳を斜めに振りながらその横で歌い始めた。
演奏が終わると、会場内から拍手が起こった。お客様は、気を良くしたのか片手を挙げて声援に応えた。
そして更に、次の演奏が始まった。
曲は、春日八郎の〝お富さん〟

♪死んだはずだよお富さん、お釈迦様でも…
演奏と共に歌い出した私だったが、その後の歌詞は知らない。

「って、歌詞分かりませんけどー」

と焦って言った私を見て、会場内に爆笑の渦が湧いた。お客様は、ケラケラと笑った。いつのまにか分離していたはずの会場内は一体感に包まれていた。
ちょうどその時、ピアニストが演奏の為に会場に入って来た。ピアニストは、音が外に漏れていたようで、

「お富さん、お上手でしたねー」

と、お客様に向かって一言。
会場内は、またまた爆笑の渦に包まれた。
それからは、お客様方からピアニストへ曲のリクエストなどが入り、各々が充実した時を過ごした。
結局、この日の商売は、お客様の妹まで購入してくれ、予想以上の売上が上がった。
帰りに、

「こんなに楽しかった宝石の展示会は初めてでした。ありがとうございました」

と、クスリとも笑わなかった妹さんが、笑顔でそう言ってくれた。
更に嬉しいことに、その後、妹さんも会社のヘビーユーザーになってくれたのだった。

ホテルの展示会になると、やたら畏まった雰囲気になり、その場の空気に呑まれて買い物をしたと言う話しを良く耳にする。
けれども、そのような緊張状態で買い物をしたお客様との付き合いは長くは続かず、やもすれば、その一回限りになることも良くある話だ。
〝高級なものを高級感溢れる場所で優雅に買う〟これはとても素敵なことだ。

買い物=楽しむ

それが、私達の考え方だった。

そんな時、百貨店からお客様へ外商員をつけることを提案をされた。
私達の会社から宝石を買うようになったお客様は、同時に百貨店利用顧客としてもVIPになっていたのだった。
毎回、現金で買い物をしていたお客様だったが、カードでの買い物の方が便利だとそれを受け入れてくれた。
外商が付くと、宝石に限らず、着物、陶器、絵画、時計、眼鏡、数々の招待会の誘いを受けるようになる。
しかも、ホテルや高級レストランへの招待だ。お客様は、外商の招待会には積極的に参加され、毎日を忙しそうに過ごしていた。もちろん、私達がお店に出店している時も、毎回、欠かさず来場された。
ある日、お客様の担当になった外商員が私の元へ来てこう言った。

「あのお客様、いつも汚い格好してるんだけど、宝石だけは良いの買ってるんだよね。どうしたら、そうなるの?」

と。

はぁ⁈


私は、まるで自分が言われたかのように胸がズキンと痛んだ。そして、〝汚い格好〟と言う言葉を吐いた外商員に、激しい怒りを覚えた。
初めて出会った頃のお客様はいつも同じ格好をしていた。でも今は、百貨店で取り扱っているような高級服を見に纏っている訳ではないが、同じ格好をして来ることはなくなった。
そう思うと無性に腹が立ったのだ。
自分が大切に思っているかどうかで、こんなにも感情は変わるのだと自分自身に驚くばかりだ。思い起こせば、人のことを言えた義理ではなかったのに…

私は、何故そうなったかを知っていたが、

「私達は有り難いんですけど、分からないですぅ〜」

と、可愛い声を出して言ってやった。
しかし、さすが外商員。
数ヶ月経ったある日、また私の元へやって来て、

「◯◯様が時計買ってくれたよ」

と、わざわざ言いに来た。
私は、外商員とお客様の親密度が高まると自分達の商売に影響する不安が頭をよぎった。が、それを振り払い、
〝何を何処でお買い物するかを決めるのはお客様だから…私達は努力をし続けるのみ!〟
と自分に言い聞かせ、外商員の話しに耳を傾けた。聞けば、コミニュケーションを取る為にその人なりの努力が見受けられた。
その話しを一部始終聴かせる外商員は珍しい。この人は素直な人だったんだ…と、その時思った。お客様がその外商員から物を買った理由がなんとなく理解出来た。
外商員もお客様との距離が縮まり見え方が変わったからか、それからは〝汚い格好〟などと言う言葉は一切出なくなった。
私は外商員と自分が重なって見え、共感と恥ずかしさで複雑な気分になった。


それは夏が終わる少し肌寒くなった時期だった。その日は、外商の招待会が店外で開催されており、私達は店内で宝石の展示会を行なっていた。外商の招待会の場合、結構遠くの有名ホテルを利用したりする為、お客様方は、店の前から出る送迎バスで移動する。
その日、招待会から戻って来たお客様が店内の私達のブースに立ち寄った。何やら大きな紙袋がキャリーバックに括り付けてある。

「◯◯様、お帰りなさいませ。ご招待会は楽しんで来られましたか?」

と聞きながら、私はあからさまに紙袋の方を見た。

「これ?外商がこれが似合うって薦めるもんだから買っちゃったのよ。まぁ、気に入ったからいいんだけどね」
「見る⁇」

お客様は茶目っ気たっぷりに私を見て、おもむろに紙袋の中から品物を引っ張り出し始めた。

「え?見せていただいても良いんですかぁ?」

私は遠慮する振りをして、興味津々に出てくる品物を待った。
出てきたのは、カットミンクの毛皮のショートコートだった。しかも、エンジ色。

「わぁ…なんて素敵な色!!
◯◯様、本当お洒落ですよねー」

私自身も毛皮が好きな為、珍しい色のお洒落なコートを見て興奮し、そう言った。
お客様はその様子を見て、わざわざコートを羽織ってくれた。
私は、会場内に置いてあった姿見を持って来てお客様の前に置いた。お客様は、ファッションショーの最中かと言うように、鏡の中の自分に向かって少し背を反らせて見せた。最早お客様には、丸まった背中と言う表現も当てはまらなくなった。

ある時
その日遊びに来られたお客様は、少し元気がなかった。

「◯◯様、今日はなんだか元気がないように見えるんですが、私の気のせいですか?」

お客様の顔を覗き込むようにして尋ねると、

「分かる?」

と、横目でチラリと私を見た。

だよね…


いつも明るいお客様があからさまに肩を落としているのだから、聞いてくださいと言われているようなもんだ。

「実は詐欺にあっちゃって…」

お客様は、一層肩を窄めてそう言った。

「えぇっー⁇何の?」
「オレオレですか⁈」

驚きのあまり、タメ口になりそうになったがなんとか持ち堪えた。

「違う、違う」

お客様は右手を顔の前で振りながら、

「オレオレは、一回電話がかかってきたことあるんだけど、息子がそんな電話かけてくる訳ないって思って撃退してやったわよ」

オレオレがかかって来たことにも驚いたが、では、何の詐欺にあったのか?
気になった私は、話しの続きを待った。

「だって息子は警察庁に勤めている訳だから、何かあったって私に電話がかかってくる時は、息子じゃない人からかかってくるでしょう」

えっ?

お客様の息子さんが警察庁の人だと言うことに更に驚いた私。

「ご一緒にお住まいの次男さんですか?」

と、尋ねると、

「そう、そう。だから、そんなんじゃ駄目だとかこうしろとか、いっつもガミガミうるさいのよ。電話がかかってきた時なんか息子に言ったら、何で電話に出てるんだ?留守番電話にして知らない人の電話には出るなって言ってあるだろ!って怒られて…」

と、お客様。

「心配だからガミガミ言ってしまうんでしょうね。その気持ち分かるような気がします」

警察庁で勤めている次男さんの情報をもっと聞きたかったが、そう言う訳にもいかない。

「そんな中、詐欺にあっちゃったでしょう?それを話したらもう…これよ、これ!」

お客様は、両手の人差し指を立てて頭の上で角にして見せた。

「息子さん、かなり怒ってらっしゃったでしょう?それは、犯罪に対してではないんですか?」

そう言った私に、

「もちろん、それに対してはかなり怒ってたわよ。だけど、それに引っかかった私に考えが甘過ぎるって更に怒るんだから…」

私は何の詐欺なのかが気になり、

「◯◯様が騙される詐欺とは、とても巧妙だったんでしょうね」

眉を八の字にさせてそう言った。

「そうなのよ。実に巧妙で、その日まで全く気がつかなかったもの」

待ち切れず、

「どんな手口だったんですか?」

と、尋ねた私に、

「旅行の申し込み用紙が送られて来てね、バス旅行に連れて行ってくれるって言うのよ。なんだか豪勢なホテルだし、豪華な食事も付いていて…で、年会員になったらもっと特典があるって言うから、これくらいの値段で年に何回か旅行に連れて行ってもらえるんなら良いかな〜って思って、旅行代金と年会費を払ったのよ。そしたら、その旅行会社が存在しないって言うんだもん。驚いたわよ」

と、お客様。

「えっ?それは振り込んだ後に気付かれたんですか?なぜ、実体がないことがわかったんですか?」

質問をする私に、

「だって、旅行の時期が近づいても何の連絡もないから、どうしたらいいのか電話してみたら電話が繋がらないのよ。それで息子に話してみたら、怒る、怒る…もう、なんだか嫌になっちゃったわよ」

話しながら辟易した様子になって来たお客様。それを見て、自己嫌悪に陥っているところを息子さんから咎められ、慚愧に堪えないのだと察し、

「人の楽しみを利用してそんな悪事を働く輩は、畳の上では死ねませんよ。絶対、バチが当たります。それにしても、旅行に出かけた後に◯◯様の身に何かあったと思ったら怖いですよね。お金は悔しいですが、◯◯様に何もなくって本当に良かった。
しかも、息子さんが警察庁でお勤めでしたら尚、頼りになるじゃないですか!この機会に悪人が捕まれば良いですね。しかし、警察庁ですか…凄いですね〜。お役人じゃないですか。警察庁にお勤めですって方、お聞きしたの初めてです!カッコいいですねー」

と、私はお客様の気持ちを代弁するようにそう言い、自分の言いたいことも同時に言い放った。
すると、突然息子を褒められたお客様は、

「そうなのよ。ガミガミは言うけど、今回の件は、息子も色々動いてくれてるみたいで、先日なんかお巡りさんが見回りに来たから、〝もう大丈夫だからうちは結構です。貴方がたも忙しいんだから…〟って、直ぐに帰ってもらったのよ」

と、今度は少し遠慮がちに息子さんの自慢話をした。

「そう言えば次男さん、赴任先から戻られてご一緒にお住まいになられているんですよね?ご長男さんもお近くにいらっしゃるんですか?」

お客様には息子が二人いることを知っていた私。ここまで来たら、長男の仕事も気になり始めた。歳を重ね、お客様のプライベートを躊躇なく聞けるようになったのか、長男の話しを更に振った。

「長男は四国に住んでるの。赴任先で仕事をしていたんだけど、気に入っちゃったみたいでそこで結婚して居着いちゃったのよ。もう、二人とも定年も近くなったから自由にやってるわよ。次男は仕事がお固過ぎてこの調子でしょ?だから、嫁の来てなし!」

頭の上で右手を前後に振りながらそう言うと、吹っ切れたように笑った。

「長男さんも赴任されていらっしゃったなんて、長男さんもお忙しいお仕事なんですか?」

と、私が聞くと、

「長男は役所勤めよ。ただ、こっちは時間から時間までの規則正しい生活をしてるからのんびりしてるわ。元々、性格もそうだから合ってるんじゃない?」

役所で赴任?

これまた、地方公務員ではない…
二人の息子さん達の職業と話しの内容から、その地位を知った私は内心とても驚いていた。二人の息子さんは、世間で言う紛れもないエリートだったのだ。

その後、お客様は話しを聴いてもらえたことに満足したのか、来た時とは打って変わって足取りも軽やかに手を振りながら帰って行った。

しかし、残された私は、頭の中で様々なことがグルグルと旋回していた。
それは、初めて会った時のお客様の装いが、経済的なものや環境とあまりにも掛け離れていたことを不思議に思ったからだ。
考えれば考えるほど気になり始め、とうとう分析まで始まった。
これまで百貨店で使ったお金は6桁を優に超えていた。どう考えてもお金がない訳ではない。では何故、あのような格好でいたのか?歯も入れずに⁇
まるで、童話の中の話のようだと思えてきた。
その答えを自分の経験値の中から見い出そうとしたが、全く思い浮かばない。

自分に構ってあげる時間がなかった…

ふと、副社長と初めて会話した時のお客様の言葉を思い出した。

義理母の介護

ご主人の介護

自分のやりたいこと?

ボランティア

猫目石

自分の格好?

優先順位?

お客様のその時々の行動を思い浮かべてやっと出てきた答えだった。
そして、私は気づいたのだ。

お客様は他の誰かの目は一切気にしていなかったことに…

だからこそ、始めから自分の格好を恥じるような態度は一度も見せていない。
お客様の目は、その時そこには向いていなかったからだろう。

今ここでやるべきこと…
その中で自分が何をすべきか?
何をしたいのか?
ありのままを正直に生きている…

そう考えると、全ての辻褄が合った。
心が震えた…

自分に正直に生きられれば、あんなにも寛大になれるのかな?

そう思った。
そして、自分のことに置き換えるつもりで優先順位を想像してみた。
頭に浮かんで来た一番は…
格好だった。
自問自答で出た答えに一人で笑った。
まぁ、中身に自信が持てないのだから仕方ないとしよう…

もちろん、お客様の気持ちや考えていることはお客様にしかわからないし、お客様の生き方を真似ることも私には出来ない。
けれども、そんなお客様の行動分析をした結果からあることを学び、〝もうやめよう〟と心に決めたことがあった。
それは、

〝カッコ付けるのをやめること〟


私はお客様のおかげで、他人が自分をどう思うかを気にするのではなく、自分がどうしたいのかを素直に考えるようになったのだ。

次回、またまた波乱が巻き起こる!?

〜最終章に続く〜





百貨店を舞台に、出逢えたお客様に販売を通して教えてもらった数々の〝気づき〟による自身の成長記録と、歳を重ねた方々の生き方を綴っています。出会った順で更新していますので、私自身が少しずつ成長していく変化を楽しみながら百貨店の魅力も感じて頂けたら幸いです。 日曜日に更新します!