見出し画像

世論からみる安倍内閣の6年

はじめに 


 もしテレビや新聞に親しんでおられるなら、最低でも毎月1度は必ず「内閣支持率が上がった」、「世論はこの政策に反対している」というようなニュースを聞くと思います。
 でも実際のところ、ニュースを聞いたそのときには、支持率が上がったことや世の中の政治に対する反応を記憶していても、1ヶ月後また同じニュースに触れる頃には忘れているものです。ましてやこの1年間、世論がどう動いてきたかなんかわかりっこ無い方が大半だと思います。
 今回は、私たちMielkaが作った「6年間の世論を追う」というコンテンツを利用しながら、この6年間、世論がどう動いてきたのかを見ていきます。

1.世論が大きく動くところ

1.1 支持率が下がったとき

 まず、内閣支持率が大きく動くところから見ていきましょう。安倍内閣の支持率の推移の中でもとりわけ目を引くのは、2017年7月に底を打つ支持率の急落でしょう。4月には平均して約55%あったものが、3ヶ月後には約34%にまで急落しているのです。一体何があったのか。
 この期間、数々の不祥事や失敗が安倍政権を襲いました。安倍首相の意向に沿ってルールが曲げられたのではないかという森友・加計問題が国会で持ち上がります。さらに与党議員や大臣、首相の失言・不祥事が重なりました。同時期に国会ではテロ等準備罪を新設する法案が審議に入りましたが、野党から「共謀罪法案」と呼ばれ、その審議姿勢が厳しく批判されていました。こうした種々のマイナス要素が絡み合い、内閣支持率が急落したのです。テロ等準備罪については、読売新聞や産経新聞の世論調査では賛成が反対を上回ったように、必ずしも世間からの反発が多数であったわけではないですが、日経新聞の同年7月の世論調査では「安倍政権におごりがあると思う」と答えた人が65%(1)もいた事からも、多くの人が数々の不祥事を厳しく見ていたことが伺えます。
 他にも、例えば2015年の7月から支持率が概ね不支持率を下回っていた時期には「安保法制」が国会で審議され、SEALDsの主導する国会前デモが連日取り上げられていました。2018年2月から3月に再び不支持率が支持率を上回っているのは、財務省による公文書改ざん疑惑が響いていると考えられます。このように、大臣や与党議員が不祥事を起こしたり、世論からの反発の強い法案を審議する際に支持率が大きく下がるというのは、皆さんの感覚とも違わないのではないでしょうか。

1.2 支持率が上がったとき
 

 一方、支持率の上がる要因を見ていきましょう。
 例えば2016年から2017年にかけて、内閣の支持率が10%弱ほど緩やかに上昇しています。この時期に支持率が上昇した要因の一つは熊本地震です。震度7を記録し、東日本大震災以来の大地震となったこの災害で政権は堅実に対応し、有権者もこの働きを評価したものと思われます。日経新聞の世論調査では、政府の対応を58%が評価(1)、毎日新聞でもこの数字は65%(2)となっており、一定の有権者の支持を集めたことが伺えます。
 他にも伊勢志摩サミットが開催され、その流れでオバマ米大統領が広島の原爆ドーム前で献花をするなど、外交的な成果も上がっていました。日経新聞の世論調査では、62%がサミットにおける安倍首相の働きを、92%がオバマ大統領の広島訪問を評価しています(1)。とはいえこれまでを振り返ると外交成果だけでは決して支持率の上昇にはつながらないという検証もあり(3)、この時期における支持率上昇は、そういった一連のプラス要因の積み重ねということができるでしょう。大きな不祥事もなく無難に政権を運営し、経済も悪くはなっていないことから、現状維持としての安倍政権支持が増えたものと予想されます。


2.あまり動かないところ

2.1 不祥事があっても下がらないことも

 前段で内閣支持率が減少した理由として、大臣や与党議員の不祥事を挙げました。しかし少々の不祥事では支持率が増減しないこともあります。みなさんの記憶にも新しいかとは思いますが、第4次安倍改造内閣の桜田義孝五輪担当大臣は、サイバーセキュリティ担当大臣を兼務しているのにもかかわらず、USBを詳しくは知らないという趣旨の発言をし、その他読み間違いや軽率な発言も相次ぎました。
 しかし、2019年1月から4月(桜田大臣罷免)までの安倍内閣支持率の平均は40%代前半で安定しています。他にも、西川公也農水大臣が献金問題で辞任した2015年2月前後の支持率は、そこまで大きく変わってはいません。したがって、大臣や与党議員の不祥事が必ずしも内閣支持率の下落につながるわけではなく、こういった不祥事やミスが連続したとき、例えば上述した2017年のような場合に、支持率が大きく影響を受けるようです。

2.2 衆議院解散はあまり影響しない 

 また、衆議院の解散というイベントも、大して世論に影響しないようです。2014年の11月から12月にかけて、および2017年の9月から10月にかけて、安倍政権下は2度、解散総選挙を行いました。しかし支持率はともに数%下がったにすぎません。微差ですので解散が世論に影響したというよりは、たまたま下がった数字が出たと見るほうがいいでしょう。

まとめ

 長期的に見ても概ね世論というのは政権の動きに沿って動いていると言っていいでしょう。政権が堅実に運営をしているとき、支持率は上昇します。他方で、反対派が多い法案を通しにいったり、「政権がおごっている」と見られるような不祥事・失言が連続すると、支持率は下落します。
 しかし、継続的に支持率の上昇・下落が続くわけでもなく、時が経ち、新しいイベントが発生すると、世論は再びそちらを元に支持態度を決めているようです。現在、各社平均で50%を下回りながらも安定している安倍政権の支持率。参院選に向かってこれからどうなっていくのか、俯瞰した視点を持ちながら、選挙後の動きにも注目してみてください。

連動サービス:6年間の世論を追う by JAPAN CHOICE



★この記事はJAPAN CHOICEとの連動して選挙と政治を多方面から分析したシリーズです。ぜひ他のサービスもご利用ください。

★本サービスの開発・運用はクラウドファンディングで支えられています。下の画像より支援ページにとぶことができます。応援してくださると幸いです。

参考文献
(1)日本経済新聞「支持率を追う -日経世論調査アーカイブ-」(https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/cabinet-approval-rating/)
(2)毎日新聞「地震の行政対応「適切」は65%」(https://mainichi.jp/articles/20160419/k00/00m/040/129000c)2016年4月19日
(3)新田哲史「サミットにでたら総理の支持率は上がるの?」(https://blogos.com/article/177051/)2016年5月27日、BLOGOS


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?