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期日前投票が投票率を爆上げする!?

1.期日前投票制度とは?

 皆さんは期日前投票を知っていますか?
 選挙制度改革の一環として2003年に導入された期日前投票制度は、何らかの理由で投票日に投票に行くことができない有権者が、投票する機会を失わないことを目的として創設されました。総務省によれば、何らかの理由には冠婚葬祭や仕事だけでなく買い物やレジャーも含まれるため、実際には全ての有権者が期日前投票制度を利用することができます。

2.期日前投票の現状

 今でこそ多くの人が知っている期日前投票制度ですが、導入当初は国民になかなか浸透しませんでした。しかしインターネットの普及や自治体の努力が実を結び、期日前投票の利用者は年々増加しています。下のグラフ(図1)を見ると、とくに平成29年以降に大きく増加したことが分かります。近年投票率が減少傾向にある中で、期日前投票の割合が増加していることは、期日前投票制度が投票率の減少に歯止めをかけていると考えることもできます。

図1 有権者全体の中で当日投票の割合と期日前投票の割合

3.期日前投票のメリット・デメリット

 期日前投票と当日投票の違いは、投票する日が違うだけのように思えます。しかし、今回の統一地方選挙を見るだけでも制度上のデメリットが明らかになりました。

1.候補者の不祥事
 2023年4月に実施された神奈川県知事選挙の候補者が、告示後に女性問題で週刊誌に取り上げられました。スキャンダルは政治家本人の信頼性に関わる問題であり、投票の決め手に候補者の人柄を挙げる有権者も少なくありません。1度投じた票を修正することができないため、スキャンダルが報道される前に票を投じた有権者は不利益を被ることになります。

2.候補者の死亡
 今回の統一地方選挙においても選挙期間中に候補者が死亡した例が複数ありました。この場合死亡した候補者に投じられた票は無効票扱いになるため、民意が上手く反映されなくなります。

4.投票の棄権理由から見る期日前投票の今後の可能性

図2 投票棄権者の棄権理由

48syuishikicyosa-1.pdf (akaruisenkyo.or.jp)

 上記の図2は、公益財団法人明るい選挙推進委員会が公表した前々回の第48回衆院選に対する全国意識調査の結果です。仕事や用事を理由として棄権した有権者が、棄権者の中で30%近くいることが分かります。このデータをもとに2021年衆院選を考えます。投票率が56%(実際は55.93%)だった選挙で、もし仕事や用事を理由にした棄権者が全員期日前投票を利用すれば、理論上ではありますが全体の投票率は15%近く上昇することになります。
 低投票率で行われる選挙にはいわゆる組織票により、国民全体の意見が反映されなくなる可能性があります。多くの国民が選挙に行くことで幅広い意見が政治に反映されるため投票に行くことはメリットしかありません。

5.おわりに

 年々増加する期日前投票にはデメリットこそあるものの、「一票を投じる」という意味では当日投票と変わりません。 投票の方法も普段の選挙とほとんど変わらず手軽なため、各自治体が発信する情報に注目してみましょう。今後は身体が不自由な方や在外投票についても解説していく予定です。



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