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【政党解説2023】国民民主党ってどんな政党?

みなさんは2023年の代表選挙などで話題になった、国民民主党がどのような政党か知っていますか?本記事では国民民主党の基本情報や政策について解説していきます。


基本情報

国民民主党の基本情報を以下の表に整理しました。

国民民主党の基本情報(参考文献[1],[2]をもとに作成)


政党の変遷


旧民主党の組織の変化を表した図(参考文献[3]より引用)

国民民主党は2020年9月11日に、現在の立憲民主党に合流しなかった旧・国民民主党の議員たちによって結成されました。旧国民民主党は2016年3月に結党された民進党が前身であり、2017年9月に結党された希望の党(2021年10月1日解散)と、2017年10月に結党された旧立憲民主党に合流するために一部の議員が離党しました。その後、2018年5月には希望の党が合流し、「国民民主党」と党名が変更されました。その後、旧・自由党からの合流と一部議員の立憲民主党への合流のための移籍があり、2020年9月に現在の体制になりました。[3]
(詳しくは以下の記事もご覧ください)

また、2023年9月には国民民主党の代表選挙があり、与党との協調も視野に入れる玉木雄一郎氏と非自民非共産勢力を結集する意向を持つ前原誠司氏の2名が争い、玉木氏が代表に就任しました。[4]
(詳しくは以下の記事をご覧ください)


政党の主義主張

国民民主党の綱領は、「基本理念」、「私たちの立場」、「私たちのめざすもの」の三点から構成されています。
 初めに「基本理念」として、「自由」「共生」「未来への責任」の三つを掲げています。これらを重視して、穏健保守からリベラルまでの幅広い意見を反映して社会課題の解決を目指す、「改革中道政党(※1)」を目指していると述べています。
 また、「私たちの立場」によると、「生活者」「消費者」「働く者」「労働者」としての立場から、一人一人の多様な生き方・価値観が認められ、個人として尊重される社会を実現するべきであると考えているようです。
 そして、「私たちの目指すもの」では、「人への投資」、「少子高齢化や過疎化の克服」、「声の届きにくい人々への寄り添い」、「地域主権改革」、「政治と行財政の改革」、「立憲主義と国民主権・基本的人権を守った憲法の構想」、「専守防衛の堅持」、「開かれた国益と人間の安全保障、核兵器の廃絶」の八つを掲げています。[5]
 このことから、国民民主党は多様な国民の意見を反映させながら、経済活性化や安全保障の強化、より自由で平等、公正な政治制度の実現を目指していることがわかります。

(※1)中道政党:政策を立てる際、できるだけ現在の体制を維持する「保守」と、積極的に体制を変えていく「革新」の中間の考えを持つ政党。[6]


特徴的な政策

さて、国民民主党はどのような政策を掲げているのでしょうか。ここでは、いくつか特徴的な政策を紹介いたします。
国民民主党は、「政策5本柱」として、以下の5つを掲げています。

①「給料が上がる政策」を実現


 積極財政(※2)で物価上昇以上に賃金を上げることを重視しています。そのために、給料や人材教育などの「人への投資」を増やした企業を評価する会計制度や、全国一律最低賃金1150円以上を実現するために、正社員を雇用した中小企業への社会保険料の事業主負担を半減するといった、中小企業支援策の強化などを行うと述べています。[7]
(※2)経済を活発にしたり、社会保障を充実させたりするために、減税や給付金の支給などを積極的に行うこと。
[8]

②「積極財政」に転換


 物価が上がり景気が悪化する「スタグフレーション」を防ぐために、トリガー条項(※3)の凍結解除によるガソリン価格の値下げや、賃金上昇率が物価+ 2%に達するまでの間消費税を10%から5%に軽減する、「積極財政」を掲げています。また、物価高騰による家計の負担を軽減するために「インフレ手当」を10万円一律給付(一定以上の高所得者には確定申告の際に課税)を行うと述べています。[9]

(※3)ガソリンの小売価格が1リットルあたり160円を3カ月連続で上回った際に、ガソリン税の半額を一時的に免除すること。政府は2011年の東日本大震災以降、復興財源を確保するために停止している。
[10]

③「人づくり」こそ国づくり


「教育国債」の創設によって教育・科学技術予算を年間10兆円ほどに倍増し、教育・子育て支援を充実させることで日本の国際競争力向上を目指しています。
例えば3歳から高校までを義務教育とし、所得問わず一律無償化することを掲げています。
また社会人の学び直し支援やベーシック・インカム制度(※4)、平均寿命の上昇に合わせた高齢者の積極的な雇用の促進や、孤独・孤立を防ぐためのチャット相談体制の拡充なども政策として挙げられています。[11]

(※4)年齢・性別・所得などを問わず全国民に一定金額を支給する制度。[12]

④自分の国は「自分で守る」


災害や紛争などの様々な危機への対策を強化するとともに、食料や電気、医薬品などの生活に必要な物資を確保するための「総合的な安全保障政策」を実施するために、防衛費を増やすと述べています。
 例えばコメの需給調整を国が行い、食料自給率50%、有機農業面積30%を目標としています。そのために農業者に補助金を支給し、有機農法を行っている場合はインセンティブとして加算すると述べています。
 また、日米同盟を基軸として友好国と積極的に連携しながら、海上保安庁や自衛隊が領海警備や情報収集を行えるようにする法改正や沖縄基地問題の解決など、「自立的な安全保障体制」を目指しているそうです。[13]

⑤「正直な政治」をつらぬく


 公正で透明であり、より多様な国民の意見が反映される政治を目指しています。
 例えば、独立公文書監視官の設置やブロックチェーン(※5)技術による改ざん防止システムによる管理の徹底や積極的な情報公開、公文書改ざんに対する罰則強化を掲げています。
 また、より多様な国民の利益が考慮されるようにするために、被選挙権が与えられる年齢の引き下げや女性候補者の比率を35%以上に向上させると述べています。[14]

(※5)データを「ブロック」というかたまりに分けて、鎖(チェーン)が連なるように順番に保存する形式。直前のブロックをもとに計算された「ハッシュ値」をブロックに書き込んでデータを照合するので改ざんを検知しやすい。また、複数のシステムがデータを分散して保管するので、故障に影響されにくいという長所もある。[15]

このように、国民民主党は積極的に財政政策を行うことで経済を活性化させ、より多くの人が教育や雇用、政治において参画できる仕組みの実現を目指しています。外交に関しては、同盟国であるアメリカに依存せず、自立して防衛を強化すべきだと考えていることが分かります。


他の政党との関係性

国民民主党では他党、特に与党との関係性をめぐって、党内部でも意見が分かれてきました。前述したように、2023年9月の代表選挙で、玉木氏は「対決より解決」を掲げて、政策実現のために他の野党だけではなく与党との連携も視野に入れていると主張しました。一方で前原氏は立憲民主党と日本維新の会の橋渡し役を担い、野党間で衆議院議員選挙の候補者調整をするなど、他の野党と結集して自民党・公明党に対抗する一大勢力を作るべきであると述べました。[4]
しかし、2023年11月30日に前原氏を含む4名の議員が、新党「教育無償化を実現する会」を設立することを表明し、同年12月13日に党から除名処分を受けました。与党に積極的に対抗する姿勢を見せていた前原氏が党を離れたことで玉木氏の発言力が強くなり、今後は与野党問わず柔軟に連携していくとみられています。[16][17]


強い支持層


国民民主党の年齢別支持率(参考文献[18]より引用)
立憲民主党の年齢別支持率(参考文献[18]より引用)

TBSが2022年7月に行った調査によると、2021年の衆議院議員選挙の比例の投票先を「国民民主党」と答えた人の割合は20代が最も高い約10%、次いで18・19歳が約7~8%と、比較的若い年代の有権者に多く支持されていることが分かります。(上グラフ参照) 同じく旧民進党から派生した立憲民主党(下グラフ参照)が60代・70代の支持を多く集めていることとは対照的です。[18]
 その理由としては、学費負担の軽減や働き方改革などの生活に密着した課題解決に重点を置く政策や、ヤングケアラー(家族の世話を日常的に行う必要がある子ども)支援などの若い世代の有権者の声を受けた政策を推進していること、また玉木代表を中心とした党執行部の明るく、国民に寄り添った印象があると考えられています。[19]

まとめ

いかがでしたか?今回の記事では、国民民主党の主義主張や政策、強い支持層や他党との関係性について解説いたしました。国民民主党は「対決より解決」を掲げ、幅広い意見を取り入れながら社会課題の解決を目指しています。前原氏が離党して、自民党・公明党との関係はどう変わっていくのか、注目してみてはいかがでしょうか。


参考文献

[1]衆議院."会派名及び会派別所属議員数".衆議院https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_annai.nsf/html/statics/shiryo/kaiha_m.htm (参照2023-12-06)
[2]参議院"会派名及び会派別所属議員数".参議院https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/giin/211/giinsu.htm (参照2023-12-06)
[3]Yahoo!ニュースオリジナル THE PAGE."【図解】旧民主党を巡る変遷…分裂から立憲民主党・国民民主党発足まで". Yahoo! JAPAN ニュース https://news.yahoo.co.jp/articles/f3e068f4cb57e3495df4a0d4bf1bab2121bab38a (参照2023-12-06)
[4]鹿野耕平、阿部有起"連立入りは?野党連携は? 玉木氏勝利 国民民主党代表選".NHK政治マガジン ".https://www.nhk.or.jp/politics/articles/feature/101857.html (参照2023-12-06)
[5] 国民民主党."綱領".国民民主党 https://new-kokumin.jp/about/declaration1 (参照2023-12-13)
[6]Gakkenキッズネット. "中道政党".Gakkenキッズネット.https://kids.gakken.co.jp/jiten/dictionary04200337/ (参照2023-12-13)
[7]国民民主党."政策5本柱 ①「給料が上がる経済」を実現".国民民主党.https://new-kokumin.jp/policies/policy1 (参照2023-12-13)
[8]玉手義朗. "緊縮財政/積極財政".情報&知識オピニオンimidas https://imidas.jp/ichisenkin/g04_ichisenkin/?article_id=a-51-020-10-11-g204 (参照2023-12-13)
[9]]国民民主党."政策5本柱 ②「積極財政」に転換".国民民主党https://new-kokumin.jp/policies/policy2 (参照2023-12-13)
[10]NHK政治マガジン"ねほりはほりきいて!政治のことば トリガー条項".NHK政治マガジンhttps://www.nhk.or.jp/politics/kotoba/79783.html (参照2023-12-13)
[11]国民民主党."政策5本柱 ③「人づくり」こそ国づくり".国民民主党 https://new-kokumin.jp/policies/policy3 (参照2023-12-13)
[12] CANVAS "ベーシックインカムとは? 仕組みやメリット、2023年現在日本での導入可能性を解説 ".CANVAS https://mynavi-agent.jp/dainishinsotsu/canvas/2021/10/post-569.html (参照2023-12-13)
[13]国民民主党."政策5本柱④ 自分の国は「自分で守る」".国民民主党https://new-kokumin.jp/policies/policy4 (参照2023-12-13)
[14]国民民主党."政策5本柱⑤「正直な政治」をつらぬく".国民民主党https://new-kokumin.jp/policies/policy5 (参照2023-12-13)
[15]小泉健太郎."【図解】ブロックチェーンとは?仕組みと基本を理解する".カゴヤのサーバー研究室 https://www.kagoya.jp/howto/cloud/cloudtrend/blockchain/ 
(参照2023-12-13)
[16]北海道新聞."「トリガー条項」が決定打 国民と自公接近 前原氏が離党、新党結成表明". 北海道新聞 https://www.hokkaido-np.co.jp/article/947454/ (参照2023-12-06)
[17]産経新聞."国民民主が前原誠司氏らの除名決定 維新代表、新党と統一会派「視野に」" 産経新聞https://www.sankei.com/article/20231213-IXQZ3FHDDZOX5H5VS65ARHWKKY/  (参照2023-12-13)
[18]TBSテレビ. "「10代と20代は圧倒的に自民党?!」「れいわを一番支持するのは東京の40代?」~データから見えてくる選挙の意外なリアル、投票する前にちょっとのぞいてみませんか?~". TBS NEWS DIG https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/88854?page=2 (参照2023-12-06)
[19]室橋裕貴."なぜ国民民主党は若者に人気なのか?".Yahoo! JAPANニュースhttps://news.yahoo.co.jp/expert/articles/6ff70385d4928164afdcab94bc3bd96caa82549e (参照2023-12-06)


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