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困っている人のための配慮は 誰にとっても使いやすい

シャンプーのボトルにはギザギザが付いています。
これって、とても、すてきなことだと思うんです。
このギザギザは、もともとは、目の見えない方が、シャンプーとリンスを間違えないようにと考えて付けたそうです。
でも、目の見えない方に限らず、シャンプーやリンスのボトルを使う時に、目をつぶっている人、多いと思うんです。水や泡が目に入らないようにね。
だから、「目の見えない方が便利なように」という想いで始まった配慮は、そうではない多くの人にとっても便利な工夫になりました。

なお、ちょっと話がそれるのですが、この話でもう1つすてきなところは、業界で統一のルールにしたことです。メーカーによって、「うちはシャンプーにギザギザ」「うちはリンスにギザギザ」「うちは、シャンプーにマルの凸で、リンスにサンカクの凸」などとやり始めたら、むしろギザギザを付けることで混乱が大きくなってしまいます。どこか一社が他との違いをアピールしたり目立とうとすることなく、統一の基準を作れたって、すごいことなんですよね。

このような商品を「共用品」と言います。「共用品」は「障害のあるなし、年齢の高低、言語の違いなどに関わらず、共に使える製品やサービスのこと」とのことです。

上記の定義は、共用品普及のための活動をされている「共用品推進機構」のサイトから引用しました。
「共用品推進機構」はトップページに、こんな風に書いてあります。いい言葉だな。

共用品推進機構は、人と人、人とモノ、人と社会、人と世界を、「共用品」でつなぐ団体です。
誰もが使いやすい製品やサービスを推進し、より多くの人々へ普及させる活動を行っています。

共用品推進機構WEBサイトより

私は、大学生の頃、共用品推進機構の前身である「E&Cプロジェクト」というグループにご縁を頂き、共用品の考え方や、その成り立ちも、色々教えて頂きました。

配慮が必要な方のための「専門品」ではなくて、誰もが使いやすい「共用品」という考え方が好きだな、と思ったのです。
誰かにとっての配慮は、そうではない人にとっても、都合がいい。
それは、特別な助けが必要な人が「手伝って」って頼みやすい社会は、誰にとっても助けたり助けられたりしやすい社会である、ってこととつながると思うのです。

ずっとずっと後になって、施設の中で、特別な配慮の必要な子どもたちのために、どんな配慮をしたらいいのか、それを、どんなツールを使って相互に伝え合えばいいのか、ということを検討したことがありました。
スタッフのできること、例えば手話とか外国語とか、そういうものをバッチなどで示そうか。あるいは、お客様側の「こんな配慮をして欲しい」という要望を、スタッフが分かるように、何かを身に付けてもらおうか。

色々考えた結果として、現場のスタッフが出した結論は「助けてもらいたいことがあります」ということを示すカードを作ることでした。どんな配慮が必要なのか、何を手伝って欲しいのか、それは、1人1人違います。それを類型化する必要はない。むしろ、そのカードがあれば、スタッフの方から、「何をお手伝いすればいいですか?」って、コミュニケーションが取りやすくなる。そのことを大事にしました。

その提案を受けて、とても嬉しかったのです。特別なサポートのための技術を持っていることはもちろん素晴らしい。でも、自分はそういう特別な技術はないけれど、目の前の人のために、何をしたらいいか、コミュニケーションを取りながら考えようとする、その姿勢が、本当にすてきだと思いました。(そして、私たちが形にしたい施設の在り方とも、とても合致するものでした。)

困っている人に対する配慮は、そうではない多くの人にとっても使いやすい。それは、弱い立場の人に合わせようとする心の在りようが、誰にでも寄り添うことと近しいからじゃないかな、と思うのです。


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