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「メンクリ」が意味するもの

昔スマートフォンが世に出始めたときに、「2ちゃんねる」開設者のひろゆきは「1カ月後には使ってる人はほとんどいないと思いますよ。」と言いました。

私も完全に同感でした。
まず、「タッチパネル」と言われたときに、私は当時の銀行ATMで使われたいたような「抵抗膜方式」と呼ばれるタッチパネル(タッチした際の圧力を検知して操作するもの)を想像していたというのが一因です。これは、タッチした際の圧力を検知して反応するものなので、タッチ時に少し力が必要なうえに反応があまりよくありません。
また、わざわざ既存の携帯電話よりでかくて持ち運びづらいスマートフォンをつくるメリットも感じられませんでした。今から考えるととんでもない見込み違いでした。

かつて「アイホン」といえば、昭和20年代から存在したインターホンメーカーの社名およびその商品名でした。

私も子供のころからアイホンを見かけていたので、最初に「iPhone」という言葉を聞いた時には、インターホン関連の何かかと勘違いしました。今となっては「アイホン」と聞いて先にインターホンを思い浮かべる人は少数派となってしましました。

ここで、同じように意味がスライドした例として、表題の「メンクリ」の話です。
「メンクリ」という単語は、最近ではもっぱら「メンタルクリニック」の略称、いわゆる精神科の意味で使われているようです。昔は「メンクリ」という単語にこういう用法がなかったような気がするが…と思い、ちょっとだけ調べてみました。

こちらのブログランキングで見てみたら、どうやら「メンクリ」を「精神科」の意味で使用している最古の例は2019年のようです。(2012年の記事は「メンソールクリスタル」なので別の意味ですね。)もっと探せば古い記事が見つかるかもしれませんが、おおよそ2010年代から始まった用法と考えてよさそうです。

私が「メンクリ」という単語を目にしたときに、最初に思い浮かべたのがこの椅子のことでした。

自宅でもゲームセンターのように、固定したジョイスティックを用いてゲームができる!というものです。鈴木みその漫画でも紹介されていたような記憶があるのですが…。

この「メンクリ」ですが、語源としてはおそらく「面クリアー」の意味で用いられていた「メンクリ」だと想像されます。かつてのゲームの世界では「ステージ1」を日本語では「1面」と呼んでいて、これをクリアーすることを「1面クリアー」と称していたのです。つまりは、あるステージをクリアーすることを「メンクリ」と呼んでいたのです。

私も小学生のころ、この意味での「メンクリ」はかなり頻繁に用いていました。そもそも「stage」を「面」と翻訳したのは、かつては1ステージが1画面からなるようなゲーム、つまりは画面がスクロールしないようなゲームが主流であったからでしょう。(初代マリオブラザーズやドンキーコングなど)このようなゲームは、確かにステージが一画面として存在しており、「面」と訳するのにふさわしい存在でした。

その後、RPGやスクロール型アクションゲームが流行し、ステージ=面という概念が崩れてしまったために「面クリアー」という意味での「メンクリ」は死語となってしまいました。こういうもともと限定的な範囲でしか使用されなかった単語については、後世の方から見ると謎の言葉に見えるのでしょう。数百年後には、1980年代くらいの文献に記載されている「メンクリ型ゲーム」という単語に対して、「※語意不詳」とかいう註がついていたりするのかもしれません。

死語といえば、今年は「あけおめ」という言葉をあまり見なかったような気がします。「あけおめことよろ」も死語化しつつあるのかな…と思ったら、2009年の段階でも同じことを考えた人がいました。

「はい、死語でしょうね」とか断言されていますが、すくなくともそれから10年以上生き残っているので、こういう死語化判断は相当慎重になったほうがよさそうです。

というわけで、遅くなりましたがあけおめことよろ。
想定読者が存在せず、虚空に向かって言葉を発するような記事ばかりですが、気が向く限りは更新したいと思います。

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