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未来を見立てる補助線②

未来を見立てる補助線というテーマで、前回から引き続き、10年後や20年後の未来像の描き方について共有していきたい。前回は、特にテクノロジー/概念の進展仮説社会変化の仮説を掛け合わせて、想像される世界・事業機会を導出するための未来の部品の集め方について共有した。今回は、掛け合わせの仕方とそこから未来像をどう描きどうバックキャストをしていくのかを共有していきたいと思う。前回のnoteを読まれていない方は以下noteをご参照頂きたい。

キーとなるテクノロジー/社会変化を絞る

まず、テクノロジー/概念の進展仮説の中から、キーとなるものを抽出する(15~25個くらい)。同様に社会変化の仮説からもキーとなるものを抽出する(15~25個くらい)。抽出の仕方としては、複数領域(例:都市全体、交通、エネルギー等)に跨るものや、自身の領域に大きな影響を与えるものをピックアップしておく。ちなみに私がピックアップしたものが下図である。

キーとなるモノの抽出

テクノロジー/概念×社会変化の掛け合わせ

社会変化の仮説(課題)を解決するためにどうテクノロジーを活用して、どんな世界・事業が想像されるかのアイデアを出していく。一人でやるのではなく、複数の異なるバックグラウンドのある方々と一緒にアイデア出しをした方がいいと思う。で、その時のポイントは4つある。

①テクノロジーありきではなく、課題をどうテクノロジー/概念で解決できるかで発想すること。

②実現できるかどうかはおいておいて、出てきたアイデアを否定しないようにすること。あとでリサーチにより実現性は検証することがある程度できるし、そもそも20年後の未来像なんて誰にも分からないはず。

③事前に考えてきてもらうこと。いきなりパッとアイデアが出てくる人は殆どいないので、事前に宿題を出して、アイデアを持ち寄ることが望ましい。

④社会変化の塊毎にアイデアを出していくこと。いきなり全部を対象にすると強制発想がされにくいので。

ちなみにうちの会社のディレクター陣で1.5時間かけて、アイデア出しを行った時のアウトプットが下図である。

掛け合わせのアイデア出し

例えば、介護難民・労働力不足に対して、ロボット×自動運転を掛け合わせて、「ロボットによるアクティブ介護・医療」を発想した。患者が病院へ行くではなく、病院の方から患者を迎えにいくという世界を妄想している。

例えば、空き家率の増加に対して、ドローンやロボットを掛け合わせて、「空き家のロボット倉庫・ドローン倉庫化」を発想した。これからドローンやロボットが大量に増え、シェアリングをしていく世界が来た時にそれを保管しておく倉庫や駐車場のニーズが増えるのではないかと。

例えば、災害や大型地震の発生に対して、3Dプリンターによる街を掛け合わせて、「3Dプリンターによる復興」を発想した。災害後に復興させるのは大変であるが、3Dプリンターにより安価に、且つスピード感を持って復興が進むのではないかと。大型3Dプリンターはきっと高額なので、日本中からかき集めて、国全体で災害地域の復興をしていくようなことを妄想している。

ここで整理しているのは、あくまで初期的なアイデア・妄想なので、これらをベースに肉付けをしたり、肉削ぎをしていく必要がある。我々が発想したものなので、是非、会社や所属しているコミュニティのメンバーとやってみて、どんな世界になりそうなのかをアイデア出しをしてみてほしい。きっと盛り上がるはず。

2040年頃の未来像の描き方

次に、こうして出てきたアイデアを領域毎に整理をしていく。実際にクライアント先の経営幹部と実施した時には88個のアイデアが出てきて、それらを8領域でグルーピングをした。

アイデアの領域グルーピング

その上で、各領域の未来像を絵にしていく。できるだけ出てきたキーワードを反映しながら。未来像を絵にしてみると、「そうすると、こういうこともありうるかも」とか、「ここが足りていないかも」とか、「ちょっとイメージと違うかも」という追加の意見・アイデアが出てくるので、議論をしながら、各領域の未来像を固めていく。文字だけよりも絵にした方が議論は間違いなく進む(下図参照)。

2040年頃の未来像

例えば、都市の未来。東京一極集中から今後はどうなっていくのか、今言われているスーパーシティやコンパクトシティはどの程度進むのかそれ以外の都市の在り方はどうなのか等を絵にしていく。

例えば、交通領域の未来。リモートワークが定着化し、VRが高度化していく中で、人に移動はどうなるのか、モノの移動はどうなるのかを絵にしていく。

例えば、エネルギー領域の未来。大型の従来電源の供給から、脱炭素化の流れや蓄電技術の発展、EV車が増えていくとなると、どのようなエネルギーの供給の仕方になるのかを絵にしていく。

バックキャスティングの仕方

仮に2040年頃の絵姿が正しいとして、2030年頃の未来がどうなるのかをバックキャスティングしていく。ポイントは2040年頃の未来像のうち、何がどれくらい2030年頃に実現されているのか、或いは実現されていないのかを絵にしていく。2030年頃であれば、追加リサーチをすればある程度見えている世界でもあるので、各領域のロードマップと照らしながら(下図参照)。

追加リサーチ

その上で、重要なのは各企業や各事業にとっての意味合い(=事業機会)がどこにあるのかを抽出することである(下図参照)。もうすでに中計に盛り込まれているものもあれば、まだ手がつけられていないものもあるだろう。別の言い方をすれば、「こうなるだろう」という未来から「こうする」という未来へと転換をしていくことを意味する。ここがバックキャスティングの一番重要なところである。未来像を妄想した上で、「自分達はこんな未来を創っていく」という想いを入れて込んでいく。

バックキャスティング②

目指す姿への展開の仕方

各企業や各事業部にとっての意味合い(=事業機会)を抽出したら、目指す姿を描いていく。どのような価値を誰に提供して、どんな未来を創っていくのかというビジョンに落とし込んでいく。その未来を創る上でどこにリソースを配分をしていくのかどんな組織にしていく必要があるのかという基本戦略を描いていく(下図参照)。

ビジョン・基本戦略

総括

2回に亘って、未来を見立てる補助線というテーマで共有をしてきた。先を見据えることは簡単ではないけども、未来を先読みをしたり、未来を創造していくのは経営陣や管理者の大きな役割の一つだと私は思う。

我々は日々多くの時間を目の前にある仕事や数週間後の仕事に費やしているけども、もっと未来に時間的資源を振り向ければ、きっと未来を見立てる精度も高まっていくだろうと思うし、どれだけ未来のことを考えて、行動をしたかどうかが、変化の激しい時代だからこそ求められることではないかと思い、その一つの方法論を共有してきた。皆さんの未来創造活動に一助になることを期待して。

なお、今回の未来の補助線に関する詳細資料は今後、オンラインサロン「CLUB RIGHT HAND」内にて公開していく予定ですので、ご興味がある方は覗いてみてください。


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