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【文字迷宮】貫井徳郎「神のふたつの貌」(読書感想文)


『神のふたつの貌』貫井徳郎

少年は蛙の四肢を石で叩き潰した。死にゆく蛙は、痛みを感じているのか? きっと死の恐怖など感じてはいないだろう。
痛みのないものに、神の救いを見ることは出来るのか?

牧師の息子、そしてそのまた息子が主人公のお話です。
父の教えに従い、神の存在を疑ってはいない。神はいる。しかし姿は見えず、声は聞こえない。
神の救いを信じえない自分の心が悪なのか。

神の救いを求める心、自分自身の信念・正義が周囲の人へ手を差し伸べたときー

時間軸に仕掛けがあるので、終盤になるほど
「お前が、あの・・・」
という発見があって面白いです。

神の救いに絡んで、親子の問題が大きく絡んでいるんですよね。
父と息子。母と娘。息子と母。
血の繋がりがあろうとも、自分でない者の心を完全に理解することは出来ない。
血の繋がりがあるからこそ、「憎」だけでは語れない。

本書での神と人との関係もそうですね。
二人の主人公はクリスチャンで神への愛を持っている。
けれど神は大いなる沈黙を保ち、人への愛が語られることはない。
神への敬愛と疑念。
その二つは、片方が大きくなれば比例してもう片方も大きくなるのかもしれません。

その先に在るのは、神が見せるふたつの貌。

痛切な想いの果てに「神が、見える」シーンは圧巻でした。

「神のふたつの貌」(相関図っぽいもの)


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