無花果
無花果。
どこのカフェもケーキ屋さんも
無花果、無花果。
これが 旬 ってやつか。
半年前までケーキ屋でバイトをしていて
加工された 無花果を
美味しいと感じた、1年。
今年こそは 生の無花果を
と。
偶然 実家にあったので
食べてみた。
加工され "甘いもの" と
想っていたせいか
甘くなかった。
それよりも
実家の裏の匂いがした。
そう。
昔 実家の裏には無花果の木があった。
祖母と母は
この時期になるとよく食べていた。
私は 少し気持ち悪いと横目に。
裏には鬱蒼と茂る無花果の木。
冷蔵庫には、無花果の実。
幼き日の風景。
裏のあの匂いは
無花果だったのだと
やっと知る。
無花果の木に
蛇が巻きついていたことがあって
それ以来そこを通るのが嫌になり
表から遠回りをしていた。
勝手に枯れたものと思っていたけど
祖母に聞くと
塀を破壊するほど育ってしまったことと
蛇がよく巻きついていたこと
が 原因で切ってしまったのだと。
今になって そんなことを知る。
これから時期になったら
実家の裏を思い出すのだろうと
無花果。
おわり
最後まで読んでいただきありがとうございました。私の心に寄り添ってくださりありがとうございます。生きます。