王様戦隊キングオージャーを振り返る

第一話でものすごい映像を見せつけられ、大いなる衝撃から始まった異色作。まあここ数年はずっと特殊のような気もするので何をもって異色とするかは難しいところではあるのだが、とにかく「何かすごいものがきた!」というわくわくと共にこの一年は幕を開けた。

そんなキングオージャーも今朝、ついに最終回を迎えた。
せっかくなので昨年に続き、我が子の思い出を添えつつ振り返ってみようと思う。
先に申し上げると、私はアンチでもなければ手放しで熱烈に褒めるほどのファンでもない、好きなのだが言いたいことも山ほどある、という微妙な立ち位置のファンである。それも含めて正直な感想を述べる。


開始から物凄い勢いのあったキングオージャー。
魅力的な映像、キャラクター、芝居がかったセリフ回しも世界観にあっていて、元々ファンタジックな作品が好きな私は一気に引き込まれた。
これはすごい!と、5話くらいで友人たちに「キングオージャー見てくれ!」と宣伝しまくってしまったくらい熱烈にハマっていた。見てくれた友人たち、ありがとう。

何といっても圧倒的な映像美は特筆すべきところだろう。
第一話の放送後に予算を心配する声がトレンドに上がってしまうほどCGで作り込まれたファンタジーな異世界。「LEDウォール」を活用したバーチャルプロダクションの撮影技術は、間違いなく最先端の挑戦だった。時にロケ映像も交えつつ、一年を通して決して失速することのない見応え抜群の画を見られて本当に楽しかった。今後の作品作りにもどんどん活かしていってほしいと期待するところである。

各国の王たちのデザイン、衣装、個性もとてもよかった。我が子は絢爛の女王、ヒメノ・ランに一目惚れ。ドレスを翻して戦う姿が格好いい、と大喜びだった。ハロウィンイベントで仮装をしたいとねだられて、頑張って衣装を作ったりもした。

そんなこんなで、今作も母娘揃って楽しく見ていたのだが、話が進むにつれ、時折、「あれ??」と思う部分が出てきた。前半は見過ごせる程度の気持ちだったが、後半に入ってからは特にもやもやが加速した。

そう、ストーリーについては、本当に何と言ったらいいか悩むのである。
ものすごくいい回と、酷い回の落差が激しい。というか、一話の中にそれらが混在する回もあって、評価が本当に難しいのだ。
繊細かつ大胆な大きな話をやろうとしているのに(そしてその本筋や出してくる各シーンはとても魅力的なのに)、細かい部分があまりに大味だったり、繋ぎや積み重ねのロジックが上手くいってなかったり、話の都合でキャラクターがぶれたりするのだ。ある意味こういうタイプの作品はこれまでにあまりなかった気がする。

特に、ギャグ路線の部分のセンスはあまりよくなかったと思う。ここ数年、そちらのバランス感覚の良い作品が続いていたので余計に目立ってしまったのかもしれないが、そこまでのキャラクター性をぶち壊したり、「ただやりたかっただけだろ」が露骨過ぎて必要性がなかったり、そういうおふざけは正直縦軸の良さをぶちこわしていた。

また、縦軸を回した過ぎて「一話ごとの完結感」がかなり軽視されていたのも結構気になっている。我が子は一時期これで見る気をやや失っていた。子どもは大きな縦軸だけでは乗り切れない部分がある。その回の敵を倒してすっきり終わる。大きな問題は残っていても、一旦の「めでたしめでたし」に着地する。後味の余韻を残す。
実はこれ、子どもだけではなく大人の視聴者にとっても結構大事なんじゃないかな、と個人的には思うところである。

私は当初、トンボオージャー、ヤンマ・ガストを推しそうだなと思っていた。ヤンキースタイルの見た目に反して肩書は「叡智の王」。
腕っぷしは強くないが、パソコン一つでスラムから成り上がり国を富ませた、国民からも慕われる総長というキャラクターだ。
知的なキャラクターは好きだ。
色気とは知性に宿るものだからね。

だが、ヤンキー文脈は驚くほど「一国の王」という存在と対立したし、国をボロボロにされた次の回でギャグ要員してるのなんかもう腹が立つレベルだった。「叡智の王」も最終的にはただのなんでも開発してくれる便利屋扱いである。もっとこう、知性らしいものを見たかった。正直言うとちょっとがっかりしてしまったところもある。楽しみにしていたヤンマ総長がメインの回は(主に後半)尽く私の感性にはヒットしなかったのであった。
(でも最終回のギラとシュゴットの復元について話すシーンなんかは、とても彼らしくてよかったと思う)

他にも、公式ではやたら推そうとしてくるアイドル回とかも正直……だし、作中の小道具としてのもっふんはかなり上手く使われていると思うがもっふん単体をやたら番組外で推されてもそんなに…ってなるし…とか。第二部でダグデド勢の戦闘員がいないからずっとバグナラクの再生怪人と戦わされているのなんとかならんのかな…とか。
他にも挙げ始めるときりがないのだが、端的に言うと、ノイズが多いのである。ノイズが。「やりたいこと」は魅力的なのに、その為に犠牲になっている枝葉が目立ってしまうのだ。

いい回もたくさんある。熱い展開も好きな場面もたくさんある。
特に中心となったハスティー兄弟の物語はとても良かったと思う。ラクレス王が実は良い人なのでは?というのは初期から言われていたが、彼が秘めてきた思いを結実させる41話終盤からの展開は素直に熱かった。

また、女性でも男性でも、前線に立って戦う人、後方支援に徹底する人、どちらも自然にいるのは良かった。逃げる人も戦えない人も否定しない。待っている人がいるだけで、力になることもある。
キングオージャーには「強い女性」もたくさん出てくるのだが、そのバリエーションの豊かさも間違いなく素晴らしかった。強さにも色んな種類がある。誰もみな生き生きしたキャラクターたちであった。

なお、「子どもに人気がない」なんて声も聞くが、我が子とその友達の間ではおおむね好評である。個人的には体感としてそこまで人気がない、とまでは感じていない。(玩具売上等の話はひとまず置いておいて)
我が子の友人はキングオージャーがきっかけで虫に興味を持ったらしいし(そんなことある???)、ハロウィンには一緒にキングオージャーの仮装をしたりもした。我が子はなんやかんやでもっふんのうたもお気に入りである。


そして、これまでのキャラクターが集結する最終章は、まあ、何をやりたいかわかりやす過ぎるところはあるものの、集大成という感じで盛り上がったと思う。ハーカバーカ組の一時復活など、思わずテレビの前で子どもと一緒に「わー!」声を上げてしまった。とても嬉しいサプライズであった。
最終回の勝利ロジックは正直つっこみたいところだらけでいまいち乗り切れない部分もあったが、それでも「楽しい最終回だった」と思いながら終わることができた。戦いが終わりラクレス様が泣いている後ろ姿を見た時は、「よかったね…」としみじみしてしまった。

隣で我が子は「8世、かっこよかった…」と呟いていた。
なんと、いつの間にかデズナラク8世が最推しになっていた我が子であった。小1女子にしては渋い。しかしわかる、わかるぞ娘よ…。


何はともあれ、私はスーパー戦隊が好きだ。
毎年新たな挑戦をして、そこから更に改善をして、次に繋げていく今の姿勢が好きだ。だから、キングオージャーのしてきたたくさんの挑戦も、大いに面白かったと思う。文句もあれこれ呟いてきたが、意欲作であることは間違いなかった。

楽しい一年をありがとう、キングオージャー。
FLTもVシネも、楽しみにしています。


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