「念ずれば叶う」とよく言われる。では、誰かが念じた夢を、語れるくらいずっと聞いていたらそれは、自分の身の回りにも起こってくるものなのだろうか。

「有明のタワマンで、家族を最優先にしながら暮らしたい」と語る男の子と3年ほど一緒にいた。会えばたいてい欲しい部屋の間取り図を見せてきたし、入口まで一緒に行ったこともあった。もう何年も前のことだけれど、「築地市場が有明の方に移転するらしくてさ、魚のにおいとか大丈夫かな」なんて当時から話をしていて、住む場所に特別なこだわりのなかった私は、話半分に「へぇぇ」とか「いいね」とか上の空で答えていたような気がする。

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「今度うちのマンションに遊びに来てください！屋上にレストランがあって、そこの景色が素敵なんです」と誘われて行ったら、数年前に入口まで来ていたマンションだった。普段なら開けられないドアが自動で開く。入口には共有スペースのソファが点在。エレベーターで33階まで行くと、プールやジム、大浴場と並んで、東京タワーもスカイツリーも見れるレストランが広がっていた。誘ってくれた彼は、新築当初からここに住んでいるのだという。あの人が狙っていた間取りの場所に住み、3人の子どもと奥さんと、家族仲良く暮らしている。あの人みたいにすごくポジティブで、「毎日が楽しくてしょうがない」とさらりと言ってしまうような人だ。

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あの人が言い続けていた夢を実現するとどうなるのか、この目で確かめなさいと言わんばかりにほとんどのことが一致していた。言い続けていた夢は、自分が叶えられなかったにしろ客観的に見れるところにいる。あの人の念が私にうつり、あこがれていたタワマンに送り出されてきたのかもしれないな、と思う。なんだか夢を見ているような、あの人の未来を覗きに来てしまったような、不思議な気持ちになった。

他人の念力も強ければうつるものなのかもしれない。