幽閉された側室、「杏仁」食べて自害!? #中国ドラマに見る中医・薬膳

中国ドラマ、特に宮廷もののドラマを見ていると中医学・薬膳の話が本当によく出てきます。
「宮廷の諍い女」というドロドロの清朝宮廷ドラマをご存じでしょうか?
全76話という気の遠くなるような長編ドラマですが、中医学・薬膳ネタの宝庫なので、気になるネタをご紹介していきたいと思います。
「宮廷の諍い女」はAmazon Prime Videoでも見ることができます。

実は薬膳は中医学にもとづいており、中国王朝の皇帝の不老長寿と子孫繁栄を目的に発展してきたという歴史があります。

そのため薬膳は
子孫繁栄:妊活
不老長寿:アンチエイジング
が得意分野なのです。
また、側室が皇帝の寵愛を得るための美容としても中医学や薬膳が使われてきました。

そんなすばらしい中医学や薬膳ですが、闇の顔もあります。
例えば、側室としては自分が皇帝の子を産めば安泰、逆に他の側室が子を産めば自分の地位が危うくなるため、本来なら体によい効果をもたらす生薬を使ってライバルを流産させたり、妊娠できない体にしたりすることもあります。さらには命を奪う道具として生薬が使われることも
ドロドロの宮廷では、中医学や薬膳がプラスとしてもマイナスとしても使われていたのです。

さて、今回のテーマは「杏仁」です。

「宮廷の諍い女」のあるシーン

皇帝の側室として後宮に入った主人公 甄嬛と安陵容。 かつては甄嬛を姉のように慕っていた安陵容だが、数々の悪事が発覚し宮殿に幽閉されてしまう。
安陵容は、宮を訪れた甄嬛に「杏仁を食べたい」と頼み、これまでの経緯を話した後、杏仁の大量摂取で自害する
(「宮廷の諍い女」原題:甄嬛伝 第67話より)

日本人にとっては「???」です。
杏仁って杏仁豆腐の杏仁よね?
なんで杏仁食べて死んじゃうわけ??

実は、杏仁豆腐にもよく使われる杏仁には杏仁には青酸系の毒が含まれています。

杏仁には北杏仁(苦杏仁)と南杏(甜杏仁)の2種類があり、見た目はあまり変わりませんが、北杏仁は南杏よりも青酸系の毒が多く含まれています。南杏にはほどんと含まれていないそうです。
北杏仁は毒を含みますが薬効が高く、生薬としてよく使われます。
南杏は一般的に杏仁豆腐などのお菓子として使われています。

安陵容が大量に杏仁を食べて自害したというのは、この毒のある北杏仁を食べたからなんですね。

中国のサイトを見ると
・北杏仁10個で死に至る
・北杏仁20〜30個で中毒になり、死に至ることも
・生の苦杏仁40〜60で中毒になり、50~100個で致死量
・生の苦杏仁6〜10個で中毒になり、50個で致死量
など、致死量についての記載はバラバラでした。

いずれにせよ、北杏仁を大量に食べると危険なことには間違いありません。
中薬学の本にも「小毒があるため多量に服用してはならない。子供には慎重に使用すべき」という内容の使用上の注意が書かれています。薬として使う場合の用量は3〜10gとされています。

ちょっと怖くなってきましたね。ですが、ご安心を。
本場の杏仁豆腐は北杏仁と南杏を合わせて使うそうですが、日本でお菓子の材料として売られているものは南杏だけで、北杏仁を食材として使うことは禁止されています。そのため、日本でお菓子によく使われる杏仁は、毒の含有量の多い北杏仁ではありません。

毒があるとはいえ、北杏仁は生薬ですから、正しい用法で使えばもちろんお薬になります。
・肺に作用し、咳や喘息を止める。
・大腸を潤し、便通をよくする。

などの効能があります。
秋の乾燥シーズンに杏仁を食べると喉や肌を潤してくれのでおすすめなんです。

お菓子に使われる南杏も効能は似ているので、咳や便通でお悩みの方は、南杏で杏仁豆腐などで試してみてはいかがでしょう?ただの中華デザートと思っていた杏仁にこんな効能があると思うとまた違った楽しみ方ができますね。


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