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流山市の教育課題、小1プロブレムに対峙していくために ~その②:幼児教育・保育施設の現状と現場の声、先進的な取り組み、八王子市のご紹介~

ここでお伝えしたいこと

 小1プロブレムは、幼稚園、保育園、その他、それぞれ異なる環境で育った子どもたちが小学一年生で一堂に集まることから、集団としての教育が成立しない問題です。流山市は15年間で90園を超える私立保育園を整備しました。民間の保育理念や環境の多様性から、小学校1年生の時には「学校に行きたくない」と感じる子どもが多くなりがちです。誤解を恐れずに言うならば、この環境は人為的に生じさせているとも言えます。
 その②では、流山市の幼児教育・保育施設の現状と現場の意見から論点を整理します。また、流山市と類似の特性を持ちながら、先進的な取り組みを行っている八王子市の取り組みを紹介します


その①では、小1プロプロブレムの問題と方策の概要を述べました。

〇流山市の幼児教育・保育施設の現状:定員数も施設ごとに多様

 流山市は待機児童対策のために15年で90園以上の保育園を民間主導で整備してきました。以下は、令和6年4月時点での流山市の幼児教育・保育施設の定員状況を示します。データは「こちら」。
全部で約12,000定員分(11,971名定員分)の施設があります。流山市の幼児教育・保育の構成比を以下に示します。

幼児教育・保育の定員割合

定員数は多様です。施設の規模を帯の長さで表したものは以下。私立認可保育所は42名から218名までの定員で幅があります。公立保育園は一律120名定員です。

幼児教育・保育の規模と定員数

規模のばらつきを定量的に見るため、ヒストグラムを作成しました。小規模保育園は定員19名以下ですが、その他の施設についても規模は多様です。特に私立幼稚園は定員数が多い傾向があり、400名定員の園も存在します。

〇幼保小の連携に向けた論点

 現在、国は「幼保小の協働による架け橋期の教育の充実」を掲げています「こちら」が、定員数も運営主体も様々なため、その実現は簡単ではありません。以下に、ヒアリングした私立幼稚園や保育園の現場の声からの論点を挙げます(※すべての園の声を反映しているわけではありません。今後も調査を続け、より良い提案へとブラッシュアップしていくために尽力します)。

Q.1 子どもが(ひとクラス35名規模の)小1環境に慣れる環境を作るには?

子どもが元気に小学校に通えるよう、1クラス35名の環境に慣れることが必要です。しかし40~100名程度の規模の保育園も多く、5歳児だけで35名規模の環境を作るには、物理的に無理があります。保育園によっては多年齢保育を行っている園もありますが、小学校のクラスは同じ年齢のお子さんで構成されます。
この問題点については、多くのご意見をいただいています。

Q. 2 現場と情報共有しながら少しずつ進めていった方がうまくいくのでは?(強制されても困る)

幼稚園毎に環境が異なることから、方策については現場の意見も踏まえて収斂する形で進める方が良いという意見を伺いました。理由は以下。
・私立幼稚園は千葉県の管轄であることから、預かっている子どもは流山市だけではなく、近隣市(柏、松戸)の子どももいる。
・大規模園で実践できることと、小規模園で実践できることは異なる。
・独自に研究会を持ち実践しており、この研究会は自治体を超えてネットワークがある。
・建学の精神に賛同して入園してもらっており、その信頼関係の中で教育を行いたいと考えている
(※保育園は応諾義務があるため、幼稚園とは仕組みがことなりますが、保育理念についてこだわりがある園もありました(例)自然保育 or 知育重視)
・インクルーシブな環境を実現したいが、配慮が必要な子どもへの加配補助が少ないため、実施が困難。

Q3. 小学校1~2年生のカリキュラムを充実させる方が現実的では?

 幼稚園・保育園では、頭も心も体も動かしながら、遊びを通して子どもたちが主体的に学ぶ環境を提供しており、各園が試行錯誤しながら子どもの力を伸ばしています。一方で、小学校では個よりも集団教育の色が強く、不連続が生じることがあります。そのため、架け橋期を小学校2年生までに延ばし、連続性を考える方が現実的ではないかとの意見があります。また、幼稚園に通う子どもたちは、流山市に住む子どもたちだけではなく、小学校区域を超えることも多いという点も指摘されています。
 この点には一理あります。現場の先生方の意見を聞きながら、先進的な事例を研究していきます。

Q4.配慮が必要な子ども達の保護者が困っている。ワンストップ窓口が足りないのでは?

 配慮が必要な子どもたちの保護者が困っていることから、支援の手が足りていないのではないかと指摘されました。他の自治体では公的な窓口が充実しており、園にも挨拶に来るため、園も市の方向性と歩調を合わせやすいとのことです。また、コロナの影響もあってか、配慮が必要な子どもを持つ親の孤立が感じられるとのこと。困っている家庭にこそ届くような窓口事業を公的に充実させるべきではないかという意見を伺いました。
 住んでいる場所に近い園に通えるよう、行政が丁寧に間に入ってほしいといわれました。

Q5.配慮が必要な加配について税金拠出を明確にするには、検査が必要なのでは?

 幼稚園に対しても配慮が必要なお子さんへの加配補助があった方がよい。しかし税金拠出の根拠も必要であろう。幼稚園も保育園のように検査を行う仕組みは必要だと思う。
ごもっともです。

〇先進事例:八王子市の事例

 流山市のように多様な幼稚園・保育園を持つ自治体で、幼小接続を見通した教育課程の編成・実施の実践を行っている自治体があります。議会でも有志を募り、5月中に視察に行く予定です。

(1)乳幼児すくすくてくてくガイドラインについて「こちら

 このガイドラインは、保育者が日々提供する教育・保育の中で、子どもとの関わりや成長の見守りを、エピソード事例を通して理解を深めるために作成されています。

 幼児教育指導要領にはない、3歳未満の子どもの育ちに関しては、愛着形成の重要性がしっかりと定義されています。さらに、幼児教育・保育施設として共有すべき事項、保護者との連携や支援、子どもの権利擁護についても定義が明記されています。また、育てたい姿を様々な関係者がイメージしやすい具体的なエピソードが記されています。
 小学校との連携にむけては、学校ごとにスタートカリキュラムを作成し、子どもが学校生活に円滑に移行できるように支援すると記されています。
このスタートカリキュラムの運用実践については非常に興味があります。

(2)保・幼・小連携の日「こちら

 なんと、保育園・幼稚園・小学校のみならず、学童保育所・児童館・子ども家庭支援センターも交えて、子どもの発達を見通した保育観・指導観について教職員が共通理解を深め、支援・指導の充実を図ること、および教職員が相互に園児・児童の情報を共有することで、子どもの円滑な就学を支援することを目的に、特定の日に以下を実践するようです。
・教職員による相互参観
・教職員による相互職場体験
・園児・児童の交流
・保護者・地域との交流
やはりガイドラインを作って終わりではなく、顔の見える連携や実践の共有、啓発が必要なんですよね学童や児童館、子ども家庭支援センターも協議会に入っていることが素晴らしいです。

(3)就学支援シートの活用「こちら

保育園・幼稚園・認定こども園等の中での援助の様子や配慮していることを、小学校へ伝えていくシートを運用しています。流山市も実践していると伺っているので、どのような違いがあるのか調査してきます。

(4)八王子市子ども・若者育成支援計画で点検「こちら p.8-9」

 実施進捗がしっかり点検されており、素晴らしいです。流山市議会の議事録をキーワード検索しても、「こちら」を見ていただくと分かりますが、令和5年より前では、ほとんどヒットしないことから、実践の点検はされてこなかった実態があります。
幼保小の連携の日の実施率も3年目にして62.2%まで増えています。多様な保育・幼児教育形態が存在するため、経年での啓発実践が必要だと思います。これは流山市においても大いに参考になるでしょう。


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