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迷い続けたアクセサリーデザイナーが「流行りに乗れない自分」を受け止め、ブランドと共に歩きはじめるまで

数多くのハンドメイドアクセサリーブランドが世に生まれたこの10年。前職がアクセサリーパーツのショップスタッフでもあり、自分自身もブランドをもつ私は、仕事柄、前のめりでその移り変わりを見ていました。

そんな中、Instagramで見つけた1つのブランドに心を奪われます。それが《lili by SERI》。私にとって、ど真ん中の可愛さをもっていました。

その後、大阪でのお仕事でご一緒することがあり、私はデザイナー本人にも惚れるのですが、この記事では、lili by SERIデザイナー田中芹さん(以後、せりちゃん)に、これまでとこれからを余すことなく伺いました。

また、今月11月24日〜26日に私、Mihoが開催するイベントに出店いただきます。



● 《lili by SERI》ができるまで

lili by SERIのスタートはいつになりますか?

2020年6月から、このブランド一本で本格的始動しました。実際には、細々と趣味の延長のような感じでやっていたころも含めると、7、8年ぐらいはやっています。

─ では、今に辿り着くまでの経緯やきっかけを教えてください。

昔から作ることは好きで、”自分で売りたい” ”ブランドをやってみたい”という気持ちはずっとありました。

地元・大阪の服飾の短大を卒業しフリーターをする中で手芸屋さんで働くことになり、そこではいまの製作にも繋がる“作ること“を初めて本格的に学びました。ただ、そのころは、別に趣味ほどでもなく、販売もせず、アクセサリーをたまに作るぐらいでした。

古着はずっと好きで、服もずっと好きだったので、手芸屋さんで働いてる途中に「古着屋さんで働きたい!」と思い立ち、たまたま募集していた、南堀江の古着屋さん《KEY》で働き始めることになりました。まだ21、22歳のころです。

そこでは、結局3か月ぐらいで辞めてしまい、自分が悪いものの、服はめっちゃ好きなのに続けれない自分に、1回目の挫折的なものを味わいました。

─「失恋をきっかけに…」

その後はOLをしつつ、アクセサリーは、まだ販売をするわけでもなく細々と作っていました。

そんなとき、東京に住む、遠距離で付き合っていた人にフラれました。その恋愛では、自分を抑え込んでいたことが多かったので”もうどうでもいい!好きなことやろう!”という気持ちに。失恋をきっかけに一気に、 蓋が開いたみたいな感覚でした。

そして、そのタイミングで、今まで作りためていたアクセサリーを改めて見たときに「かわいい〜!!!」と自分で思い、もっと作り込んでみようと思い立ちました。撮影してSNSに公開したら結構反応がよかったんです。

何度か買い物に行っていた古着屋の店主には、lili by SERI初のPOP UP開催のお誘いもいただき、ブランドしても大きなきっかけであり、はじまりになりました。

その後、繋がりからこの南船場の古着屋さん《floor》で店長として働くものの、ここでは、店長という重みやプレッシャーに耐えきれず、1年半ぐらいで辞めてしまいました。やっぱり、こんなに服も古着好きなのに上手くいかないのなら、古着は買う方が向いてるんだなと痛感しました。

人気シリーズ"FUCHIDORI"製作の様子

それからは、またOLをしつつ、アクセサリー作りを再開しWEBで販売をしていたのですが、今度は、これまで古着屋さんで繋がったひとや顧客さんが購入してくれたりと、少しずつ口コミで広がっていきました。

そのタイミングで、20代前半の頃から古着屋繋がりで顔見知りでもあり、ずっと活動を気にかけてくださっていたMOMA PATCHWORK(モマパッチワーク)のMOMAさんから、阪急うめだ本店10階『うめだスーク』でのイベント出店にお声がけいただいて。それをキッカケにlili by SERIとしてのポップアップや委託の仕事が一気に増えました。

ただ、OLをしながらだと、lili by SERIの製作がどうしても追いつかない。作家活動だけで食べていきたいという気持ちも徐々に芽生え始めていたので、これはタイミングかもと思い、2020年にOLを辞めました。

のらりくらりと辿ってきたこれまでの道が、そのとき全部繋がって、”どれも挫折って思っていたけど、道筋やったんやな”と、ようやく思えるようになりました。

これまでの選択や挫折も間違ってなかった、古着屋さんは向いてなかったけど、今はお仕事で古着屋さんと関わっているのでほんまに良かったなって思います。

● 変化を起こし、辿り着いた”自分らしさ”

─ Instagramを拝見していて、最近変化を起こしていっているように感じるのですが、きっかけはありましたか?

独立して2年目にかけて、ありがいことに沢山お仕事の依頼をいただいたんですが、lili by SERIのこれからを考えると、自分の中ではいい状況とは言えず、そこから今年、2023年の6月や7月ごろまで先が見えない状況が続きました。3年続けていたので次の景色を見にいったり、変化を起こすタイミングだったとは思うのですが…

lili by SERI 田中芹さん

そんなときに、ずっと存在は知っていた東京・台東区のクリエイター支援施設《台東デザイナーズビレッジ》が単発で募集する《クリエイター企業塾》に通うことにしました。

※クリエイター企業塾…クリエイターたちに向けて、ブランド育成やビジネスの基本を身に着けてもらうための、数回にわたるワークショップ型授業

参考HP:http://designers-village.com/dezaville/juku14/

​​そこでは、考え方や根本的な自分のマインドについても色々と教えてもらいました。仕事はもらうものだと思っていたけど、そうではないとやっと気づくことができました。ただ、じっとしている釣りではなくて、自分で耕して作っていく畑と同じだと

また、元々私自身が「ねじが外れて 溢れ出てるように、楽しく仕事をするタイプだったんだと思う」と、そこでは言われました。

実際それまでは、自分らしく楽しむと周りに迷惑をかけたり嫌がられるんじゃないか、関西弁で喋らない方がいいんじゃないか、と、思っていたんですけど(笑)「それがせりちゃんだし、そっちの方がむしろいい、そのまま自分の好きなようにやった方がいい」と。

おかげで、”自分らしく自分のままでいることで、それを楽しんでくれるひとや、ついてきてくれるお客さんがいればいい”と思えるようになって気持ちがすごく楽になりましたね。

いまは、そこでの授業を終えて実践をしている段階ですが、徐々にいい変化が見えてきている状況です。クリエイター企業塾に行ったことはブランドが変われた分岐点になりました。

─ これまでは、lili by SERIというブランドとせりちゃん自身の人柄が、私はあまり結びつかないように感じていて。でも、最近は、それが合致する印象をSNSを通してもっていました。

まさにその通りだったと思います。 格好つけたい、お洒落でいたい、と、猫を被っていたんだと思います。

どこかで、才能があるんじゃないかってずっと思ってたけど、やっぱり自分は才能があるわけでもない。だから、努力。がんばって可愛いものも作りつつ、自分らしくお客さんも会えたらいいなと思ってます。

お花のイヤカフ

─ はじめたころといまとでは、作品作りにおいて変化はありますか?

多分変わってないです。大体は年齢と共に似合うものや好きなものも変わると思ってはいるんですけど……私もブランドを始めた頃は20代、でも今はもう2歳。”32でクマか…”とか思いつつ(※lili by SERIにはクマのビーズを使ったアクセサリーがある)、それがやっぱり好きで可愛いから使うんですよね。

形としても、もっとシンプルなシュッとしたものも手掛けてみたいなと思うけど(華奢なフープを耳にあてながら)、手を動かせば、今ミホちゃんが付けてくれているミニフープのような作り込まれたものが完成する。

だから、テイストは変わらず、好きなものは根底ではずっと一緒なんだと思います。

左がミニフープシリーズ 右がクマちゃんの耳飾り※筆者私物

あと、コンセプトが変わりました!自分の過去を掘り下げて考えたときに、自分は「流行りに乗れない」「敏感じゃない」でも、「好きなものは好き」というのがしっかり決まっている。lili by SERIのお客さま自身も、流行というよりは、好きなものをちゃんと自分で見つけられる人が多いから、それがコンセプトだと最近気づきました。

流行や需要に合ったものは絶対必要だと思っています。だけど、自分はできな、したくない、という気持ちと、そこに対するちょっとアンチテープな気持ちもありつつ……

最初のころからコンセプトもブランドも基本はあるものの、ずっと迷って漠然としていたものが、いまはしっかり《lili by SERI》と《田中芹》が一緒になって、今やっと歩き始めている感じがします。

● ”流行りに乗れない”から生まれる可愛さの表現

─ lili by SERIのビジュアル作りにいつもすごくこだわっているなと感じていて、モデルさんも性別問わずいつもビジュアルが可愛い。その点について聞かせてください。

性別問わずモデルさんを使うことによって、”流行りに乗れないlili by SERIが思う可愛さ”が表現できていると思います。

普通に可愛いじゃ、やっぱり面白くないから。一癖、二癖癖欲しい、というのがいつもあります。モデルさんに男の子を起用するのも、lili by SERIを身につけた像が可愛い!と、私自身が思うからです。

─ 私もせりちゃんに会うまで、インスタでしかlili by SERIを知らなかったけど、ブランドビジュアルがフィード投稿に並ぶ感じがすごく印象的で覚えてました。

やっぱり自分の性格かなと。"流行りに乗れない"っていうのもそうですし、"人と一緒っていうのが好きじゃない"から、古着を着て自分を表現する。ビジュアルも普通に可愛い、というよりも、癖を加えて表現をしたくなるんです、ひねくれてる(笑)

せりちゃんの友人・イーグル野村氏をモデルに起用。
こちらは女性ver. どちらもlili by SERIの可愛さ。

─ どんなブランドにしていきたいか、目指すところはありますか?

もっとブランドを広めて、もっと大きくなっていったらいいな、というのは 1番に思っています。

lili by SERIは、一見のお客さんが手に取って買ってくれるような、キャッチーなブランドじゃない、と最近やっと分かりはじめていて、実際のお客さんは、Instagramを見て買ってくれる人が95%ぐらい。 それは事前にどんなブランドかをわかって、気持ちを高めた上で買ってくれているのだと思います。

そこから、もっと広めて大きくするには、やっぱりもっとビジュアル撮影の作り込みをがんばりたい。もちろん、アクセサリーも新しいものも作るし、今までのものも大切にアップデートさせていきたいですね。

カラーのウッドフラワーミニフープは年内廃盤予定だそう

また、いまは、地元大阪や東京でのお仕事をいただくことが多く、メインになっていますが、来年は自分から動いて、全国のいろんなところに行きたい。lili by SERIを知ってくれている、SNS上だけで繋がっているひとに直接会って、よさを伝えて、手に取って見てもらう、自分で手売りする機会を増やしていきたいです。

あと、ありがたいことにリピーター率が高く、オンラインショップでいつも買ってくださっている方も多いので、行った各地で直接お礼も言えたらいいなと思います。

新作のマルチショルダーは福岡のイベントにも!

● いままでもこれからもワクワクする方へ

─ 日常の楽しみや趣味はありますか。

胸を張って言える好きなものが酒と古着ですね(笑)ひとと会って、お酒を飲んで話すことで、刺激をもらうことも多いです。また明日も頑張ろうという気持ちになる。

古着は、最近は外を回ったりは正直できてないので、オークションサイトやメルカリでヴィンテージのものをずっと見ています。

─ せりちゃん自身で、自分の自己紹介をするってしたら、どんな人でしょう?

「元気で明るい、楽しいことが好きな32歳(笑)」

無茶ぶりな質問にも答えてくれました(笑)

─ 決断するときに大切にしてることは?

それに対して勇気がいるかいらないか。ワクワクするかしないか、です。勇気がいるなら飛び込むし、ワクワクするならそっちを選びます。勇気が必要ないというのは、多分、私の場合は、楽な方というか良くない方なので。

─ 理想や憧れの人物像はありますか?

何かに貢献している人にすごく憧れを持ちますね。今は漠然としすぎているんですが、自分が携わる業界やジャンルで、何かに貢献できるようになったらいいなと。

あとは、トップに立ちたいというより、人が慕ってついてくるような人になっていきたいです。

─ 具体的に5年後の将来のイメージはありますか。

5年後…37歳か……。ブランド自体が大きくなっていてほしい、イベントをしたら行列できるみたいな(笑)。アクセサリーはもちろん作ってたいけど、他にもスタッフさんがいたり、もう少し規模が大きくやれてたらいいですね。

あとは、日本のコレクション・ファッションショーのアクセサリーを手掛けてみたいです。

● 福岡でのイベントを直前に控えて…

─ 福岡では、今回が何度目のイベント?

POP UP自体は3、4回させてもらっていて、店頭に立つのは今回で2回目ですね。

2022年冬 博多FREAK'S STOREでのPOP UP時

─ 福岡はどんな印象がありますか?

人に対するイメージが正直そこまでわかっていないんですが、かわいい古着屋さんも結構あって、もう、ご飯がおいしい!っていうイメージです。飲みに行くのもめっちゃ楽しみ。

─ イベントで楽しみにしてることを教えてください。どんな方に来てほしいですか?

目掛けてきてくれる人に会えるのがすごい楽しみです。lili by SERIが好きな方に来てほしいんですが、一緒に出店するマナちゃんのお店、LOOKING FOR YOUMOREのお客さんともリンクして、楽しんでもらえたらそれが理想だなと。

今回はお客さんとの距離もより近いものになると思うので、会話もゆっくり楽しみたいなって思ってます。

……………………………………………………

● あとがき

ロングインタビューとなりました。お読みいただきありがとうございました。

文中にもありましたが、いまが彼女にとって大きな分岐点であることは、SNSを通して感じていました。きっと今年の夏に話しを聞いていたら、今回の内容とは全く違ったはず。

そう思うと、いまの彼女が話してくれたことを、勝手ながら今後の彼女のためにも残しておきたくなり、結果、味わい深いボリュームとなりました。

また、この記事を作るために取材時の音声を繰り返し聞いていたのですが、私一人で何度も笑っていました(笑)せりちゃんとのおしゃべりはとっても元気に笑顔になるのです、とってもエネルギーになる。だから、福岡の皆さんには、今回のイベントでぜひ会ってほしいという気持ちでいっぱいです。

自分らしく人生を邁進したい私たちにとって、これからもlili by SERIは、lili by SERIらしい可愛さで背中を押してくれるはず。なんて心強い!!

●lili by SERI (from Osaka)
… アクセサリー・雑貨
Instagram:@lilibyseri
Online shop:https://lilibyseri.official.ec/
●デザイナー:田中芹(たなかせり)
Instagram:@seriochan

\ lili by SERIも出店!/

11月24日(金)〜26日(日) 福岡・薬院にて開催する、日々のお洒落がよりたのしくなるような、アクセサリーやヴィンテージアイテムが並ぶイベント 『pop up shop "good!" 』についてはこちらをcheck▼

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