見出し画像

日々、というところに 今日も〈3〉

穴が、あきます。
「オイラ寝る。ツメ、引っかけとく。」
からです。
我が家のねこ君は、こう寝たい。
セーターに、シャツに、
穴があきます。

日々、いろんなところに、
いろんな穴が、あきます。
服や布巾、地面に、そして心に。
小さな、大きな穴が。
繕える穴、埋められる穴もある。
そう簡単に埋められない穴もある。
さみしく、かなしく、
切なく、やるせなく、
どうしようもなく、
あいてしまった心の穴。
あけたままも、辛い。でも、
埋めた方がいい?どうなんだろう?
暴力や乱暴な何かで埋めてみるならば、
いっそ、そのまま、
あけておくのはどうなんだろうか…。

心に穴があいていると…
あちらから流れてきた音楽が、
穴に入ってきて、
不意に響きだしたり…
こちらで目に入った言葉が、
暗い穴の中に、
不意に灯りをともしたり…
元気そうに見えた誰かの悲しみが、
不意に穴から見えたり…
そんなことがあるんじゃないか…と。

心に穴があいているからこそ、
見える景色が、聞こえる音が、ある。
心にあいた穴は、
誰かと一緒に空を見上げるために、
あるんじゃないか…

と、人は、穴は埋めた方がいいだとか、
あけておいていいんじゃないかとか、
日々、思わなくちゃあいられない。
けれど、
「オイラにはカンケーない。
オイラ寝る。ツメ、引っかけとく。」
日々、のどをゴロゴロならして、
ねこ君は、ごきげんでおります。
そしてまた、服に、
穴があきます。

絵はがき〈2019年7月〉

ぼうしに穴が あいてます

ぼうしの穴から見上げる空は
てんとうむしの空
きみの暮らす空

いっしょにこの空見たいから
いっしょにこのせかいにいたいから

ずっとこの穴
あけときます


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?