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愛の新陳代謝とモンゴル火鍋。#来世彼氏に生まれたら

60兆もの居住者が君という身体のアパートに住んでいる。
換気をしたいから君に呼吸をさせ、栄養がほしいから君に食べさせ、生まれ変わりたいから性欲がある。五感というものがある。
ーー出展不明

私たちのカラダを形づくる細胞は毎日入れ替わっていく。数ヶ月前に自分を構成していた細胞はもうほとんどここに無い。

彼女がつくってくれたごはんで延命した細胞たち。
彼女の体温を独り占めしていた細胞たち。

新しい細胞にリペアされるのに、愛されていたことだけは、まじめに記憶しているのが不思議でならない。細胞たちの記憶リレーはオリンピック級のファインプレーだ。

きっと新陳代謝が記憶のリレーを超えていけば、忘れてしまえるのではないだろうか。最小単位まで愛されていたこと、全部。

モンゴル火鍋で、実験をしてみた。

会場は「天香回味」日本橋・本店。モンゴル火鍋の名店としてメディアや食べログで高評価を叩き出している。

「我々の店には火鍋しかありません。テンシャン・フェイウェイ…と呼んでおります。」店名が極楽浄土の鳥みたいな響き。なんだか新しい扉が開けそうな予感に溢れている。

ここには3つのコース+アラカルト具材がある。スタンダードなAコース(4300円)を勧められたので注文。

2種類のスープには名前も知らない薬味がこれでもか!!!!と入ってる。辛いスープと、漢方薬のようなスープ。(こちらは温泉を飲んでるみたいだった。)

こんもりとお野菜&めずらしいきのこがデフォルトででてくるので追加オーダー不要。お通し、お肉、薬味もついてくる。

さて、15分ほど食べ進めていると、いつもキンキンの缶ビールみたいに冷たい足先が温まってくるのがわかる。まるで内臓の岩盤浴だった。ハフハフ、もぐもぐ、ゴク、こっちのキノコも食べる〜!ハフハフ...

食べ終わる頃にはカラダの中から、体温+1度の血液がギュンギュン飛ばし気味に巡っているのを感じた。

「大事なのは代謝をあげること。お腹いっぱいになってても、勝手に痩せるからね。」

これだ...

代謝をあげて、細胞の記憶リレーを追い抜く。

独特の香草や薬味の残りがたっぷり身に纏って帰宅。すぐにシャワーを浴びた。汗とともに、なんだか古い細胞たちまで流れ落ちていくようだった。自分からダシが出てるんじゃないかと思うほど、皮膚をつたうシャワーの湯が美味しそうだった。少し朦朧としたのは、ただ美味なる火鍋に夢中だったからかもしれない。

結果:愛されていたことを覚えていた
考察1:記憶リレーのバトンにはバックアップがある説
考察2:骨のずいまで愛され説

調べてみたら、骨の細胞は完全に入れ替わるまで5ヶ月かかるって。

モンゴル火鍋で女はひそやかな恋の話はしない。愛はむきだしなのだ。きっと細胞バトンタッチの瞬間に、こぼれ出すんだ。うまく言葉にならなくても、ああ彼女はわざと愛の弾丸を摘出していないんだと確信させられる。

モンゴル火鍋は、新陳代謝を超える愛を確かめる、実験室だった。


ちなみに、、、「愛されることと」「甘やかされること」は天国と極楽ほど違う。

来世、首尾よく君の彼氏に生まれ変われたら、この違いについて書いてみようかな。

2018/04/08追記
冒頭の言葉がどこから来たのかご存知の方がいらっしゃれば教えていただけますか。日記のページの端っこに走り書きしてあったのですが、きっと本か映画を見てメモしたものだと思います。



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