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「そういう人」がいてもいい

今期のドラマもいつものように、後追いでのんびり観ていた。そのなかで、いちばん最初に最終回にたどりついたドラマが『いちばんすきな花』だった。

脚本は、生方美久さん。生方さんのことを知ったのは、昨年の同時期に放送されたドラマ『silent』を観たときだった。

『silent』を観ているとき「このドラマは『誰に共感したか』で語り合いたいな」と思った。実際、作品を観た後にSNSでハッシュタグをたどっていると、それぞれの登場人物に対する思いをつづっている人がそれぞれいて、すごく納得できたのを覚えている。

そして今回の『いちばんすきな花』にも同じ感想を持った。単に「どの人物にも個性的だから」ではなくて。その人物の価値観と、その背景にあるものまで、深く深く掘り下げて描いてくれるからなのかなと思う。

今回の『いちばんすきな花』は、ハッシュタグを追ったりしなかったから、皆がどんな感想を抱いたのかはわからない。でも私は今回も「あ、私はこの人だ」と、特に共感できる人物がいた。

このドラマの主人公は4人(だと思っている)。それぞれ他者との関係づくりに悩み、世間一般の価値観に引っかかりを覚えてきた過去を持っている。作品内の表現を借りると「二人組がうまくつくれなかった」人たちだ。

そんな4人が「4人で」友情を育んでいく物語。作中の4人を観ながら「大人になって、こんなに仲良くなれる人ができるっていいな」と思ったり、一人一人のエピソードや価値観に「わかる」と思う部分もあったりもした。

でも中盤まで、ちょっとだけ4人に対して共感できない部分を感じながら観ていた自分がいた。自分でそれがなんなのか、よくわからないまま。でも、途中でやっと納得した。私は4人と違って「二人組」が好きなのだ。

物語の中盤、4人の共通の知り合いとして「美鳥ちゃん」が登場する。4人は彼女を自分たちの輪の中に入れようとするのだけど、美鳥ちゃんはそれをやんわり拒む。そしてこう言う。「私、二人って好きなんだよね」。

「あ、今回はこの人だ」と、セリフを聞いた瞬間に共感した。私も昔から、どちらかといえば「二人」のほうが好き。仲良しグループのみんなの輪の中にいるときよりも正直、その中の誰か一人と話している時間のほうが好き。

仲のいい4人組が描かれる作品の中で、そんな美鳥ちゃんのような「別の価値観」の人が登場したこと、そしてそれを尊重し、受け止めてくれる物語だったことに、なんだかホッとした。

皆、それぞれに好きだと感じるものや人、大事にしたい感情を持っている。「そういう人がいてもいい」と、価値観を認めあう信頼関係があって初めて「居心地のいい関係性」は生まれるのかなと、物語を最後まで見て思った。

そして、主題歌の『花』も大好きだ。曲の中の「いつの日かすべてがかわいく思えるさ」という歌詞が、ドラマに出てくるいろんな問いに対する答えのような気がする。藤井風さんの包容力を感じる主題歌もひっくるめて、とてもあたたかいドラマだった。

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