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 コンサルタントやコーチングの指導には、本人が自力で回答にたどり着くように仕向ける手法があります。
 たとえば、コンサルタントが「今回はこうしてください」と提示する解決策に従うだけでは、支援を受ける会社内にノウハウが蓄積していきません。加えて、彼らもカンタンに得られた助言は実行することに抵抗がある、という心理もあります。
 そこで、質問やヒントを話しながら、担当者らの思考を前に進ませていき、最終的には自分たちで考え抜いて回答を導き出したように感じてもらうのです。

〈例〉その原因はなんでしょう?
〈例〉どうすれば実現できますか?
〈例〉○○の方向では可能性がありますか?

 専門家であればわかっている対処法、つまり気づいてほしい内容が答えになるような質問を順番にしていくわけです。
 いわば「魚を与えるのではなく、釣り方を教える」という教訓にも似た話です。人材を成長へと導くことも、コンサルタントが担う役割の1つです。

 意見の誘導で一番単純なケースは、新聞やテレビの取材記者が自分の考えている意見を専門家に言わせようとするもの。
 取材の質問項目メモに「○○○であると言えますか?」とズバリ入っている場合もあります。または取材インタビューの中で、言葉を変えて何度も同じ質問を繰り返し、近い答えが出たらさらにそこを広げて言質をとる、というやり方もあります。

 反対に、取材を受けた側が「ここだけは本質なので外してほしくない」という部分があるなら、報道(放送)されるときにメディアが使いたくなるような目立つキーワードに変換しておくという対策も考えられます。

 また、ビジネスの打ち合わせなどの席上で、こちらの提案を受け入れるかどうかを確認するとき、次のようなフレーズで意見をあらかじめ誘導するやり方もあります。

〈例〉事情をご存知の皆さんは問題なく賛成してもらえると思いますが…。
〈例〉これに反対する人はいないとして、次をどうするか議論したいのです。

 こうした前フリにより、こちらの都合や思惑に合うような話へと進めていくわけです。

 私はセミナー受講者さんに対して、気持ちをポジティブな結果へと向けてもらうために次のような工夫をすることがあります。
 冒頭近くのスライドで失敗例を見せ、「今日のセミナーが終わる頃には、これがなぜ失敗したか、その原因も修正の方法もわかるようになっているはずです」と話すのです。

 一般に、セミナーの冒頭でゴールを見せることは有効です。最初に成果を見せることで、そこにいたるまでの落差を認識してもらえます。そして失敗パターンを提示した場合は、それを改善するノウハウを得ようという目的意識で座学に取り組んでもらえるようリードできるのです。

リズム感を出す

 リズム感のあるフレーズは心地よく、聞く人の心にすっと入っていきます。英語ではラップから政治家のサウンドバイトまで韻を踏みます。日本語でいうと「セブン・イレブン、いい気分」ですね。また、日本には七五調という文化もあります。『千と千尋の神隠し』などは長いタイトルであるのに言いやすく、覚えやすいことに気づくでしょう。

〈例〉商品開発の目標は、売上アップ、シェアアップ、利益アップ!です。
〈例〉理想のシステムを、AI、AR、VRで構築します。