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相手のニーズを知って合わせる

 コピーライターが商品のキャッチコピーを書くとき、ターゲットに合わせて言うことを変えるときがあります。
 伝えるべきメリットがいくつかあったとして、男性雑誌に掲載する広告ではAというメリットを訴求するけれど、女性雑誌の広告ではBというメリットを一番に伝える、というように中身を変更するのです。
 それは、相手によって刺さる要素が異なるから。キャッチコピーは対象者を強く意識して作られているわけです。

 こう考えると、普通に会話をするときも話す前にまず相手のニーズは何かをきちんと知るべきだとわかります。ニーズというのはマーケティング用語ですが、言い換えるなら「相手の気持ちはどこにあるか」というような言葉になるでしょうか。
 用語はともかく、相手の思いや希望は何なのか。安心したいのか、認めてほしいのか、正しいことをしたいのか、喜びたいのか、名誉がほしいのか、利益を得たいのか、社会貢献に興味があるのか、道徳を重んじたいのか、信頼がほしいのか……、あるいは逆に何を恐れているのか、何を失いたくないのか。こうした思いを知るところからスタートする必要があります。


相手が言ってほしいことを考える

「人が動く伝え方」とされるノウハウは、よりわかりやすく伝わる言葉づかいを教えるものです。けれども、「伝わった」だけでは相手が動くかどうかはわかりません。「動きたくなるメッセージ」を伝えなければならないのです。そのためには、相手の置かれた状況や気持ちを思いやることが前提条件だといえます。
 身近な例を挙げるなら、知り合いのSNSの投稿にコメントを入れるときなど。「なんと書けばいいか」ではなく、「相手はなんと書いてほしいか」と考えると、喜ばれる適切なコメント内容を思い浮かべやすくなるでしょう。

 また、取り入れやすいものでは、「相手の使う言葉を使う」という方法があります。
 心理学では、相手の言動や仕草をマネることで好感を持ってもらう効果を「ミラーリング」と呼びます。
 キャッチコピーを書くときも、専門用語ではなく対象ユーザーが使う言葉を選ぶことで理解のスピードが速まり、自分へのメッセージとして受け止めてもらいやすくなります。そのためには、ユーザーがどんなキーワードで検索しているのかを調べることもあります。
 日常の会話でも、相手の口ぐせや大切にしている言葉、こだわっている言葉をピックアップして話せば、同じ価値観を持つ人として認識してもらうことができます。


聞き上手になることが話し上手への道

「将棋の棋士は対戦中に何十手も先を読んでいる」とはよくいわれることです。同様に、盤面を180度回転させて考えることもあるといいます。つまり、対戦相手の立場になり切って「どう攻めるべきか」を考える、つまり自分の弱点を知るわけです。
 勝負事において、相手の目線から局面を捉えるのは、自分が守ったり攻めたりするうえでも有用な視点を得ることにつながります。

 対戦しているわけではない相手の気持ちを把握する場合でも、相手側の立場になり切って物事を捉えることが大切です。
 人によっては、じっくりと耳を傾けるだけで満足し、「話を聞いてもらってよかった」と感じてくれることもあります。しっかりと聞くだけで聞き上手とされ、気配りのできる人と認識してもらえるのです。
 その先に、客観的かつ俯瞰するように話の中身を把握できる段階があります。

 とにかく、相手の立場や気持ちを考えること。それにはいい反面教師がいます。「自分のことしか考えない人」です。その人を反面教師として自分を省みるのが一番の早道でしょう。