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具体的な数字を入れて話す

 私は文系で極端に数字に弱く、算数のテストで小学5年生に負ける自信があります。そのため、さまざまな分野の目安になる数字をあえて丸暗記しています。たとえば、次のような事項です。

 ・日本の国家予算はほぼ100兆円
 ・日本の人口はだいたい1億2600万人
 ・明治維新は1868年
 ・コンビニの店舗数は約5万7000店
 ・東京から南西に向かってだいたい100キロ行くと熱海
 ・平方メートルに3を掛けてゼロを1つとると坪数

 暗記していない数字の目安を「だいたいこれくらいだろう」と想像する数字のセンスに欠けているため、とても助けになります。そして、近い数字を用いて別のことを類推するときにも役に立ちます。これは、フェルミ推定をするときにも大変便利です。

 大づかみの数字でいいと思っています。「ざっくり何キロくらい?」「だいたい、何兆円くらい?」と、桁が合っていれば、とっさの会話にはこと足ります。あとで正確なところを調べればいいのです。

 比較して言及するのも恐縮ですが、「コンピュータ付きブルドーザー」とあだなされた田中角栄さんは、あらゆる数字を暗記しており、エリート官僚とやりあっても決して負けなかったといいます。
 そのうえ、下っ端の人びとの名前まで記憶していたというのですから、人心掌握の天才とされていたことにも合点がいきますね。


数字を含むフレーズで説得力を高める

 数字を入れて話すことは、その内容に説得力やリアリティを持たせるうえで効果的です。売上金額や人数、質量、日付などのデータを覚えておいて話すだけで、できる人のトークを演出できます。
 たとえば、プレゼンや会議のときに「これから説明するやり方で売り上げが25パーセント伸びた事例があるんです」とタイトルを言えれば、提案内容を真剣に聞いてもらえるでしょう。

 また、「ネットでも大きな反響がありました」では抽象的な評価にも聞こえますが、「1万8000ダウンロードを超えています!」や「いいね!が6000もつきました!」と言えば、「本当にすごい反響があったんだな」と受けとめてもらえるでしょう。
 まずは基本的な数字から初めてみてはどうでしょうか。

〈例〉日本のGDPは548兆円です。

 世間話からビジネス交渉の場まで、土台となる数字をつかんでいることは強みになるはずです。あなたが所属する業界、分野の数字を把握するのも役立ちます。

 さらに、意外な数字であると驚きがあってより効果的です。

〈例〉日中間の海底ケーブル敷設は、なんと1871年です。

 ここで、明治維新つまり明治元年が1868年であると記憶している人は、「明治4年ですね!」と驚きを増幅する返しができるわけです。

 メディアの取材で「(卓球の技術で)中国との距離はどれくらいですか?」と問われた張本智和選手は「まだまだ距離があると思います」と答えました。それに対して、石川佳純選手が秒で返した答えが振るっています。

〈例〉300メートルくらいですかね。

 長距離レースの差にたとえているのかよくわかりませんが、抜けそうで抜けない、しかし抜く日は来るかもしれない、絶妙な数字を出してきたなと思いました。

 ジョークを言うときにも、数字を入れて具体的にするとリアルな面白さが出ます。女性タレントさんが、テレビのバラエティ番組で自己開示をしながら笑いにしていました。

〈例〉私、ネコかぶってるんです、10匹くらい。

 以前、ある会社に社長さんに「ウチのキャッチコピーは何点くらいですか?」と訊かれ、30点と言いそうになって飲み込んだことがありましたが、人や会社の評価を数値化するのはあまりおすすめできませんのでご注意ください。

具体的に話す

 数字に限らず具体的に表現することで、相手はあなたの話の中身をイメージしやすくなり、理解がスピーディなものになります。
 例として、トランプ大統領が日米安保の不平等さを訴えたときのセリフをあげます。

〈例〉日本のために米軍は命をかけるが、米国が攻められても彼らはソニーのテレビでそれを観ていられる。

「彼らは何もしない」と言うところで、「ソニーのテレビで観ている」と具体的なキーワードを出してきたために、内容の是非はともかくぐっと臨場感が出ました。

 同様に、「売れています」と報告するだけでは半信半疑のまま。「先週、生産ラインがパンクしました」と付け加えると、実感がわきます。
 そのほかでも、「友人です」ではなく「週に1度は会う友人」や、「高級寿司店」ではなく「品書きに値段が書いていない寿司店」のように具体的に話す。抽象的、観念的な話では伝わりづらいといえます。