大学卒業後に1年間働くことができるプラクティカルトレーニングというありがたい制度

留学生のためのお助け労働許可制度、プラクティカルトレーニング

アメリカでは、留学生が働くことはほぼ禁止されている。特例として学校内の図書館やカフェなど一部での仕事は許されているが、基本は働けないと考えた方がよい。

ただし大学を卒業したあと1年間の猶予つきで取得した学部に関連した職業に限り仕事をすることができる制度がある。これはプラクティカルトレーニング(Practical Training)という制度でアメリカで就職を希望する留学生にとっては本当にありがたい制度だ。

この労働許可証は大学で単位取得がすべて終わった時点で出してもらえる。卒業後アメリカでの就職を狙う場合はプラクティカルトレーニングとして働きながら就労ビザ(H1 ビザまたはB1ビザ)をサポートしてくれる職場を探すのが典型的なパターン。でも11年たってビザを出してくれる職場が見つからず帰国するケースはとても多いのだ。

最初の仕事はウエブサイトのインデックス化

大学卒業のための単位をすべて取得するとともに、今度はプラクティカルトレーニングとして働ける仕事を探し始めた。インターンシップと違ってこちらはお給料のもらえる仕事だ。

当時は雨後の竹の子のようにありとあらゆるインターネットやテクノロジーに関連した会社が誕生していた。いわゆるドットコムブームといわれる時代で、ラッキーなことにブームの中心地であるシリコンバレーは通勤圏内だしサンフランシスコにもテクノロジー関連の会社が毎日のように出現していた。ベンチャーキャピタリストと呼ばれるリスクをとって投資する投資会社が惜しみなく資金を供給していたのだ。

最初にみつけた職場はルックスマート(LookSmart)という今でいうサーチエンジンの会社だった。驚いたことにこの会社今でもまだ健在していた!ウエブ上にあふれるコンテンツをインデックス化させて整理しサーチできるようにしようというグーグルと同じコンセプトで、グーグルはちょうど創設されて1年の時だった。

私の仕事は日本語のウエブサイトをインデックス化させることで、朝から晩まで日本語のウエブを見つけてはセグメントに分けて整理するという作業を続けた。たとえば海外旅行ガイドのホームページには海外旅行のインデックスを付け、さらに行先別にインデックスを付けながら整理していった。各国のサイトをインデックス化させていくためのチームだったので、スペイン語やフランス語、ドイツ語などが母国語の人たちが同じチームで働いていた。

ドットコムブームで巨額な資金がスタートアップに投入されていた

当時ルックスマートが利益を上げていたかどうかは疑問だが、すくなくとも潤沢に資金は供給されていた。サンフランシスコのサウスオブマーケットと呼ばれるトレンディなエリアに大きくておしゃれなオフィスがあった。サウスオブマーケットは倉庫などが立ち並んでいて、隠れ家っぽいクラブがたまにあったりするくらいのあまり治安のよいエリアではなかった。それがドットコムブームとともにスタートアップの会社が家賃の安いサウスオブマーケットにオフィスを持ち始め、今ではコンドミニアムやオフィスが立ち並ぶ高級感あふれる場所に様変わりしてしまった。昔と変わらないのは、ホームレスがうろついていることくらいだ。ルックスマートのオフィスももと倉庫だったビルをリモデルしたロフト系のつくりで、天井が高くてフローリングの床にレンガ作りの壁など、ドラマとかに出てきそうなオフィスだった。

オフィスにはフリーマッサージのコーナーがあり、マッサージセラピストが常住していた。パソコンの前に座り続けてパリパリになった肩と首を気持ちよくもみほぐしてくれる。冷蔵庫にはスナックや飲み物が満載していておやつは食べ放題だった。オフィスでスナック食べ放題はアメリカではよくある光景で、キッチンには飲み物のディスペンサーがあり、クッキーやチップス、チョコレートなどが並んでいる。会議中もお茶を飲んだりクッキーをつまんだりはふつうの光景だ。ちなみに投資家からの資金がじゃんじゃん投入されていたであろうルックスマートでは、金曜日になるとチームメンバー全員に小さなギフトが配られた。今週もお疲れ様、来週もがんばろうね、というマネジャーからのジェスチャーだった。

ドットコム系の会社を狙うしかない!

ここでのバブリーな経験で、働くならテクノロジー系の会社、とくにインターネット関連の会社にしよう、とターゲットを定めた。テクノロジーの知識はほぼ皆無だったが、新しく学べばいいのだ。当時、ドットコム市場への期待値はものすごく高く、巨額な投資が入っていた。ルックスマートは居心地よかった。でも、日本語がわかれば誰でもできる仕事に将来はない。ルックスマートで働きつつ他の仕事を探し続けた。就労ビザをサポートしてくれる会社を探さなくてならないのだ。敷居は高かった。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?