インターンシップを経験し大学卒業へ

アメリカの大学生にとって仕事の実体験を得ることができるインターンシップという制度はものすごく大切だ。日本のように新卒を一気に採用して育てるというシステムがないので、大学を卒業したからと言って必ずしも仕事にありつけるとは限らない。反対に仕事の経験もない大学卒業したての若者は即戦力としての価値が低いのだ。

なので大学に通っている間にインターンシップを通じて仕事の経験を積む。もしもインターンシップ先の企業に気に入ってもらえれば就職にありつける可能性もある。インターンとして経験したことは履歴書に書き込むこともできる。有名な会社でのインターンは競争も激しく、シリコンバレーにある名の知れた企業のインターンシップへは全国の大学から応募が来る。

企業側としてはインターンシップを採用することによってタダで働くワーカーを確保できるし、トップの大学に通う優秀な学生たちを採用前にテストすることもできる。多分多少賃金がでるインターンもあるのかもしれないが、私が在学中に経験した2社のインターンは給料は出なかった。

通常はインターンとして定められた時間をセメスター内で働くことによって大学の単位を取得することができる。もちろん自分の専攻している学科に関連していることが第一条件だ。私の場合は経営学でマーケティング専攻だったので、2社ともマーケの仕事となった。仕事は学部を通じて探した。

最初の会社はサンフランシスコのビジネス街に本部のあるホームステイ斡旋業者だった。ぱりっとしたスーツを着て面接に行ったらあっさりと採用され、週に数日オフィスに通う生活が始まった。

タダ働きとはいえ会社に通うのはすごくうれしかった。ビルの15階にあるオフィスからはサンフランシスコのビジネス街を見下ろすことができた。アメリカで働いているんだ!夢に一歩進んだような高揚感だった。

与えられた仕事は、どうやって日本の学生たちにホームステイサービスをプロモートしたらよいか、というマーケの基本のようなテーマだった。3か月のインターンシップの間に企画を立てて、最終日にプレゼンをして終了した。

興味のある仕事ではなかったけれど、うちで働かないかと言ってもらえず、ちょっとがっかりしたことを覚えている。

2社目はシリコンバレーの端っこにある中国系のセミコンダクターの会社だった。はっきりいってテクノロジー系はまったく経験がなくわからないことだらけだったが、あれこれ雑用をこなしていくうちにあっという間に3か月の期限が終了した。雑用すぎて何をやったかさっぱり覚えていない。それでも一応マーケ関連の仕事、ということで学部に募集がかかっていたので単位は難なく取得することができた。そして当然ながらここでもやはり仕事のオファーはなかった。

卒業に必要な単位をすべて取得し2社目のインターンの終了とともに最後のセメスターが終わった。これで実質は大学卒業の資格を手に入れることができたが、卒業式は1年に一度しか行われない。なので1年の後半のセメスターで単位の取得が終わった場合は5月に行われる卒業式まで待つ必要がある。卒業式に出るか出ないかは任意なので、単位取得とともに大学側へ卒業式へ出席する意向を知らせる必要がある。私は記念になることだし、と卒業式に出席することにした。

大学生活最後の1年でのインターンの経験とともに、生活のルーティンが勉強中心から仕事を視野にいれた生活に移行していった。

さて、真剣に仕事探しを始めなければ。大学を卒業したからといってこのまま日本に帰るわけには絶対いかない。

1999年の12月のことだった。





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