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ピンク好き男子の母より、ごめんね

靴を買いに行ったら

息子がパステルカラーのキラキラ光るスニーカーの前から動かなくなった。

息子は物心ついたときからきれいなものや可愛いものに目がなくて、

私も受け入れているのだけど

あまりの女子女子した色とデザインと

普段使いするスニーカーということもあり、

「…それ、女の子のじゃないの?」

と言ってしまった。

「いいの!これがいい!」

案の定の反応。

「でも、なんか言われない…?」

「いいの!これが履きたいの!」

「うーん、かわいいけどね…。あ!これ、かっこいいじゃん!これも光ってる~!」

隣にあった新幹線をモチーフにしたスニーカーに

それとなく息子を導いた。

息子は底の部分に刺激を与えるとピカピカと光が走るのを見ながらじっと考え、

「これにする」

と言ってその場から離れていった。

私はホッとしたのと同時に

間違ったことをしたという気持ちに襲われ、

近くにいた夫に

「本当はあっちがよかったっぽい」

とパステルカラーの棚を指差した。

「あっち、買ってあげたらよかったかな?」

「いや、新幹線って言ったんでしょ。いいよ、わざわざ」

夫の言葉を免罪符にしてレジに向かってしまったが、

本人のさせたいようにしてあげれば良かったというモヤモヤがずっと晴れない。


夜、ご飯と歯ブラシが終わって

お絵描きをしている息子が

「恥ずかしいこと描いたんだけど、いえないなあ」

とモジモジしながらも見てほしそうに言うので

「えー、なに?」

と覗きこんでみた

子供の絵なので正直よくわからない。

「ここだよ」

と言って指したところを見ると文字で

「ピリキヤ」

と読める。

「なに?」

「プリキュア、だよ。あ~、はずかしいなあ」

と照れ臭そうに言うのが、いじらしく思えた。

たぶん、私は

「男の子はこの色、このデザイン」

って無意識のうちに伝えてしまったんだろう。

クラスの女の子がクスクス笑いながら息子のことを

「今日ね、女の子とドレスごっこしてたんだよ!」

と教えてくれたときも

「そうなんだよ。この子はね、きれいなものとか可愛いものが好きなんだよ」

と庇って伝えたつもりだけど、

息子が女の子だったらわざわざ伝えることもないことだよな、と思う。

「そうなんだよ。この子はね、(男の子だけど)きれいなものとか可愛いものが好きなんだよ」

声に出してない()の中が、息子には聞こえていたにちがいない。

ピンクが女の子の色って誰が決めたのかな。

ビーズに、スパンコールに、ハートにリボン。

男の子が好きだっていいよね?

「プリキュア、全然はずかしくないよ。お母さん描いてあげようか」

それからスマホで画像検索をして、プリキュアを描いた。

私が女の子だったときに好きだったクリーミーマミに似ている。

ハートに星にりぼんにフリル。

風になびく長い髪、魔法のコンパクト。

これでもか!っていうくらいの、

心ときめくものたちを夢中になって描き写し、

ふと隣を見たら息子が目をキラキラさせて

絵を見つめている。

遠慮がちに、

「えー、じゃあこれも描いてほしいな」

と、プリキュアのキャラクターとセット(?)になっているペットを指した。

ペットも描いた。

ペットを寝かせてあげたい、と息子がふとんの絵を描き足した。

楽しかった。

息子が楽しんでいるのがわかったから。

好きなものは恥ずかしくない。

恥ずかしくないんだよ。

好きなものがちゃんとあるって、すてきじゃない?


玄関の新幹線のスニーカーを見るたびに

心のなかで謝りながら

私はしばらく可愛いものを描くかもしれないなと思っている。







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