見出し画像

おじさん向けに、忖度ないアートフェアの記事を書く

JBpressに、アートフェア東京、ディレクターの北島輝一さんから伺った「アートと金(投資)」の話を寄稿。さすがに元金融マン「アートフェア=株式市場」という見立てが明快。アートフェアってなんやねん? な人の目からウロコが落ちるといいな。
北島さんには以前にクオリティ誌(笑)で取材させていただいたのだが、一般誌に掲載されるアート記事って、知的(風)シュガーコートと幻想盛りがデフォルトゆえ、肝心の「眼ウロコ」コメントがほとんど活かせず。ビジネス系のウェブメディアで、リベンジさせていただいた。

見出しの「失敗しないアート購入」(笑)は、編集担当さんの苦肉の策。アートというだけで、ヴュー数は期待薄ですからね。

アートバーゼルで、日本のアート言説のインチキにがく然
「ダマされてた‥‥」と舌打ちした14年前


アートフェアといえば、ですよ。
初めてアートバーゼルに行った14年前、私は腰が抜けるほど驚き、そして怒りに震えた。

VIPプレヴューの日、私は一生分の金持ちを見た。SATCから抜け出てきたようなマダムが会場を走り回っているわ(走りやすいように足元はフラットシューズ)、中庭のシャンパンバーで、パワーカップル風が眉間に皺を寄せて買い物相談してるわ(酔ってる場合じゃないのでボトルを開けてる人はいない)、アドバイザーか金融コンサルを引き連れた背広のおっさんが困惑顔でうろうろしていたり。みんな億円単位の買い物に目が血眼なのだ。モチベーションは投機や、セレブ同士の見栄合戦。誰も「芸術鑑賞」なんかしていない。

会場では毎日、セールス状況や来場したセレブの姿を伝える新聞が配布される(写真上)。売上の天文学的な額、セレブのビッグネームぶりがこれでもか。
会場はメインホール以外に、バーゼル市の随所にちらばっているが、プレス章をつけていても「VIPオンリー」で入場できない展示やラウンジがいくつもある。アートフェアは、日本の美術館やギャラリーのように誰にでも開かれた場所ではない。巨大なコレクター接待サイトでもあるのだ。

「あー、ダマされてたな、ワタシ」と愕然とした。日本で語られている「アートとお金」がらみの話は、あまりにこの実態と乖離していた。

「アートについてものを言うことで食べてる」方々は、とかく「日本の現代アートマーケットが欧米より遅れている」と嘆くのだが、その一方で「お小遣いで作品を買って、日本のアートマーケットとアーティストを支えましょう」的な、ぬっるーい言説をさかんに吹聴されていた。「アートは感性を豊かにするから、ビジネスマンがアートを見ると、経済活動にもプラスになる」みたいな、迷路のような出口のない話も「アートについてものを言うことで食べてる」人たちの常套だ。

「庶民のお小遣いで買える作品」が並ぶギャラリーと、世界のアートマーケットとは、草野球と大リーグくらい違う。日本のアート関係者、教育者は、お金のことに構わず、野球を純粋に愛する、誰もが参加できる草野球精神の尊さをずっと説いていたと思う。しかし、マーケットの話をするのなら、「草野球礼賛」のままでは矛盾しすぎる。「野球は、お金のためにするもんじゃない(勝つことだけが目的じゃない、とも)」といいながら日本人大リーガーの年棒に喝采する。そんなねじれを平気で受け入れているような。

「日本のアートマーケットの何がどう遅れているのか」(遅れたままでいいのか、ダメならどうすればいいのか)は、沸騰する世界一のフェアの現場を見た上で、具体的に提言しないとダメだろう。

いやまさか、「アートについてものを言うことで食べてる」方々や、教育現場の方々が、バーゼルに行ったこともないのに「日本のアートマーケットは‥‥」なんてやってたのだろうか?
そんな横着があったとしたら、超・悪質な出羽守である。

あれから14年だが、何か変わりましたかね?
アート業界の門外漢だった北島さんの「金融目線のアートフェア解説」が目からウロコに感じられる。
そのことが、逆に「アートについてものを言うことで食べてる」方々の解説や提案の薄さを痛感させることになっている、とワタシには見える。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?