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「コミュニケーションは受け手が決める」 1 企業研修の紹介 

2023年から、いくつかの企業からのご依頼を受けて、広告とコミュニケーションをテーマにした勉強会を実施しているのですが、それらの中で、お伝えしていることを、使用しているスライドの一部を交えてご紹介します。

勉強会の一例

「コミュニケーションは受け手が決める」

「コミュニケーションは受け手が決める」

「視覚表現とコミュニケーション」をテーマとする研修や勉強会の冒頭でまずお伝えしているのが、経営学者ピーター・ドラッカーの残した「コミュニケーションは受け手が決める(Communication depends on the recipient)」という言葉です。「コミュニケーション能力」という言葉が膾炙しており、それは発信・伝達・表現する側の力量と結びつけられて解釈・評価されることが多い昨今ですが、そもそも「受け止める側」がいなければ成立しないのがコミュニケーションという営みであり、「受け手側」の認識に立つことが大事だと考えています。「受け手になること」は視覚経験としては「観察すること」であり、それぞれに異なる視点を持った他者が存在することをどのように捉え、より良いコミュニケーションのありようを探るのか、ということが勉強会の趣旨です。
私はその時々の現象によって起きる反応、感情の動きを、一過的なものとして捉えるだけではなく、観察して記録することで、後で振り返ったり、過去と今を比較したりして相対化し、分析できるようになること、「観察する態度」を身につけることが自分の見方や感覚を確かめたり、他者とコミュニケーションをする上で重要だと考えています。

情報インフラの劇的な変化

日本の広告費解説(2022)

このように、「受け手側」のあり方を強調するのは、スマートフォンの登場以降情報インフラの激変により特に顕著になった、世代間の情報に対する認識の違いから、コミュニケーション不全・断絶が著しくなったと感じるからです。広告費全体に占めるインターネット広告費が飛躍的に増大していることからも明らかなように、広告産業が大きく構造的に変化しています。
学校のような教育組織の場合は、教わる側とされる年齢層と教える側の年齢層で開きあり、会社組織では、情報環境の激変の只中で、成長・教育を受けてきた若年層と管理職に属する中年・壮年の年齢層(企業・組織の中では男性が多数を占めます)との間に横たわる情報や価値観のギャップがコミュニケーション不全の状態を常態化させている大きな要因であると言えます。

お互いに何を見て、何を感じているのかわからないような状態では、コミュニケーションがうまくいくはずもありません。お互いに接点を持たない、干渉し合わないことによって、対立の発生を防ぐということも、個人的なつきあいのレベルであれば可能であり、場合によっては推奨される方法と言えますが、教育や就労の場は、コミュニケーションなしには維持できません。
広告とコミュニケーションをテーマにした勉強会で、「気になった広告を記録して記述し、お互いに発表し合う」時間を設けるのですが、それは、
「自分とは違う見方がある、相容れない観点もあるが、相手を否定したり、ぶつかりあうことではない」と、対話の糸口を探る機会を持つことでもあります。

小さな気づきや違和感の大切さ

ワークショップを進行する中で心掛けているのは、記述する方法において、それが詳細な分析であっても、思いつきや小さな違和感のようなコメントであっても、それぞれに「独自の見方」が反映されているということを尊重することです。たとえば、就労経験のない高校生と就労経験のある大人との間では、理解の仕方に違いがあることは当然であり、その違いを示し合えるような環境づくりをすることが大事だと持っています。


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