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居酒屋の個室に通されるたび、飲食店の「いい席」ってなんだろうと考える話

その飲食店の「いちばんいい席」ってなんだろう。


どの店も「いちばん最初にお客さんを通す席」は、ある程度決まっていると思う。最近はファミレスだと「お好きな席へどうぞ」と言われることが多いけれども。小さい店だとそうもいかない。

たとえば、金曜夜19時、駅前の小箱(80席以下くらいの小さい店のことを前職ではそう呼んでいた)の居酒屋。適当にお客さんをバンバン通すと、すぐに席が埋まってしまう。こうして次に来たお客さんを「満席です、すみません」と言って断る。これが「満席ロス」と呼ばれる現象だ。

この「満席ロス」を防いで席数と客数、売上を最大化する。どこにどのお客さんを「配席」するかでその日の売上が決まるのだ。この仕事を、わたしは今年2月までやっていた。

「次3名が来たらあそこに、次6名が来たらあのテーブルをくっつけて……」と必死に考えながらドリンクを作っていたあの頃を引退したいま、改めて、居酒屋の「いい席」について考えてみる。

いい席とは

そもそも「いい席」とは何だろう。

居酒屋現役時代のわたしの定義は、長居ができる席

お客さんが長居をする理由はたくさんある。話が弾んだとか、何となく帰りたくなくてもう一杯飲んじゃうとか、上司に引き止められて仕方なくとか。大抵はお客さん自身の問題かもしれない。


けれども、もし20代カップルが通された席の両脇のテーブルに、60代のコンサート帰りの団体客がいたら?40代のサラリーマンが大声で熱弁していたら?20代の男女6名が突然コールをはじめたら?

あるいは、周りは静かでもテーブルの立て付けが悪くてずっとグラグラしていたら?背もたれがなくゆったり過ごせなかったら?


すくなくともわたしが客だったら、2時間は居られないと思う。

「落ち着く」とか、「静か」とか、そういう利点を引っくるめた最終到着地が「長居ができる場所」だと思う。

結局売上がほしいだけじゃん?

「いい席」の定義とか偉そうなこと言ったけど、「長居ができる場所」をもうすこし掘り下げたら、恥ずかしながらなんだかお店本位なことばかりだった。

長居をしてもらう利点は2つ。1つはお客さんの「もう一杯、もう一品」を引き出せること。もうひとつは、居心地がいいと感じてもらいリピーターになってもらうこと。

売上のことしか考えてないな??

そう考えると「いい席」に案内したつもりでも実は、「自分本位」な配席をしていたのかもしれない。申し訳ないな。いや、「配席に正解はない」と新人のころから教わってきた。そして売上と利益を追求するのが店長の仕事。こればかりはしょうがない。

「いい席」=「個室」が誰にでも通用すると思うな!

「いい席」の典型例として「個室」が挙げられる。

当時はコロナの影響もあり「個室ありますか?」と電話で聞かれることも多かった。個室であることが飲み会開催の条件と言っても過言じゃなかったかも。

残念ながらわたしの店に個室はなかったので、それでお客さんを取り逃がした機会は何度もあったが。


それでも、コロナ前から個室は一定数需要があった。「落ち着く」「静か」「プライベートなことも話せる」、こんなところがメリットなのだろう。店側も、予約を入れてくれた人優先で「いい席」の個室に案内する。

だから、わたしが客として予約して居酒屋に行くときも、個室に通されることが多い。


え、個室?!気まずっ。


わたしはあまり個室が好きじゃない。もちろん個室しかない居酒屋ならいいものの、たとえば「この店で唯一の個室!」みたいな場所に通されると、嫌に緊張する。

それも別に彼氏と2人ならいいものの、特段そういう感情がない男性との飲食でそのような席に通されると、ただ気まずい。一度や二度ではない。このような境遇にわたしは何度か出くわしている。

こんなことなら予約せずにふらっと入って「もうカウンターしか空いてないんですけど……」と申し訳なく言われる方がマシだった。


きっとわたしが店長だったときもこんな風に、自分が「いい席」だと思い込んでいる部分がたくさんあったんだろうな、と、個室に通されるたびに反省するのである。

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