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「その傷どうにもできへん」介護付きシェアハウスの学びから自分らしい企画が生まれた1日に迫る #7 前田彰さん|第4回『映像の企画』

コピーライター・阿部広太郎さんが主催する連続企画講座『企画でメシを食っていく2023』(通称『企画メシ2023』)。

『裏企画メシ2023』では、『企画メシ2023』の課題に取り組んだ企画生(『企画メシ2023』の受講生)の裏側を、同じく企画生のエビアン(遠藤)が取材していきます。

『企画メシ』第4回目の課題は『映像の企画』。
元テレ東ディレクターの高橋弘樹さんをお招きしたゲスト会でした。

高橋さんから事前に出された企画の課題は以下の通りです。

○いままでの人生で
「もっとも自分の強い『心の傷』か『怒り』」
と思うことを3つ挙げてください

○その中から1つ、「これはある程度マスでも共感、許容される」
と思う『心の傷』か『怒り』を選んでください

○それを「マス」な、「エンタメ」に昇華させ、「商業的に成功する」
と確信する企画として提案してください!

※「マス」は無料なら100万人以上、有料なら10万人以上のひとがが見てくれると定義します
※「エンタメ」とは、消費者側に興味を持ってもらえる手法で作られていることとします
※「商業的に成功」とは、自らの人件費も含め、制作費をしっかり補えて黒字化できることとします

出し先は
<映像>
○テレビ
○YouTube
○ABEMA、ネットフリックスなどOTT

<活字・静止画>
○出版
○Web企画
あるいは「その他」など出し先も表記お願いします!

自分の「心の傷」や「怒り」に向き合う難しい企画。
第7回『裏企画メシ』では、株式会社HappyのPR担当・前田彰さんにインタビューしました。

前田さんは現在、介護付きシェアハウス『はっぴーの家ろっけん』(以下『はっぴーの家』)のSNS運用などを担当しています。

前田さんが今回心の傷であげたのは、元カノとの壮絶なエピソード。しかし企画の内容は死生観をテーマにしたものでした。

いわゆる恋愛が心の傷となるものを、なぜ死生観の企画に落とし込んだのか?「前日まで別の企画を考えていた」前田さんの企画の裏側を取材しました。

マックの現金手渡しから始まったPRの仕事

ー今はSNS運用をはじめとするPRの仕事をされていますが、ここの会社に入ってから始めたのでしょうか?


前田:2019年に1年間東京で働いていて、CAMPFIREという会社で社長のアシスタントをしていたんですけど、配置転換でSNSの中の人をやり出して


ー……どんな配置転換ですか(笑)


前田:いろいろなタイミングが重なったんです(笑) そこからSNS担当をやり出して、年明けの2020年に兵庫に帰ってきました。元々『はっぴーの家』は友人の話で知っていたんですけど、そのときそこを実家代わりにして住んでて。

で、代表の人に「お前暇やろ?東京でSNSやってたんだったら、うちでもやってくれや」って言われて、住まわせてもらう代わりに手伝ってたんです。

そしたら3ヶ月後に代表から急にマクドナルドに呼び出されて。「今までありがとう、これからよろしく」って現金をバンって置かれて。そこから仕事が始まったんです。


ーマックでいきなり現金って……すごい始まりですね。


前田:隣の小学生、二度見してました。


ー最近の話題だと、今年の24時間テレビに『はっぴーの家』が取り上げられていたり、前田さん自身も雑誌のインタビューを受けたり、露出が増えている印象です。それらにつながったきっかけは何だったのでしょうか?

前田:僕が『はっぴーの家』のSNS担当になる前からすごくファンがついていて、感覚的には引き継いだって感じなんですよ。


ーあ、そうなんですね!


前田:だから、取材の依頼とか来ても「自分でやった感」は無いんです。今の課題としては、意識的にニュースをつくって取材をしてもらうっていうのを日々どうしようって思いながらやっています。


ーある意味「乗っかっている」感覚なのでしょうか?


前田:そう。ここじゃないところで働いたときに通用しないなって思ってます。まだ世の中に出せていない面白いエピソードもたくさんあるので、勉強しないと。

傷と自分らしさを掛け合わせて、らしい企画をつくる

画像:前田さんの『映像の企画』


ー今回の企画は自分の心の傷や怒りをテーマにしたものでした。この課題を見たとき、自分の心の傷や怒りはすぐ思い浮かびましたか?それとも結構掘り起こして決めたのでしょうか?


前田:まず元カノのエピソードが出たんです。でも本当はこっちやりたいっていうのがもう一個あって。ブログで「東京」っていうのを書いたんですけど、あれをフリにして企画しようと思っていたんです。

▼前田さんが「東京」について書いたnoteはこちらから

前田:僕が東京で暮らしていたとき、いろいろ挫折とかしたけど、東京タワーを見たときにすごく癒されたり感動したり、「また頑張ろう」って思えたんです。

そういう、傷や怒りを希望に変えるっていうのを企画のイメージにしていて。僕、香取慎吾さんがすごく好きなので、香取慎吾さんと一緒に仕事するっていう企画を考えたんです。


ーそうだったんですね。


前田:だけど全然面白くなくて。なんかありきたりで、自分じゃなくてもいいなってなったんで、前日に変えました。


ー前日にまるっきり変えて作り直したんですね!


前田:全然ちゃうやつ。生々しいやつになっちゃいました(笑)


ー他の企画生の企画でも、恋愛や失恋をテーマに取り上げている方は多かったです。一方前田さんの企画は、恋愛をテーマにしつつもそれを「死生観」に落とし込んだのが他の企画と違うところだと思いました。ここは何か理由があるんですか?


前田:そっか、そうなんや。全然そこ意識してなかったです。

傷のテーマと自分らしさをどう掛け合わせようってなったときに、実際その傷どうにもできへんっていうのを、この介護付きシェアハウスという環境で習ったんです。傷ついて1人になりたいときでも、人が亡くなったときに葬儀をするときは行かんといけないし。

どうにもならないことに対してそうするしかないよなって。そういう話と今回の傷が重なると思って、この企画にしました。


ー自分らしさと傷をうまく落とし込めた企画なんですね。


前田:僕が恋愛ドキュメンタリー考えても別に面白くないと思うし(笑)らしくはないなって。

自分の葬儀を出会いの場に

ー『はっぴーの家』ではいろいろな方の死を見送ると思いますが、すごく楽しそうな印象です。棺桶にメッセージ書いてたりとか、まるで葬儀がお祭りみたいですよね。

ー前田さん自身、理想の生き方や見送られ方を考えたりするのでしょうか?


前田:自分の理想は、葬儀のときに今まで知り合った人に参列してもらって、そこで知り合った人同士で仲良くなったり仕事が生まれたり、出会いの場になったらいいなと思いますね。


ーまるで結婚式みたいですね。たしかに私も葬儀がきっかけで、久しぶりに親戚に会いました。発想を変えると葬式って出会いの場にもなるんですね。


前田:楽しいっすよ。


ー今回の課題を経て、心の傷は昇華できましたか?


前田:傷は定期的に剥がされているので、いまだに血が流れることはよくありますね(笑)


ーじゃあ今でも傷は進行中なんですね。


前田:でもストレスを強く感じたときは、「全ての感情に意味はある」と思って前向きに変えようと思っています。得を積もうと思って。そう思ったら、これから先何かいいことあると思うので。


ーここまでお話しいただきありがとうございました!最後に企画生のみなさんにメッセージをお願いします。


前田:東京の人たちはいつも集まってていいな、って思ってます。会ったら仲良くしてください。あと、X(ツイッター)のフォローお願いします。

▼前田さんのアカウントはこちら

<取材・編集・執筆>=遠藤美果(『企画メシ2023』企画生)

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