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『度胸星 続編もどき』_第15話「怒り」


scene_テセラックの内側

サムームの機内で、突入時のGに耐える三人。

茶々「補助エンジンの逆噴射を開始します。」

――ゴゴゴゴゴゴゴ(だんだんと音が大きくなる)
ところが、フッとスイッチが切れたかのようにGの圧力がなくなる機内。

武田「・・・なんだぁ、いったいどうしたぁ!」
度胸「急にGが・・・」

顔が青ざめている茶々。何かの存在に気づく。

茶々「・・・何かが私たちを取り囲んでる・・・」
「・・・弱いけど意識が感じ取れるわ・・・」

武田「外を見ろ! なんだこの白みがかった景色は?」

度胸が何かに気づいた顔。
度胸「・・・こ、これは・・・たぶんテセラックだ!!」
「筑前が言っていたことと符合する!」
「俺たちはテセラックの内側にいるんだ!!」

武田「!!」「なんだとぉー、三河!」

度胸「ダメだ、武田ァ! パニックになるな、平常心でいるんだ!」

深呼吸して気を静める武田。

茶々「・・・そうよ、これはテセラックよ。」
「とても無邪気な・・・意識を感じるわ。」

茶々の周りにキラキラと共鳴している粒子のようなものが集まってくる。
ただし、見えているのではなく、感じられるもの。

【場面スイッチ】
母船の望遠カメラで着陸機を追っていたハリコフから交信が入る。
ハリコフも血の気の引いた顔色をしており、緊迫した調子で通話する。

ハリコフ「!!」「どうしたんだ、武田! 急にモニターで機体を確認できなくなったぞ。」
「通信できるか? 武田。武田ァー!」

――ザー、ザー、ザー
返事はない。

scene_ハードランディング

再びフッと現実空間に引き戻される着陸機。
どうやらテセラック内部から抜け出したようであり、着陸機の後方に巨大なテセラックの膜のような面が見える。
しかし、火星の地表面は近くに迫っている。

度胸「まずいぞ! パラシュート起動、パラシュート起動・・・ダメだ、間に合わない!」
「火星の大気圧じゃあ、すぐに開かないんだ・・・」

パラシュートはシュルシュルと風にうなりながらようやく開く。
パラシュートにあおられ機体は垂直方向を向くが、振り子のようにスイングしている。
地表はもう間近だ。

武田は降下エンジンを点火し、落下速度を抑えようとする。
しかし、完全に垂直方向を向いていないため、思うように減速せず、機体の姿勢はスイングしたままである。

武田「・・・パラシュートを切り離すぞぉ。」

武田がパラシュートを切り離すと同時に、茶々が着陸用の支持脚を展開する。
機体は斜めに傾いたままで、減速も十分でない。
コンピュータが異常を感知して自動で側面のエアバッグを開くが、茶々は観念して目を閉じる。

――プシューー、ガーーッ、ゴォーン、ゴォン、ゴン、ゴーー、ザッ

【場面スイッチ】
居住モジュールの外に立つ筑前たち。
望遠鏡とノートパソコンのモニターで一部始終を目撃している。

ブラッドレー「おーよしよし、逆風だから着陸地点はここから30キロぐらい離れそうだな。」

筑前「そぉっすね・・・」
「心配なのはテセラックなんだよなぁ・・・」「・・・アッ」

突然、望遠鏡を覗いていた筑前が息をのみ、顔が青ざめる。

筑前「テ、テセラックだぁーっ!!」
「やっぱり来た。でも早すぎるぞ、どうする気だ?」

ブロンソンとブラッドレーもテセラックに気づき、驚いた表情で固まる。

ブラッドレー「あのヤロウ!!」
と、急ぎローバーに乗り込み、エンジンを点火する。
筑前とブロンソンもそれに続く。

――プシュー、バタン、ガロン、ガロン、ギュロロロロロ

ブラッドレー「あのヤロウ! 何度も何度も俺たちの邪魔をしやがって!」
「今度という今度は俺は許さねえからなぁ!」

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