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『度胸星 続編もどき』_第8話「火星の水」


scene_テセラックが現れ、石田沈む

通信が終わって安心した面持ちの火星の四人。
めいめいの作業に戻る。
石田と筑前はモジュールのドアの前室でヘルメットをつけ、ドアを開けて外に出る。
――プシュー、バムッ

石田「!!!」「アーーッ、こいつ、何してやがるんだ!」
石田の視線の先には、組み立てたアンテナとそれを端から押しつぶし始めたテセラックの姿が。

――ザッ、ザッ、ザッ
石田「やめろー、やめてくれ!」
「僕らみんなで作ったアンテナだぞ。」
とアンテナに駆け寄る。

筑前「石田ァ、止まれ! やつに近づくんじゃねぇ!」

その声もむなしく、反対の端までアンテナを押しつぶしたテセラックに飲み込まれていく石田。

筑前「石田ァー、戻ってこいー!」

駆けつけたブラッドレーとブロンソンにはもう石田の姿は見えない。
再び、怒髪天を衝く状態のブラッドレー。
ブラッドレー「このヤロウ!!」

筑前「待て、ブラッドレーさん!」
とブラッドレーの胸を両手で押し返し、必死で止める。

筑前「怒りをしずめろー! あいつは怒りに反応してるんだ!」

ブロンソン「本当か!? 筑前。」

筑前「確証はねぇが、あいつが攻撃するのは俺たちが怒った状態のときだ!」
「ブラッドレーさん、落ち着け。頼むから落ち着いてくれぇ!」

――ハァ、ハァ、ハァ、ハァ・・・・・
とブラッドレーの息づかいがだんだん小さくなる。

テセラックはしばらく様子をうかがっていたが、逆方向に動き始める。

筑前「ま、待ってくれ、テセラック! 石田を連れて行かないでくれ!」

なぜか止まるテセラック。数秒間その場にいたが、そのまま地下に潜り始める。

筑前「テセラック・・・石田ァ!」

ブロンソン「石田!」

踵を返してモジュール内のある計器の前に戻るブロンソン。
引きずられるかのように筑前とブラッドレーも付いていく。

――パチ、パチ、カタカタカタ
するとモニターに石田の位置を示して点滅するシグナルが現れる。
モニターを平面モードから垂直モードに切り替えると、石田が真下へと沈んでいく様子が表示されている。
そしてある点で止まる。

【場面スイッチ】
テセラックに取り込まれた状態の石田の画。
怒りは収まり、怯えた不安そうな表情になっている。
水に漂っているような水平の姿勢である。

周りを見ると、フィルターに覆われたようにうすぼけてはいるが、地殻の中を降りていく感じが伝わってくる。

石田(心の声)「なんだ? どこに行こうとしてるんだ?」

テセラックはゆっくりとした降下を続け、やがて地下水脈に行き当たる。
*註:実際は火星の地下の水資源はほとんどが氷の状態だが、マグマ溜まりに近い場所に液体の水が存在すると仮定。

石田(心の声)「水だ! 火星の地下には水があるって言われていたけど、本当にあったぞ!」
と少し興奮する。

するとテセラックはそのまま石田をその水脈の中に置き去りにする。
そして今度は横方向へと移動していく。

石田「ンググゥ、苦し・・・いぃ、い、息が・・・」
石田はもがきながら、やがて力尽きる。
*註:地下深くにあるため、水圧で宇宙服に亀裂が入ったという設定。

石田(心の声)「・・・か、火星は・・・おもしろかったな・・・」

【場面スイッチ】
再びモジュール船内。筑前たちはモニター前に張り付いたまま。
その横の通信機からは「ジ、ジ、ジ、ジ、ジ、ジ」というノイズがうなり続ける。

scene_M1船内のテセラック評

火星との交信を終えたM1コックピット。

茶々「みんな無事でよかったわ。」

度胸「まったくだ。絶対に助け出そう!」

一方、ハリコフは石田が送ったデータの確認にとりかかる。
――カタカタカタカタ

観測用プレーンが撮った画像、スチュアートによるテセラックについての考察、スキアパレッリ4号クルーがまとめた分析が次々とモニターに映る。
いつの間にか日本人三人もモニター前に集まっている。みな一様に怪訝な表情。

武田「・・・テセラックだって・・・」
「超立方体がクルーや着陸機を裏返す・・・なんだそりゃ。」

茶々「これがハリコフ、あなたが言ってた異星人ってこと?」

ハリコフ「いや違うようだ。このレポートを信じるなら、これは他の星ではなく、他の次元からの訪問者だ・・・」
「・・・信じがたいことだがな・・・」

考え込む度胸。打ち上げ前の坂井輪夫妻との会話を思い出している。

――回想シーン始まり――

利宏「超ひも理論は途方もないことを予測するんだ。」
「我々のいる次元ではない、高次元があるということを。」
「縦・横・高さからなる、三次元空間ではなく・・・」「さらにその上の次元だ。」
「地球にへばりついた脳みそではなく、立体的に物事を見る脳みそで、高次元の存在を感じとってきてほしい。」

――回想シーン終わり――

度胸「・・・高次元の存在だったら坂井輪さんたちに聞くしかない!」
「地球と交信しよう。」

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