見出し画像

『度胸星 続編もどき』_第10話「それぞれの使命」


scene_筑前、決心する

石田がテセラックに連れ去られて数時間後の居住モジュール内。重苦しい雰囲気の中、筑前が顔を上げる。

筑前「なあ、みんな。いつまでもしょげていても仕方ねぇ。」
「なあに、M1探査船との交信は、あいつらがもっと火星に近づけば内蔵アンテナでもできるようになるさ。」
「たぶん火星到着のひと月前には必ず交信できる!」
「それより今はテセラックをなんとかする作戦を練らないか。」

ブラッドレー「どういうことだ?」

筑前「あいつらが来るまでにテセラックをもっと理解しないと、また同じような事態になっちまうだろう。」
「だから俺たちがテセラックを飼いならすしかない、って思うんだ。」

ブロンソン「飼いならすって・・・どうすればいいのかわかってるのか?」

筑前「やつの取り扱いの大原則は、“怒るな!” “パニックになるな!”だ。」

ブラッドレー「それは今回よくわかったよ。」
「しかし、仲間がやられたとき、平常心を保つ自信が俺にはねぇ!」

筑前「だからといってやつにダメージを与えることは無理だ。」
「ERV(地球帰還船)とISPP(現地生産燃料プラント)の爆発の具合からみると、ありゃスチュアートさんがテセラックを攻撃したと考えるのが妥当だろう。」
「そしてそれが成功しなかったことも・・・」
*註:本来ERV(Earth Return Vehicle、地球帰還船)は作中の母船(オービター)のことで、MAV(Mars Ascent Vehicle、火星上昇機)が火星から母船=地球帰還船まで航行する機体のことだが、原作の表現に統一する。

ブラッドレー・ブロンソン「・・・・・」

筑前「なあ、やつが俺たちのマイナス感情に対して攻撃してくるなら、プラス感情にはどう反応するんだろう?」

ブロンソン「やつはスチュアートを砂嵐から救い、ブラッドレーを凍死から救った・・・」
「少なくとも悪意や敵対心だけではないことは確かだ。」

筑前「・・・俺はテセラックにコンタクトしてみようと思うんだ。」

「!!」驚くブラッドレーとブロンソン。

ブラッドレー「正気か、筑前!」

筑前「大丈夫だ、あんたたちは巻き込まねぇよ。」
「ただ今すぐってわけにはいかねぇ。」
「度胸ちゃんたちが助けにくるんだ。俺たちは必ず地球に帰る!」
「帰ったときに手ぶらだったら、地球の人たちはがっかりするはずだし、NASAやNASDAの面目も立たないだろう。」
「今は俺たちのミッションをこなすことにしようぜ!」

ブロンソン「資源探査や地殻の組成調査を終わらせるってことか?」

筑前「そうだ。それにはローバーが不可欠だ。」
「だけど、その調査がひと通り終わったら、俺にローバーを預けてくれないか?」

ブラッドレー・ブロンソン「・・・・・」

筑前「ローバーで派手にやってテセラックをおびき寄せる。」
「そして、やつの内部に入ってみようと思うんだ。」

scene_M1の度胸たちが火星の非常事態を察する

数日後、M1コックピットで通信を試みるクルー。

ハリコフ「こちらはロシア火星探査船M1。応答願う。」「こちらはロシア火星探査船M1。応答願う。」
「どうしたんだ、何度やっても火星と交信ができないぞ。」
「前回と同じ周波数なのになぜだ?」

武田は腕組みをしてじっと前をみつめる。茶々は不安そうな表情。

武田「なんだか悪い予感がするな。」

ハリコフ「ダメだ・・・明日またトライしてみよう。」

度胸(心の声)「火星で何があったんだ? みんな無事だといいが・・・」
「せめて坂井輪さんが教えてくれた情報だけでも伝えたい・・・」

scene_火星とM1船内それぞれの無声シーンの挿入

コマ① マイクロプロープを地中に打ち込むブラッドレーと筑前。

コマ② M1船内で葉野菜を栽培する茶々。

コマ③ 火山の火口付近で地震計を設置するブラッドレーとブロンソン。

コマ④ M1船内でトレーニングするハリコフと武田。

コマ⑤ 茶々から贈られた瞑想の本を片手に、座禅を組みメンタルトレーニングを行う筑前。

コマ⑥ モニターに映るカラビ-ヤウ多様体の図像をみながら一生懸命何かを考えている度胸。

この記事が参加している募集

私の作品紹介

宇宙SF