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『度胸星 続編もどき』_第4話「帰還」


scene_ローバーの無声シーンの挿入

コマ① 石田が運転する横で爆睡するが、段差を超えた大きな振動で不機嫌に目が覚める筑前。

コマ② 車を降りてフロントガラスに降り積もったレゴリスを手ではらう石田。

コマ③ 大きなクレーターのふちの崖の前で回避ルートを相談する二人。

コマ④ 夕方になり長い影をひきずって走るローバー。
それを後ろから見守るテセラック(ズームアウトした画にテセラックとその影がフレームインする)。

scene_ブラッドレー、危機に瀕す

前日と同じように岩陰に横たわるブラッドレーだが、その顔からは完全に生気が失われている。
――ハア、ハア、ハア

そして震えが止まらない。
――ガタ、ガタ、ガタ、ガタ
ヘルメットシールドの計器は外気マイナス33℃を指している。

宇宙服には断熱効果があるが、それでも低体温症の症状として、震えが止まり、眠気が襲ってくるようになっている。

そこにスーッと忍び寄る超立方体のテセラック。
ブラッドレーはそれを夢見るようにしか認識できていない様子。

テセラックの表面の膜がブラッドレーの体に触れる。
膜が揺れる。

そして徐々にテセラックの内部に取り込まれていくブラッドレー。

scene_筑前たちがブラッドレーを発見する

今日も夜遅くまでローバーを走らせる筑前。
隣の石田は寝ている。

露出した岩は少なく、速度を出して進むローバー。
――ギュロロロロロ

そこへ上方からゆっくり降りてくるテセラック。
それに気づき急ブレーキを踏む筑前。
――キキーッ

筑前「!!」「テセラックが・・・現れた。」
(心の声)「ハア、ハア、落ち着け! 何をするつもりか見極めるんだ!」

目をこすりながら起きた石田もすぐにテセラックに気がつく。

石田「筑前さん! テセラックだ!」

筑前「落ち着け、石田ァ!」

テセラックはさらに降下して地面と接する。
しばらくそのままで静かな時間が流れる。
ずっと驚きながら凝視している二人。

少しずつテセラックが上昇を始める。
すると、横たわるブラッドレーの姿が現れる。

筑前・石田「ブラッドレーさん!!」

引き続き上昇し、ヘッドライトの視界から消えていくテセラック。

急いで車を降り、ブラッドレーに駆け寄る二人。
――プシュー、バタン、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ

筑前「ブラッドレーさん! 生きてるのか、ブラッドレーさん。」

石田「早くローバーの中に運び込もう、筑前さん!」

筑前「そうだな。おい石田ァ、足を持て!」「行くぞ!」
「ブラッドレーさん、起きろ! 起きろ!」

視線はテセラックのほうに向けたまま、筑前がブラッドレーの脇から手を差し入れ、上半身を浮かせる。

――ガシッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ウィーーン
急ぎ足でブラッドレーを運び、ローバー後方のフラットなスペースに寝かせる二人。

石田「ブラッドレーさん、しっかり。僕は救命ケースを持ってくるよ!」

筑前「おい、いま宇宙服を脱がすからな。」

ヘルメットをとり、ブラッドレーの宇宙服のヘルメットを脱がせるが、ブラッドレーの体が異様に冷たいことに気づく。
すぐに脈をとり心臓に耳を当てる。

数秒のちに安堵し脱力した様子の筑前。
筑前「生きてる! 生きてるぞーーっ!」
「だけど体が冷え切っている。石田ァ、暖房をフル稼働しろ!」
と言ってブラッドレーの身体をさする。

毛布と救命ケースを持って駆け寄る石田。
石田「ヒーターはつけたよ。でも低体温症は急激に温めるとダメなんだ。」「さあ毛布で体を包み込もう。」

【場面スイッチ】
翌朝、静かに目を覚ますブラッドレー。
自分の腕に刺さった点滴と、そのそばで座りながら眠っている筑前と石田を見つけて、自分が助かったことを知る。

ブラッドレー「・・・水をくれ・・・」

石田がそれに気づく。
石田「起きた、起きたぞ! 筑前さん。」
と筑前の体をゆする。

石田「水だね、ここにあるよ。ゆっくり飲んでね。」
とブラッドレーに水を飲ませる。

筑前、それをのぞき込みながら、

筑前「やったぜ! ブラッドレーさん。」
「よく助かったな。すごいぜ、あんたって人は・・・」
と言い、再びへたり込む。

ブラッドレー、周りを見渡しながらつぶやく。
ブラッドレー「ここはローバーの中か?」
「お前たち南極まで助けに来てくれたのか?」

顔を見合わせる筑前と石田。

筑前「それがさあ、・・・あんたを助けたのはテセラックなんだ。」「つまり、あんたをかっさらったあの白く半透明の四角い物体なんだよ・・・」

驚くブラッドレー。


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