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0行目:「今思えば」

某日、あるテキスト作業の打ち合わせの合間に――
T氏「そういえばさあ。なんで、また。物書きになろうと思ったの」
不肖「話すと長くなりますが。あれは……昭和の、そう」
T氏「休憩時間終わるわい。それ、ここで話さずにnoteで書けばいいじゃない。もしかしたらお前の立志伝失敗談が、これから作家になりたい人の参考になるかもしれん。つまりは有益なテキストってやつよ」
不肖「なんだか、不吉なルビが見えているのですがそれは」

今思えば。
田舎の、物知らずの少年が。無知な青年となって、東京に出て。あーだこうだして、道草で無駄足を踏みまくって、ようやくゲーム業界でなんとか糊口をしのぐようになり、物書きの端くれとなって……今。
思い返せば。
失敗しか無かったような私の半生。それも、今までの作品でネタになったり、台詞になったり。ここに至る私の道草旅は、無駄ではなかったのか?

私と比べるのもおこがましい、綺羅星の如き作家たちのエピソードでも――
ハーラン・エリスンの作品だと、作中で相手の頭蓋骨を叩き割るシーンが実に鬼気迫るリアルさで……エリスンは若い頃、喧嘩で相手の頭蓋骨を骨折する怪我をさせたことがあったり。
ティプトリーの晩年の作品で、急激な老化による死を迎えている人間、その主観がすさまじい疾走感で迫るエピソードがある……これも、作家本人が心臓発作で落命しかけた体験があったり。
かのヘミングウェイも若い頃、キャンプ中のトラブルで友人におので大怪我をさせてしまっていたり……その生々しさは、御大のボクシングや死闘のシーンに血の残り香を感じたり――など。

思い起こせば、私の手掛けさせて頂いた様々の作品に、そのシーンに。
「……ああ。あのときのあれだわ。このシーンの元ネタ」
的な思い出が、あったりする。もう5年ほど前になるが、アメリカンなマフィアの物語、その続編を手掛けさせて頂いたときにも、私の体験、失敗続きの思い出、正直クソみたいな環境と人間たちの間をくぐり抜けてきた私の体験が、様々のエピソードの種になったり、背骨になったりしている。
あのマフィアものに出てくる悪役、鼻持ちならない連中たちは、半分くらいがモデルがいる。そしてイケメンなナイスガイたちは、ほぼ創作するしか無かったあたり――私のもがいてきた道が、いかにろくでもないものだったか、しみじみ思い起こせる。

そして、もしかしたら――私の道程は、作品のネタになるだけでなく。
もしかしたら、こうして物書き。「ゲームライター」になれた私の、この道程、その記憶は。もしかしたら、これからゲームライターや物書きを志す方々への、何かの参考、お役立ちになるのではないか、と。

これから、不定期ではありますが私の半生、これまでの道程を思い出しつつ、こちらに――主役不在のピカレスクのようなお話を、まとめさせて頂く所存です。
私の立志伝、ほぼ失敗しかないその道程が……。
これから物書きを志す皆さんへのひと欠片の参考、その道程の敷石にでもなれば。
あるいは、作家を志しては見たものの、やはり引き返すことにした賢明な勇気への一助になれば。
もしくは、ただ単に「これはひどい」と、私の失敗を笑っていただければ。
――物書きとして、さいわいです。


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