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ギャラリー三日月からMIKAZUKI Artへ

2022年、クレッセントハウスが幕を閉じ、その跡地には新しいビルが立ち、風景は変わりました。ひとつの文化的建築物の歴史が終わった後、どのようにして文化と歴史を新しい形で紡いでいけるか、ということを考えました。一つには、これまでに失われていった文化的建造物の思い出や思いを各方面から頂きながら、その「記憶」をご紹介していくと同時に、これから壊されていくかも知れない建造物に対して活動をされている方々のご紹介をすることで、少しでも、その願いを多くの方々に届けること。

もうひとつには、故・石黒孝次郎が、情熱を注いだ古代美術品収集と美術商としての取り組みをなぞりつつ、彼とは全く正反対の活動として、今を生きる作家たちの現代美術セレクションを行います。クレッセントハウスは、かつては高級フランス料理店や、結婚式場としての存在感が強く、古美術ギャラリー三日月よりもポピュラーでした。しかし、そのクレッセントハウスが、クレッセントハウスとしていられた根源には、古美術ギャラリー三日月がありました。

古美術ギャラリー三日月では、紀元前およそ30世紀のものから17世紀頃のものまで様々な出土品が所狭しと並んでいました。世紀を越えた様々な古美術品を通して、時代を超えて私たちに語りかけられる空気感が、ひとつ一つの美術品の価値そのものでした。美術品は、時代を遡っていけばいくほど、その時代に無くてなならない、必然的な存在感が色濃くなっていきます。時には社会が大きく変わりゆくその背景の副産物となり、時には宗教や祈りに結びつき、時には王朝が栄えていくための願いに結びつき、時には神への雨乞いや作物の実りのために、そして、まだ文字もなかったような時代には、種として生き抜いていくための共通言語として。今の時代には、今の時代の必要とされる美術品としての性質というものがあります。MIKAZUKI Artでは、それを模索しつつ、作家の、作家による、作家と現代美術品愛好家のためのセレクションを行います。時にポップに、時に厳格に。

普遍性のその先へ。「古美術ギャラリー三日月」から、現代美術の「MIKAZUKI Art」へ。現代美術愛好家からインテリアアートとして楽しみたい方にまで、いつまでも作家の息遣いを感じることの出来る現代美術の数々を、作家目線で追い、セレクトしていきます。それは、各作家の目線を通した世界が、その美術品の中でいつまでも生き続けるような世界。100年経っても、1000年経っても、作家の目線を通したその世界が、その息遣いが感じられるような世界。そんな世界が日常の中に溶け込んでいくことで、計り知れない豊かさを感じることのできるような世界を、このMIKAZUKI ARTを訪れたみなさまに感じ取って頂けますと幸いです。

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