2022を振り返る

 ジャンル毎に去年を振り返ります。昨年は約半年入院してたので、全体的に低調ですね。※リンク先はWikipedia

1.読書

 昨年読んだ本は77冊、読んだページ数は27,707。新刊の中からのベスト10を読了順にご紹介。

1 喪失の冬を刻む / ワイデン・デイヴィッド・ヘスカ・ワンブリ
 [kindle] 部族警察とFBI二つの法執行機関の手からもれた悪党に私刑を行うネイティブアメリカンが主人公。映画「ウインド・リバー」でも部族警察とFBIの関係が描かれていたが、身内で問題を解決しようとする心理もわからないではない。
2 われら闇より天を見る / クリス・ウィタカー 
 [kindle]  カリフォルニアの避暑地である小さな街の警察署長ウォークと、その街に住む無法者を自称する13歳の少女ダッチェスふたりを主人公とする犯罪小説。徐々に伏線が回収されて行くのが快感だが、ダッチェスとその弟ロビンのやり取りなどは涙腺が緩みそうになる。
3 祈りも涙も忘れていた / 伊兼源太郎
 [kindle] 20年前、警視庁からある県警の捜査一課に配属された若手キャリアの甲斐が赴任早々、放火殺人事件の捜査本部で管理官を任されるという幕開け。甲斐の一人称で語られるし、彼の捜査手法が一本気なとこや、小説中小説が度々引用されるなど文学的側面もあって、オールドスタイルなハードボイルドを強く感じさせてくれた。
4 黒き荒野の果て / S.A.コスビー
 [kindle] 南部で自動車修理工場を経営するアフリカ系のバグが主人公。工場の資金繰りが悪くなり、昔の悪事仲間からバグの運転技術をあてにされ強盗の片棒をかつぐよう誘われ止むなく同意する。バグの家族や両親を取り巻く状況がていねいに描かれていると共に、疾走感あるカーアクションも迫力あった。
5 探索者 / タナ・フレンチ
 [kindle] シカゴ市警の刑事を辞め、アイルランドの片田舎に移住したカルが主人公。住む人のなかった家を修復しながら、牧草地をはさんだ隣人のマートや村人たちとパブなどで交流を深めてゆくが、ある日トレイという中学生と出会い失踪した兄を探して欲しいと頼まれる。警察時代に培ったインタービュー術や推理手法でその兄の友人たちから話を聞いてゆくうちに、徐々に物語が動きはじめる。カルの視点で進んでゆくのと、行動を第一義としている点がハードボイルドっぽくて好き。
6 キュレーターの殺人 / M.W.クレイヴン
 [kindle] 故郷カンブリアの自宅でリモート勤務するポーが、地元でクリスマスをはさんだ3日間にそれぞれ別人の3組の指が発見された連続殺人事件の捜査に招集される。お馴染み天才分析官のティリーとコンビを組んで犯人を逮捕するが、そこである方面から情報がもたらされ「キュレーター」という言葉がやっと登場する。ここまでが中盤で、ここからが謎から謎へというミステリーらしい展開。ティリーのギークらしいミクロな分析と、ポーのマクロな視点で物ごとを結びつける推理が気持ちよかった。
7 無情の月 / メアリ・ロビネット・コワル
 [kindle] 隕石衝突による温暖化で近い将来地球に住めなくなるため宇宙移住を余儀なくされるという歴史改変SFの三作目、これまでのエルマに代わり同僚の女性宇宙飛行士ニコールが主人公となる。彼女は州知事の夫人でありながら宇宙飛行士としても現役で地球と月を股にかけて活躍していたが、宇宙移住に反対する地球ファースト主義者のテロに巻き込まれる。物語が進むにつれニコールのおもわぬ過去が明らかになったり、最後は意外な展開。前作の伏線も回収されて満足したよ。
8 プロトコル・オブ・ヒューマニティ / 長谷敏司
 [応募したゲラ] 2050年代、コンテンポラリーダンサーの護堂は事故で右足を失うがAI制御の義足を提供され、AIを調教しながら再び踊れるようになる。義足を紹介してくれたダンス仲間で技術者でもある谷口から、ロボットと踊る舞台をやってみないかと誘われる。これまで一途に「機械を鑑に人間性を写してきた」作者だけに、最後のダンスシーンの描写はとても説得力があった。同じく舞踏家だった父が痴呆となって人間性を失ってゆく過程でも、護堂自身の内面の掘り下げと舞台の試行錯誤がシンクロしているようでした。
9 宇宙は「もつれ」でできている / ルイーザ・ギルダー
 [kindle] 著者はジャーナリストで、アインシュタイン始め今年のノーベル物理学賞受賞者ら多くの研究者の論文や書簡などから「言葉」を集めて主に会話形式で再構築し、黎明期から2005年まで如何にして量子論が進歩してきたかを辿った『歴史書』。「もつれ」について必ずしも理解できたわけではないけど、研究者たちの波乱万丈なドラマとして楽しめた。
10 第二開国 / 藤井太洋
 [kindle] 父の介護のため久しぶりに故郷の奄美大島に戻った昇は、統合型リゾート建設に活気づく村に馴染もうとする、という幕開け。いきなり島言葉の会話で始まるが、『ワン・モア・ニューク』でも冒頭で現代アラビア語と正則アラビア語の違いを指摘していたのを思い出す。奄美出身の著者らしく言葉だけでなく、風景なども説得力ある描写。中盤でリゾート施設の本当の正体が明かされるが、そこから村が賛成派・反対派に二分され、終盤はテクノスリラー的な緊迫感ある展開でシビレた。

読書メーター

2.音楽

 昨年聴いたアーティストは187組。その中で再生回数が多かった10組をご紹介。 

1 ULTRA
 再生曲数 291 / ライブ参加回数 0 (MASS OF THE FERMENTING DREGS関連 30 / ecosystem関連 8)
fishbowl
 再生曲数 184 / ライブ参加回数 0
3 cokiyu
 再生曲数 159 / ライブ参加回数 5
4 tricot
 再生曲数 150 / ライブ参加回数 25
5 安藤裕子
 再生曲数 150 / ライブ参加回数 27
6 フィロソフィーのダンス
 再生曲数 130 / ライブ参加回数 0
7 さよならポニーテール
 再生曲数 124 /ライブ参加回数 0 (そもそもライブしてない)
8 書上奈朋子
 再生曲数 117 /ライブ参加回数 0 (そもそもソロではライブしてない)
9 一十三十一
 再生曲数 114 / ライブ参加回数 25
10 fraqsea
 再生曲数 111 / ライブ参加回数 1

Last.fm

3.映画

 昨年観た映画は14本で、内訳はPrime Videoが8本、Blu-rayが3本(再鑑賞なので画像には含まれず)、テレビが3本(内2本は再鑑賞なので画像には含まれず)、結局劇場には行けなかった。ドラマは1作。映画の中から☆が多いもの(同☆の場合は好き度を加味)を8本ご紹介。

1 虐殺器官
 
☆4.5 [テレビ録画] 原作にあった「痛感マスキングと止血スーツを着たもの同士が戦うとミンチになるまで止めない」というセンテンスが見事に映像化されてた。また文字だけでは分かりづらかった「虐殺の文法」という文言も、おぼろげながら理解できたよ。SFマニアであり、ミリヲタの自分にとって、この世界観は好き過ぎる。 
2
 アバター
 ☆4.5 [3D Blu-ray] いやースゲエ!こんなに楽しめるとは思ってなかった。ディスプレイに段々と近づいてゆき、最終的には27型ディスプレイから75cmほどで観てたわ。
3アリータ:バトルエンジェル
 ☆4.5 [3D Blu-ray] 他の3D Blu-rayよりスイートスポットが狭いようで、ディスプレイに60cmぐらいまで近づかないと適切な3D感が得られず苦労した。劇場で観た時には気づかなかったスチームパンク的な要素があったり、チレン役がジェニファー・コネリーってことも新発見。彼女は『フェノミナ』での可憐さが忘れられないんだよね。
ゼロ・グラビティ
 ☆4.5 [3D Blu-ray] 3D感はそれほど派手ではないけれど、ときおり飛んでくるデブリにはビックリさせられた。ヘッドホンがAKG Q701だったので、S.ブロックの声が生々しくて同じヘルメットの中にいるよう。
5 ハーモニー
 ☆4.5 [テレビ録画] 「優しさに殺される」この物語の前提である大惨禍は今のコロナ禍を思い起こさせられる。健康が広まった世界でありながら、ディストピアを感じさせられるのが伊藤計劃らしい。文字だけの小説からこの世界観を創り上げた制作陣もお見事。トァンとミァハの百合、ビジュアルも美しかった。虐殺に続きキャラ原案はredjiceで、長谷敏司『BEATLESS』に受け継がれてる。
プリズナーズ
 ☆4.5 [Prime Video] 意外な展開の連続で緊迫感あって目が離せなかった。故ヨハン・ヨハンソンの抑えた音楽も効いてたし、最後のワンシーンも余韻があってその先を知りたくなった。
宇宙でいちばんあかるい屋根
 ☆4.0 [Prime Video] 原作も読んでたけど、最初フィルム寄りのガンマカーブもあってか主人公つばめのメイクが濃く感じ、清原果耶を好きになった「『透明なゆりかご』での透明感が無いじゃん」と、ちょっと違和感あった。でも彼女の演技に惹き込まれ納得させられてしまった。タイトルをリスペクトしたカメラワークもお見事。
アウトポスト
 ☆4.0 [Prime Video] 後に「カムデシュの戦い」と呼ばれるアフガニスタンでの戦闘を描いている。登場人物の一人、ロメシャ軍曹が書いた『レッド・プラトーン』という手記を読んだことがあるので戦闘の流れはある程度把握していたが、最後に航空支援が来るまではハラハラしてしまった。

Filmarks

#読書2022年 #音楽2022年 #映画2022年

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