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うっかり傷付き、春の夜へ(3.15-3.16日記)

うっかり傷付き心を回復させるまで
要した時間:1.5日


3月15日(金)

突っ伏して泣いてしまいたい気持ちを堪えて、なんとか金曜を終えた。心身をリセットする間もないくらい、時間的にも気持ち的にも追い込まれた1週間だった。

「これは別の話であって、私自身のことを言われているわけじゃない」

そう言い聞かせても「あなたは本当にダメですね」と何度も何度も、刻印を押されているような気持ちになった。

0時、3時、4時と退勤時間が伸びていく中、「さあ新しい1日だ」と切り替えることも出来ず、長い長い、終わらない月曜日を過ごしているような気持ちで、息が詰まりそうになりながら、金曜日まで過ごしていた。

ようやく退勤し、もそもそと炒飯を食べながら、Netflixで「正欲」を観始める。重いテーマを扱う作品だと知っていたけれど、気になっていた。でも、やっぱり今日見るべき映画ではなかったと後悔しながら、エンドロールで寝落ちした。

深夜の2時頃に目が覚めて、パジャマに着替え、歯磨きをしながらLINEの通知を開く。親友と恋人からそれぞれ「しっかり寝て、美味しいものを食べてね」という言葉がきていた。

さっきよりずっと軽い気持ちで、眠りに就く。


3月16日(土)

布団の中にて

最初は8時に目が覚めた。部屋の温度と、窓が差し込む光の明るさで、外は春の陽気だと分かる。こんな日は散歩をしたい。途中でコーヒーと甘いものを挟み、目的地はリニューアルオープンした横浜美術館にしようかな、そんなことを考えながら二度寝。

結局だらだらと惰眠を貪り、起きたのは夕方だった。幾度も起きようとしたけれど、14時くらいからもう諦めた。

仕方ない、うっかり傷付いてしまったのだから。そういうときは、眠るしかない。心を回復させたいとき、私はとにかく眠る。少しだけ世界からお暇させていただくのだ。

その間、脳には大掃除を頑張ってもらう。心や記憶の老廃物がひとしきりデトックスできるまで、浅い夢が断続的に投影される。大抵は悪夢だ。でも、私は負けじと一生懸命に眠る。

そうして長い眠りから目を覚ますと、驚くほど頭がすっきりしている。すっきりというか、からっぽ。

のそのそと起き、シャワーを浴びて、ドライヤーをしながら鏡を見たら、憑き物が取れたような、つるんとした顔をしていた。

よかったね、と自分に思う。

春の夜へ

外へ出ると、日が暮れかけていた。沈丁花の甘い香り、お日様の匂いもする。せっかくの小春日和を逃したと思ったけれど、代わりに春の夜を手に入れた。

そうだ、春のプレイリストをつくらなきゃ、と思い出して1曲目に大好きな歌を追加する。

昼過ぎ起床の今日の朝へ
インスタントコーヒーをいれるために
熱いお湯を沸かす やかんが震える部屋の空気
気まぐれに歩く春の夜へ

「春の夜へ」カネコアヤノ

春の夜風を思い切り吸い込みながら、まず最寄りのスタバへ。アメリカーノとさくらシフォンケーキをお供に、副業の仕事を少しだけする。

代官山蔦屋書店にて

代官山へ移動し、蔦屋書店へ。弱っていると、吸い寄せられるようにここに来てしまう。森を歩くような気持ちで、海外文学、哲学、旅行、デザインなど色々なコーナーをぐるぐる回り、気になる棚の前で立ち止まる。

沢山の本に囲まれていると「まだまだ知らないことばかりだ、世界は広いなあ」と感じると同時に、「世界には、同じようなことを思ってる人がいるのだな」と思うようなタイトルの本を見つけたりして、ひとりきりではないと思える。

本屋さんはいつだって私のパワースポットだ。購入すると決めた本をぎゅっと抱えているとき、その本からもう元気を貰っていると思う。

京都特集の雑誌1冊、あと来るたび気になっては保留していた本を、ついに購入した。なんとなく、その本に呼ばれている気がした。

それから中目黒駅まで歩き、セガフレードでカプチーノとクロワッサンをお供に、さっき買った本をぱらりと開いてから、この日記を書き始めた。

書きながらも、回復していく自分を感じている。うっかり傷付いてしまったけれど、深くはなかったようだ。1.5日で回復できるような傷だった。

私を深く傷付けることが出来るのは、私が深く愛している人たちだけだと思う。そして、きっとそれは傷ではなくて、純粋な哀しみだ。そういう種類の哀しみは、睡眠で消し去ることは出来ないし、したくない。私の一部として引き取って、心のどこかに閉まっておきたいと思う。

春の夜を歩きながら、いつか恋人が話していたことを思い出す。

「生きていたら理不尽なことはある。でも、それが本当に自分のことを傷付けるとは思っていない。だから大抵のことは、些末なことだと流してしまえる。」と言っていた。

私も大抵のことは些末なことだと流してしまえる。でも時々、小さな雪玉のような傷が私の中をコロコロ転がり、私も忘れていたような過去の傷までくっつけてしまい、大きな雪玉としてゴロゴロどーん!と私にぶつかってくる事がある。

だけどそんなのは、まやかしだ。好きな人たちからの「美味しいもの食べてね」の言葉、コーヒーと甘いもの、本屋さん、睡眠とお散歩。そういうので、こうして回復する。自分を回復させるものを知っておくのは大切だなと思う。書くことだって、そうだ。

明日も必要なだけ眠り、今日買った本を読もう。読んだらきっと散歩したくなるから、また春の夜へ繰り出そう。

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