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【観戦記】初めての高校ラグビー(花園)で沼にはまった

「え?花園行ったことないの?」

ラグビー談議をする中でよく驚かれることだった。
ラグビー観戦歴が20年以上ありますが、社会人(現在のリーグワン)を中心に観戦する自分にとっては全国高等学校ラグビーフットボール大会(通称:花園)は縁が遠く、わざわざ花園まで足を運ぼうと思ったこともなかった。

さらに言えば、高校ラグビーでさらにラグビーの「沼」にハマりそうで怖くて避けていた。

ですが、第102回大会の今年、ご縁があって初めての花園を体験した。その魅力は圧倒的で「どうしてもっと早く来なかったんだろう」と後悔した。

全国高等学校ラグビーフットボール大会(通称:花園)とは

高校生スポーツの祭典である全国高等学校体育大会(通称:インターハイ、高校総体)の15人制男子ラグビー競技と位置付けられる。
夏~秋に各都道府県(東京都及び北海道は2ブロック、大阪府は3ブロック)の予選を実施し代表校を決定する。そして、高校の冬休み期間となる12月末~翌年1月上旬にかけて、大阪府の東大阪市花園ラグビー場で大会が開催される。
開催地の名をとって「花園」と称されることが多く、ラグビーファンの間で「花園」と言えば、文意で「全国高校ラグビー大会」と脳内変換されるほどラグビーファンの間では親しまれる大会だ。

大会フォーマット

現在の大会フォーマットでは参加は51校。
トーナメント方式だが、大会前に8つのブロック(各ブロック6校または7校)に分けてブロック内でトーナメントを行う形式である。ブロックには以下の特徴がある。

  • 複数校が出場する北海道、東京都、大阪府は同じブロックに入らない。

  • これまでの成績から「Aシード」「Bシード」の高校が設定され、トーナメントの2回戦から登場する。今年(第102回大会)はAシード2校(報徳学園、東福岡)、Bシード11校。

各ブロックで1~3回戦を実施し勝ち上がった8校が抽選により準々決勝の組み合わせを決定、さらに準々決勝を勝ち上がった4校で抽選を実施し、準決勝の対戦相手が決まる、という変則的なトーナメントだ。
(本記事の発行される1月1日時点ではベスト8が決まっている状態だ)

最大3グラウンド並行で試合を実施

1回戦は2日で、3回戦は1日で実施するため、3会場同時並行で実施する。かつ、試合前の選手のウォーミングアップも並行して行われる。複数試合を円滑に実現できるのが花園ラグビー場を中心とした花園中央公園だ。

第一グラウンドは、ラグビーワールドカップ2019™日本大会でも使われた東大阪市花園ラグビー場だ。青空にシルバーの壁面が美しく映えるラグビー専用競技場だ。

初観戦は同時に複数試合を楽しめる2回戦

初観戦は、2022年12月30日。第102回大会の2回戦だ。
1回戦を勝ち上がった19校+シード校13校の計32校が、ベスト16をかけて16試合を戦う。優勝候補が揃うシード校が登場し、熱戦が繰り広げられた。

同じ時間に3試合が並行して行われるため「どの試合を見ようか?」と迷うのも花園の楽しみ方だ。前半と後半でグラウンドを変えることもできるし、「第一グラウンドの最上階で第二グラウンドを見下ろして両方楽しむ」という猛者もいる。

花園初心者の私は、第2試合から会場入り。
「行ったことがない第二グラウンドでも行ってみようか」とのんびりしていたら、第二グラインド手前から人が溢れてグラウンドまで辿り着けないほどの大盛況だった。シード校の常翔学園に対してノーシードの尾道が挑み逆転勝利する激しい展開でによるものだった(その後も試合の選択も重なって、初観戦では「第二グラウンドまで辿り着けない」結果となった)。

岐阜工業(岐阜県) vs. 佐賀工業(佐賀県)

Bシードで登場した佐賀工が岐阜工を43―10で降し、3回戦に進んだ。明らかに体格差がある両校のぶつかり合いだったが、小さい岐阜工が最後まで挑み続けた。

東海大大阪仰星(大阪第3) vs. 大分東明(大分県)

前回大会優勝校でBシードの東海大大阪仰星が大分東明を42―7で降し、3回戦に進んだ。激戦の大阪府大会を勝ち上がった仰星が80分を通じて大分東明を圧倒した。

天理(奈良県) vs. 青森山田(青森県)

花園最多出場数の伝統校でありBシードの天理が、青森山田を29―15で撃破し3回戦に進んだ。点差以上に天理が終始試合をリードした展開で伝統校の力強さを見せつけた試合だった。

昌平(埼玉県) vs. 京都成章(京都府)

前回大会ベスト8の京都成章が昌平を40―12で降し、3回戦に進んだ。昌平は何度もゴール前までボールを運ぶも京都成章の激しいディフェンスに阻まれた。

目黒学院(東京第2) vs. 大阪桐蔭(大阪第2)

Bシードの大阪桐蔭(大阪第2)が目黒学院(東京第2)を41―7で降し、3回戦に進んだ。試合は終始大阪桐蔭が攻める展開だったが、試合終了間際に目黒学院が意地のトライを見せた。

東福岡(福岡県) vs. 開志国際(新潟県)

Aシードでの東福岡が開志国際を61―7で降し、3回戦に進んだ。試合開始直後から攻撃を続けた東福岡は9トライを奪う圧巻の勝利だった。

(考察)花園の魅力

わずか半日だったが、花園での観戦から感じた「花園の魅力」を考えた。

①ラグビー漬けの1日
1日にこれほどたくさんのラグビーの試合を見ることができる機会は、日本ではここだけではないかと思う。全試合を見ることはできないが、強豪の好ゲームを楽しんだり、贔屓のチームを思う存分応援したり…それぞれが自分らしいラグビーの楽しみ方で自由に楽しむことができる1日にすることができる。「今日は、思う存分ラグビーを見たな~」という満足感は格別だ。

②一瞬のきらめき
大学やリーグワンも心健に試合に取り組む姿勢は変わらないはずだが、高校生のひたむきさは格別だ(ヘッドキャップが初々しさを助長するのだろうか)。点数を取ったらメンバーが集まって喜ぶ、ミスをすれば駆け寄って声をかける、さらには倒れていれば敵味方関係なく手を差し伸べて起こす。試合終了後はレフリーと相手に最敬礼後、次の試合の選手にできるだけ早く場所を譲るために退場する。
1つ1つの動作が彼らの青春であり「今」なのだと思うと、その一瞬のきらめきが大人にはまぶしすぎる。

勝ったのは青x黄色ジャージの成章 キャプテン同士の握手に涙が

③成長を見守ることができる「沼」
3年生は花園で引退する。高校卒業と同時にラグビーをやめる選手もいれば、大学やリーグワンまたはクラブチームでラグビーを続けるかもしれない。観戦でプレーが光った○○選手を数年先まで大学やリーグワンで活躍する姿を追い続けられる。これから先の「成長を見守り続けられる」の入り口である花園は、きっと「沼」だ。

ありがとう、花園。ありがとう、選手たち。

わずか半日だが素晴らしい体験をして、すっかり花園の魅力に取りつかれてしまった。「きっと来年も来る」と思って花園を後にした。沼にはまった。

ラグビージャーナリスト村上晃一さんと

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