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デール・カーネギーの「人を動かす」がクレーム対応に役立った話

福祉部門に限ったことではないと思いますが、役所にはさまざまなクレームが寄せられます。中にはこちらの周知不十分であったり、事務処理上のミスであったり、真摯に受け止めないといけないものもありますが、一方で「これってどうしようもないよね」というものもあります。

今週(2024年4月1日~5日)の勤務の中で「どうしようもないよね」に近いクレームがあったのですが、我ながらうまくまとまったかなと感じたものをシェアしたいと思います。その際にカーネギーの「人を動かす」が役立ってくれましたので、こちらもあわせて紹介したいと思います。


保育所の預かり拒否事案

何があったかというと、発端はとある保育所から預かりを拒否されたというもの。ちょうどこの週は入学式シーズン。入学式に行くので下の子を預かって欲しいと申し出たところ、預かりを拒否されたという内容でした。結果的に保育所側に明確に拒否できる根拠がないため預かる形で決着したものの、そのときの保育所側の対応に疑問を感じ問い合わせてきたというものです。

保育所は公的な性格を持ったものなので、例えばインフルエンザにり患しているとか、受け入れには医療行為が必要だがそれをできる人がいないといった事情以外では、受け入れを断ることはできません。一方で保育所も人手不足と言われており、状況が許す限りできるだけ家庭での保育をお願いしているという状況です。

「保育所の事情も理解できる。済んだことと言えば済んだことだが、納得のいく答えが欲しい。」という思いから問合せをしてこられたのだと思われる事案でした。

最初に考えること

そもそもこういう事案に遭遇した場合、役所としてというよりも個人として私は「一方を聞いて沙汰するな」という考えをもっているので、両方の話を聞くようにしています(倍の時間はかかりますが)。それと「裏にはどのような事情があったのか」を掘り下げて考えるようにしています。

こういったケースの場合、保育所側の事情も聞いてみないと分からないので確認したところ明確な答えは返ってきませんでした。とはいえ慢性的に人手不足な業界で、かつ、新年度開始直後で混乱しやすい時期であり、お仕事でないならお家でみてほしいという保育所側の気持ちもよくわかります。

そういった事情があるんだろうなと推測し、保護者の方に改めてコンタクトをとることにしました。

保護者の方に説明するときに心がけていること

状況を整理した上で保護者の方に説明させていただいたのですが、こういうときは必ず公表されている資料を準備しています。今は各保育所の詳細な情報がホームページでも出ており、そこには家庭での保育をお願いしたい日なるものも掲載されていたりします。

こういった情報があることを伝えると、それだけで保護者の方は安心されます。判断の拠り所があるということそのものを御存じないかたも多く、そういったものがあると知れるだけで安心することが多いです。その上でそこに記載されていることを読み上げ、今回の事案は受入れ拒否の根拠がないということをお伝えしました。

が、最後に残ったのは「なぜ最初に拒否してきたのか」ということ。ここは年度当初の混乱や人手不足が影響しているのだろうなと書きましたが、その方にお伝えした話が我ながらうまくいったかなと感じました。

役に立ったカーネギー

私からは「同じ日にお子さんが入学式の保育士さんがいらっしゃるのかもしれませんね」と伝えました。それを聞いて保護者さんはハッとした感じで納得されました。

私が大いに影響を受けた書物にデール・カーネギーの「人を動かす」というものがありますが、そこに「盗人にも五分の理を認める」という記述が登場します。相手には相手なりの正義があることを認めるということですが、今回はこの教えが役に立ちました。

当然ながら保育所が盗人というわけではありませんが、相手には相手なりの事情があるということが伝わったようです。自分にとって特別な日は、他の誰かにとっても特別な日なのかも。保護者さんと保育所とで過剰にトラブルにならないことを願っています。

まとめ

以上のような経過で事なきを得たのですが、こうやってクレーム対応を振り返ると、要点としては次のような感じになります。

  • 裏側にある事情を考えてみる

  • 資料が公表されていることを知ってもらう

  • 公表資料に基づき判断を示す

  • 相手側の事情にも思いをはせてもらう

前回の記事で窓口対応で使えるフレーズを書きましたが、「自分を理解してもらう」ことで感情的にはかなりおさまります。そして「相手を理解する」ことでも感情的なしこりはかなり小さくなりますので、今後もカーネギーを応用して業務にあたっていこうと思います。

クレームが出ないのが究極のクレーム対応なんですけどね。


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