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経営と経済の本質を紐解く

近代の経営は人を労力として効率よく使うことが是とされてきたが、人はロボットではないため、単純に企業の歯車になることは出来ない。かつて世界でもてはやされた日本的経営は、企業に於いて社員は家族のようなもので、共に泣き、共に笑い、社員の幸せを第一として経営された。

 その日本的経営がなぜ立ち行かなくなってしまったのであろうか。1990年のバブル崩壊後、日本企業は円高と不良債権問題で長いデフレ経済に陥ってしまった。その原因は高度経済成長で有り余るお金をどんどん国内外の不動産に投資して足元の企業の競争力や少子高齢化による国内の購買力や経済力が低下していることに対して政治や経営が無策であり、迷走してしまったことにある。

 いまだに日本はそのネガティブスパイラルから脱出することが出来ずにいる。かつて英国も英国病といわれ、社会保障負担の増加、国民の生産性低下、既得権益の発生で活力を失った時期があったが、サッチャー首相が大胆な規制改革、構造改革を行うと共にイノベーション教育を強化して活力を取り戻した。

 日本も長いデフレスパイラルから脱出するために多くの経済政策や成長戦略を掲げてきたが、情報革命による世界的なイノベーションの波に多くの日本企業が乗れずに競争力を停滞化させてきた。特に日本のお家芸であった情報家電業界は韓国、中国企業とのコスト競争にやぶれ、多くの企業が衰退した。

 この事業環境変化に伴い、従来競争力の源泉であった終身雇用や年功序列を代表とする日本的経営を死守することが出来ず、多くの企業は欧米型の雇用や成果主義を取り入れて生産性向上という名のもとにコスト(賃金)をカットして企業業績をなんとか維持してきた。しかし、この代償は大きく、社会に多くの貧困層を生むと共に、結婚できない若者が増えて更に少子高齢化を加速してきている。

 このような状況で、日本の政治、経済をどう立て直したら良いのであろうか。今の日本経済の最大の問題は何であろうか。少子高齢化による競争力低下が必然のものであるとすれば、その少子高齢化によるマイナス面を越える日本としての競争力の強化をしなければならない。それがアベノミクスと言われる経済政策であったが、十分機能していない。

 なぜ経済政策がうまくいかないのであろうか。その原因は多くの施策が対処療法的なものであり、本質的な問題、根本原因を解いていないからだと思う。日本経済が立ち行かなくなっている根本原因はサービス業を中心とした生産性の低さとお金が流動しない経済の構造的な問題にある。

 この構造的な問題は非常に複雑である。なぜなら、今の経済がお金という虚構(信用創造)で成り立っているからである。この信用創造は、悪く言えば全世界で騙しあいのギャンブルを行って、基軸通貨(ドル)をベースに軍事力と正義を着飾ったレトリックにより成り立っている。

 従って、世界中で部分最適化のために紛争を起こし、自国が困らないように金融を操作して、更なる虚構(信用創造)により世界的なインフレ(名目的な経済成長)を達成して競争力を維持している。日本は、その世界的なインフレの波に乗れず、お金を増やすことが出来なかったため、賃金も上げることが出来ずデフレスパイラルから脱却できていないのが本質的な問題である。

 もう一つ、本質的な問題は、いまだにグローバルスタンダードな業務化や教育が出来ていないため、IT(インフォメーションテクノロジー)を有効に活用が出来ておらず世界と比較して生産性が低いことにある。この本質問題は、日本の教育で、全体最適に向けたシステム思考力やコンセプチャルスキルの強化が出来ておらず、既得権力を守るような部分最適な施策や政策がまだ横行していることにある。

 この虚構(信用創造)によるギャンブルで成り立っている世界で、日本自体が世界の状況を把握せず、部分最適で生産性を上げられないのであれば、日本は世界に立ち向かうことが出来ず衰退するしかない。まずは、その現実を受け入れて、本質を理解できるような教育と、世界で生きていくための実行力のある施策、政策を早急に実施するしか、生きていく道はないと思う。

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