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息子の動画がXでバズったので、SNSマーケのプロとして要因を分析してみた

SNSっておもしろいですよね。息子が組み立てた、ピノの箱をつかったガチャの工作が動く動画が、Xで43万再生されました。

気分が暗くなるようなツイートが世間を騒がせることが多い中で、ただただ平和なコンテンツが求められているな、という空気を感じます。

自分のしたpostが伸びていくのは、紙ヒコーキが遠くに飛んでいってなかなか落ちてこないような楽しさがありますが、ふだん、自分がSNS周りのことを仕事にしていることもあり、生の教材として勉強になるんですよね。

やったことを記録しておくために、以下まとめます。

2日で100万回再生

まる二日間で100万インプレッション。広告価値にして1imp=0.4-0.6円くらいとした場合、40-60万円分となります。いえ、なんでもないです。ただの皮算用です。

ためしに、追い風として、プロモツイートを実験的にしようとも考え、広告をセットするところまでやりましたが、そもそもPRでもないのに、企業名の出ている動画をプロモーションにしてもわけがわからないので止めました。

postするまでの経緯

休みの日の昼に、スーパーでアイスを買おうとしたときに「2箱買うとガチャがつくれる」と書いてあった。パッケージの外箱をつかった工作だというのは説明を読んで分かったが、値段もまあまあしますし、買ったとて食べ切れるのか?と悩むも、えいやあと気合をいれて2箱購入しました。

で、帰宅して冷凍庫に入れて、晩御飯の後、買ったことさえ忘れて、ごろごろしてたんですが、風呂上がり、リビングに行くと、息子がピノガチャをすでに完成させていて、びびりました。あれ、こんな簡単に作れるんだっけ?と思うも、触ってみると機構が中々よくできていて感心しました。設計図も見事だったが、作るのにはまあまあコツがいるようでした。

ガチャをやってみせてもらったところ、いい感じにコロコロと出てきたのでびっくりしたので、ツイートしようと写真を何枚か撮りました。でも、これって写真だと、からくりの面白さが伝わらんのです。思い直して、動画を撮り、ツイートしました。

postする際に心がけたこと

ツイートする直前に、「ピノ ガチャ」でさらっとTweet検索してわかったことをまとめました。

わかったこと
・発売は2019年。もう4年前の企画だった
・でも、最近でもけっこうガチャを作ってツイートしてる人いる
・「ピノガチャできた」と書いてる人が多い
・どれも、そんなに拡散されてない
・ピノ公式アカウントはいいねもRTもしていない
・そういう公式アカウントのルールでやっているらしい
・ハッシュタグもめぼしいものはなかった

で、そこからの方針
1.「ピノガチャ」という言葉は使わないほうがよさそう
2.画像より動画で伝えたほうがよさそう
3.息子がつくったことをつたえる
4.親である自分が喜んでるニュアンスを伝える

ピノのガチャと気づいてもらうために

特に1が大事で「ピノガチャ」という言葉はまだこの世にないものなので、初見の人に伝えるのは、もう少し分解する必要があると考えました。

おそらく紙でできている、ガチャマシンのようなものの写真をのせつつ「これは子どもが工作でつくったガチャだよ」と事実を伝えることが、理解してもらえる情報量の多さとしては精一杯ではないだろうか。

こちらから、それと打ち出さずとも「おっ、ピノのガチャなんだー!」と動画を見る人に、自ら気づいてもらうほうが、本人の中では印象に残るわけです。驚きを横取りしないでおくというか。

"幸せなガチャだ"というテキストだけで、動画を見てみると、ピノが次々と回すたびに出てくる様子があり「ああ、ピノが出てくるガチャって、確かに幸せなものだよね」という、自発的な納得感が生まれるようにしてあります。(この辺は、我ながら後付けな考えの気もします)

ともかく、感情の余白みたいなものをいかに残すか、というのはあらゆる情報発信でけっこう大切なことですよね。

これは、そもそものガチャが企画としておもしろいので、その興奮から「ピノガチャできたよー」とか「これでピノ食べ放題だ」みたいに書きたくなるんですが、それだと、初めての読み手にはちょっとわかりにくいんですよね。

"ピノ"も"ガチャ"も見ればわかる要素なので、テキストではそれを書かないようにしたわけです。ピノ公式によるエゴサが無効になっている(公式アカウントがRTもlikeもしてない)というのも、ここの判断を後押ししました。

キユーピーの広告はほんとかっこいい

ところで、僕の好きな広告にキユーピーの「野菜を見ると、想像するもの。」というシリーズがあります。真っ白な広告枠に潔いメッセージをシンプルに残してあって、商品を押し出していないのに、受け手の中でそれらを想起させるつくりになっている。

受け手と「共犯関係」を築くには

ただ、押し付けられる広告と違って、読み手の脳内にのみマヨネーズやドレッシングを出現させる高度なテクニックです。押し付けないどころか、消費者に自らそのプロダクトを思い出させてしまうのは、●を3つ書いたらミッキーとか、それくらい強いブランドでないと難しいのですが。

でも、すくない情報で、表現がそれを受け取る人と力を合わせてイメージを想起させることができたら「共犯関係」を築くことができるので、うまく行ったらかなり強い表現になりますよね。

動画じゃないとだめだった

このピノガチャの話でいえば、ガチャが本当によくできているので、ギミック部分がこの企画の面白ポイントなのは間違いありません。写真では、ギミックのスムーズさまでは絶対に伝わらない。ちょうど、ポトポト落ちてくるさまが2テイクめで撮れたので、動画で行こうと思いました。

まあ生活の中のワンシーンなので、3テイク、4テイクかけるほどの労力を割くわけでもないので、ここは運がよかったし、きちんとガチャをつくれた息子がえらかったですね。

10歳の子供がつくったことをつたえる

検索して出てきたピノガチャの数々、みなさん楽しそうで嬉しい気持ちになるのですが、どなたのツイートにも作り手の表情は写っていないので、作られた方に、うれしいのか達成感があるのかないのか、わからないんですよね。

まず、10歳の子どもでもこんな上手につくれるんだ、というのが僕自身の驚きに含まれていたので、ストレートにそれを書きました。息子が、だけでも片手落ちです。3歳か19歳かわからないからです。あくまで10歳の男子がつくって、ドヤ感ふくめて回して見せてくれている・・というリアリティまで伝える必要があるなあと思いました。

親が喜んでいることを伝える

「息子がガチャをつくった」だけでは、僕自身の感情が書かれてないので、実際の情報である「お風呂上がりに、」という点を、偶発的に発見して驚いている、みたいなところを、シーンを演出する要素としてちょこっと入れています。

じっさいに「えっもうできてる!しかもちゃんとガチャとして完成してる!」と僕は驚いたので、そのへんを落としすぎてもバランスを欠いてしまいます。最終的には「(いつのまにか)ガチャを完成させてた」という事実を報じるツイートになりました。

幸せになるガチャ

最後に迷ったのは「ピノが出てくるガチャ」をどう書くかということです。回せばピノが出てきているのは、動画にあるので、自明です。

そもそも存在として「なんだこの平和な道具は。」と感じたスーパーの売場での感覚を思い出して、幸せになるガチャ、という表現にしました。

これは、受け手への投げかけです。「ピノのガチャです(よね?)」というのはただの事実なため、投げかけになりません。そうだ、という回答になってします、「幸せなガチャです(よね?)」というのは、受け手が自分の意志で「そうだ/そうでない」を決めることができるので、納得感がある場合には、likeの意思表明をし易いという感じです。

リアクションをみていて

そもそもこれは、動画を楽しんでもらうタイプのツイートなので、解釈の余地はあんまりないわけです。それでも、拡散された序盤から「これ作るの大変だったんだよね」という、ピノの企画ものであることを、理解してくれたリプライが散見されたので安心しました。

いっぽうで「息子さん天才ですよね」というコメントは、わかる、と思いつつも実際には誤認と思われるので、ある程度、拡散が進んだ段階で、ピノ公式のリンクと共にリプライをぶら下げておきました。

元Tweetの直下にあれば、合わせて読んでねという意思表示になります。ぶじにこのツイートも拡散が進みました。

その後、テレビ番組やウェブメディアなど、数社から取材依頼も来ましたので、早々に番組や記事にしていただくことができ、事実関係を整理してまとめて報じてくださったので誤解が広まることもなかったので、さらに安心しました。

ただのたのしいSNSの使い方を、あれこれ分解してみたお話でした。これからも、プレッシャーにならないよう、楽しみながらやっていきたいです。

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