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ボーイズグループの沼の様子を見にいく

ボーイズグループのCDをくれる同僚が、ライブのチケットが余って困っている、と言ってきた。

まあ、その日は特に予定もないし、困っていて、他にどうしても行く人がいないなら行ってもいいけど。と言った。

そして、ライブに行くことになる。
旦那に言われた。
「俺は行くと思ってたよ。」
そう。行きたくないライブなら、ソッコー断る私なのだ。

友達に話すと、「若い男に走ったらどうしよう。不安だよ。」と言われる。

大丈夫だ。心配するな。
沼の淵に立って、様子を見てくるだけだ。
沼に入るわけじゃない。

待ち合わせした同僚が、ボーイズのパーカを着ていて、度肝を抜かれる。
そ、それじゃ、ファンであることが丸わかりじゃないの。
会場に近づくと、示し合わせたように同じ服を着た人たちがいた。
あの帽子は〇〇推し、あのジャージは〇〇推しだよ、とメンバーの誰のファンなのか同僚が教えてくれる。推す、とはそういうことなの?

私は、中学生のころから自分の好きなものをひた隠しにしてきた。
家族に笑われたくなくて、部屋にポスターのようなものを貼ることを自分に固く禁じてきた。下敷きに切り抜きを入れることもぐっと我慢した。
自分の好きを開放している人たちがこんなにたくさん。
本当に驚いた。
私もほんとはチェッカーズのポスターを貼りたかった。

3階席から沼を覗き込む。
躍動感たっぷりに、踊りながら歌うボーイズたちはとても素敵で輝いていた。かっこいい。率直にそう思う。
もちろん私は全曲知っているし、次々アップされる動画をほとんどチェックしているので、ボーイズたちの今日の出来などもわかってしまう。
同僚にはそのことを気取られないように、初心者のように振る舞う。

最後のMCで、メンバーの一人が言った。
これからも命がけで、全力で歌います、と。
 
え、そんな覚悟でやっていたんだ、すごいな。
私は、命がけで、全力で何かをしてきただろうか?
すごいな、この子たちは。
未来が怖くないんだろうか。
アイドルは期間限定だということを分かっているんだろうか。
少し、心配になる。

また、行きたいな、そう思った。

でも、それと同時に同年代のバンドのライブに行きたいと強く思った。
胸にドン!ドン!と迫ってくるドラムやベースの音、キュッキュッとコードを押さえる指、何十年もの人生を背負った言葉。
大人の、歌が聴きたい。
大人と、話がしたい。
そんなことを思ったのは失礼かな。

この歳になって、初めて知ることがたくさん。
もっと自由に自分の好きを認めてみたい。




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