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◎日々のつぶやき 35

35 夏目漱石のデスマスク


 2017年に開館した新宿区立漱石山房記念館は、夏目漱石(1867-1916)が晩年を過ごした住まい、通称・漱石山房の跡地に建っています。当時の書斎や庭園を細部にわたって再現しており、文豪の暮らしと仕事の空間を今に伝えています。
 館の所蔵品のひとつに漱石のデスマスクがあります。漱石が息を引き取った直後、門下生の森田草平(1881-1949)が師のデスマスクを取ることを提案し、遺族の同意を得たうえで山形県生まれで彫刻家の新海竹太郎(1868-1927)に依頼して制作されました。4月21日まで開催している通常展「夏目漱石と漱石山房 其の一」で公開中です。
 当時作られたデスマスクは2つあり、そのうちひとつは夏目家の仏壇の脇に飾られていました。次男で随筆家の夏目伸六(1908-1975)は、子供の頃によくお面代わりに被っていたそうです。ところが、そちらは1945年5月25日の空襲で家屋ごと焼失してしまいました。
 現在展示されているデスマスクは、残りひとつの現品である朝日新聞社所有のものから夏目漱石生誕100年を記念して1966年に複製されたものです。当時の所有者は門下生の松岡譲(1891-1969)。漱石山房記念館名誉館長の父にあたります。このタイミングで作られた複製品はいくつかあり、東北大学や神奈川近代文学館なども所蔵しています。また、二松学舎大学にある「漱石アンドロイド」の頭部も朝日新聞社のデスマスクを3Dスキャンして作られており、後に生まれた複製品のひとつに数えられるだろう。(参考文献:漱石山房記念館だより 第13号(令和5年8月15日発行))
 参考までに、現在、石膏のデスマスクは木箱代と消費税込みで16万5000円、手形はアクリルケース付きで13万2000円となるそうです。納期の目安は1カ月。多くの依頼者はデスマスクと手形をセットで注文するそうです。  (つづく)

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