見出し画像

「認知科学」、マジカルナンバーの話と諸効果 (5)

5 マジカルナンバー「4±1」

 2001年に、アメリカのミズーリ大学の心理学者ネルソン・コーワン教授(Nelson Cowan)が「マジカルナンバー4±1」を発表しました。「人間が短期記憶で保持できる情報の数は4±1である(4を中心としてプラスマイナス1、つまり3~5)」というものです。この論文「The magical number 4 in short-term memory: A reconsideration of mental storage capacity」は、ケンブリッジ大学が公開しているネットワーク上に公開されているおり、誰でも閲覧が可能です。
 「マジカルナンバー4±1」は、個数がこれまで考えられていたものよりも少なくなったため、最小値であるマジカルナンバー3として語られる場合もあります。
    心理学と行動経済学に基づいた実験として、ジャムの法則が知られています。ジャムの法則は、店舗が多種多様なジャムを売りに出した場合、選択肢が多すぎて顧客が敬遠する傾向にあるのを実験結果によって示したものです。飲食業のメニューにおいても、何の工夫もなければジャムの法則が適用されてしまいます。
    これを避けるため、マジカルナンバー4±1が応用されています。飲食業のメニューには、シェフのおすすめや季節の限定メニューなどが、他のメニューと差別化されて提示されています。これにより「シェフのおすすめ」や「季節の限定メニュー」というチャンクが作り出されています。来店客は何を見たらいいのかをチャンクから選択できるので、ばらばらに個別のメニューが提示されるよりも選択によるストレスが生まれません。いずれの研究も情報記憶の側面で重要であることに変わりはありませんが、近年ではコーワンの「マジカルナンバー4」あるいは最小の数字である「マジカルナンバー3」も浸透し始めています。               (つづく)
 


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?