見出し画像

夏目漱石の名作に登場するお茶・紅茶への思い 7

Ⅱ 漱石と紅茶 2



❷『それから』

「約三十分の後彼は食卓に就いた。熱い紅茶を啜すすりながら焼麺麭に牛酪(バタ)を付けていると、門野という書生が座敷から新聞を畳んで持って来た。」(『それから』一)

「代助は黙ってしまった。
 紅茶(こうちゃ)茶碗(ぢゃわん)を持った儘(まま)、書斎へ引き取って、椅子(いす)へ腰を懸けて、茫然(ぼんやり)庭を眺めていると、瘤(こぶ)だらけの柘榴(ざくろ)の枯枝と、灰色の幹の根方に、暗緑と暗紅を混ぜ合わした様な若い芽が、一面に吹き出している。代助の眼にはそれがぱっと映じただけで、すぐ刺激を失ってしまった。」(『それから』六)
  (つづく)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?