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蒼色の月 #34 「私の責任」

午後11時。
子供達はもう、自分の部屋に上がっていった。
キッチンの片付けも終わり、明日の分の米もとぎ、お弁当の準備も出来た。私は誰もいなくなったリビングに一人腰を下ろす。

夕方の、夫の言葉を思い出す。

「お前は子供が産まれてから、俺が一番じゃなくなった」

この20年、そんなことを夫が思っていたとは想像したこともなかった。
そんな風に夫に感じさせるほど、夫を粗末にしたつもりはない。
でも夫があの言葉を吐いたということは、気づかないとはいえ、私に至らないところがあったのだろう。
子供は夫婦にとっての一番で、夫婦で力を合わせて守っていくものと思って生きて来た。
子供を守ることが、両親共通の責任であり、喜びだと。
でもどうやら夫にはそういう認識がなかったらしい。

子供に負けたくないなんて。
私には想像もできない考えだ。

夫は、家事も自分の身の周りのことも、仕事以外のことはなにもできない。
いや、やらない。
自分の靴下や下着が、クローゼットのどこにあるのかもちゃんとわかっていない。

夫の散髪も20年私がやってきた。
夫は天然パーマで適当に切ってもなんとかなるという手軽さもあったのだが。何度も散髪屋をすすめたが夫は言うことを聞かなかった。
次第に私も諦めるようになった。

「おまえにとって俺は子供が生れて一番じゃなくなった」

夫にそう言わせたのは、私の罪なんじゃないだろうか。
私が夫を過保護にしたから。

どんなに夫が私に甘えてこようとも、あの時点で諦めずなにもかも私に押しつける夫ときちんと話し合えば、こんなことにはなっていなかったのではないだろうか。

それを途中で私が諦めて甘やかしたから。
なにもかも私に甘える夫とちゃんと向き合わなかったから。
あんな夫になってしまったのは、きっと私のせい。

私の罪でこうなった。

いつかこの先きっと、この問題で子供が傷付くことがあるとしたらきっとそれは私のせい。

我が家がこうなったのは、なにもかもきっと全部が私の責任。

子供たちにはどう詫びても、詫びようがない。

私は、夫が出て行ってから、そんな自分のしでかした罪を毎晩ベッドで考えては悔やむのだ。

取り返しのつかない罪だけれど。

ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。


mikotoです。つたない記事を読んでいただきありがとうございます。これからも一生懸命書いていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします!